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デジタル放送著作権保護の新方針を今後1年で確定へ
-2011年には見直し後の運用ルールへ


6月24日開催


 総務省の情報通信審議会 情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第41回」が24日に開催。27日の情報通信審議会 総会に提出する中間答申案のとりまとめが行なわれた。


■ 情報通信審議会では「補償金は検討対象外」

 「ダビング10」の日時確定まで紛糾した、デジタル放送におけるコピー制御のルールについては、7月4日午前4時開始の決定についての報告が行なわれた。中間答申には、これまでの経緯と合意形成の過程などを答申に盛り込む。

 ダビング10合意の争点となった私的録音録画補償金制度については、「文化審議会で検討中の事項」とし、「早期の合意を期待するものであるが、そのあり方自体が当審議会(情報通信審議会)の検討対象でない点については、審議過程でも異論はみられない」と言及。審議会としては、補償金以外の側面から「対価の還元」の具体策に取り組む方針で、具体的には「コンテンツ市場の形成」などのルール整備などで対価の還元を実現していく。


■ エンフォースメントは1年以内に見直し

 一方、デジタル放送における新しいコンテンツ保護のありかたについての議論の集約も行なわれた。2007年の第4次中間答申で、現行方式以外のコピー制御について、「継続的に検討すべき」と提言され、約1年かけて議論されてきた。

 現在のデジタル放送の著作権保護システムは、暗号化技術を中心としながら、「技術と契約」により、ルールが遵守されるように定めている。放送事業者が放送コンテンツにコピー制御信号を多重化した上、スクランブルを施して送信。そのスクランブルの解除のためにはB-CASカードが要求される。コンテンツの保護規定(ARIB規格TR-B14)を遵守した受信機に対して、B-CASカードの支給契約によりカードを貸与する。保護規定に従わない機器については契約違反を理由にB-CASカードの発行を停止することで、機器メーカーの規定違反を抑制している。

 これまでの議論では、B-CASカードを使った現行方式のような「技術的エンフォースメント(TE)」のあり方だけでなく、法律によりルール遵守を強制する「制度的エンフォースメント(LE)」の導入についても検討を進めてきた。そのとりまとめが行なわれた。

 エンフォースメントの必要性には、各委員の理解が得られているものの、現在の方式では、「B-CASカードの取り扱いに知識が必要」といった視聴者の意識に関わる問題、「維持コストに見合う実効性が得られているかが疑問」といったコストと効果に関わる課題の例、「全国にあまねく普及」という“基幹放送”の性格に関わる課題があるとしている。

 そのため、取りまとめ案では「基幹放送である地上デジタル放送のコピー制御に関するルールや、そのエンフォースメントの具体的なあり方については、国民視聴者に大きな影響を与える可能性がある」とし、引き続き議論の継続の必要性に言及。さらに「関係省庁や受信機の部品メーカー、流通事業者などの参加も得た議論の必要性がある」としている。

 また、「現状を固定するのではなく、地上デジタル放送に関する視聴者の理解とそれに基づく受信機の普及を一層加速・推進する観点から、更なる改善を模索していく方向では大きな認識の相違は見られない」とし、今後の方向性として、「現行の“技術”エンフォースメントをさらに利便性の高い方式に改善する方向」、「新たな“制度”エンフォースメントの導入を図る方向」、「両者の併用」の3つを提示。「いずれを採るにせよ、2011年のデジタル全面移行時までにはエンフォースメントのあり方が決まり、その運用が開始されていることが望ましい」とまとめている。

 2011年の運用開始を目標とし、審議会では第5次中間答申から「おおむね1年を目処」にいずれの方向性をとるかについて、「一定の結論を得ることを目指す」と、見直し案策定の目標を定めた。

 同取りまとめ案について、メーカーの代表者からは、「技術の議題は具体化されないと、取り組みは進められない。課題の特定がまずは必要」(榊原オブザーバー)などの意見が出た。

 一方で、消費者団体の代表からは、「今の問題は、B-CASとスクランブル。今のエンフォースメントは破綻しており、実効性が現時点でないと思う」と問題を指摘。さらに、「直感的に基幹放送にスクランブルをかけるのは問題と感じる」とし、B-CASカードがないから緊急時に放送が見られないなどの例を挙げ、「情報の受信より、コンテンツ保護ルールを優先している。スクランブルは絶対にやめるべき」(河村委員)と言及。

 また、別の消費者団体代表からも、「関係の皆さんだけで決めるのは問題。国民は選べず、買うしかない。過去に不買運動などで業界の皆さんと戦ったこともあるが、地デジについては、“見ない”という選択肢しかない。スクランブルは必要ない。外す方向で考えてほしい(長田委員)」との意見が出た。

 権利者団体の代表は、「今のB-CASの仕組みは破綻している。まずは、それが破綻しているということを書くべき」とし、「制度エンフォースメントが良いと思うが、技術の検討が先である、という。技術があるというのであれば、堂々とこの場で出してください(椎名委員)」と指摘した。

 中間答申案は、今回の委員会の結果を踏まえ村井主査により取りまとめられ、情報通信政策部会の部会長に一任。情報通信審議会の総会に諮られる。

□総務省のホームページ
http://www.soumu.go.jp/
□デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(第41回)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/kaisai/080624_3.html
□関連記事
【6月13日】法制度導入やB-CAS見直しなど放送の著作権保護を議論
-見直しの具体案を求める声も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080613/soumu.htm
【2007年12月27日】法制度によるデジタル放送の著作権保護を検討開始
-“無反応機”問題を議論。ダビング10詳細は1月決定
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071227/soumu.htm

( 2008年6月24日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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