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ソニーは29日、2008年第1四半期の決算を発表。売上高は前年同期比0.1%増の1兆9,790億円、営業利益は同39.5%減の734億円、税引前利益が同40.5%減の629億円、純利益は同47.4%減で350億円となった。 売上高は前年同期並みで、ゲーム分野は損益が大幅に改善し、54億円の営業利益を計上。エレクトロニクス分野は、価格競争の激化やソニー・エリクソンの収益悪化による持分法投資利益の減少により、営業利益が減少した。 なお、本四半期より、ソニー・エリクソン、S-LCD、ソニーBMGの事業をソニーの事業と密接不可分と考え、持分法適用の投資損益を営業利益の一部として計上することとした。 ■ BRAVIA収益改善で、通期黒字化に向け「想定どおり」
エレクトロニクス分野の売上高は、前年同期比0.7%増の1兆4,391億円、営業利益は同57.2%減の444億円。減益の主な要因は、ソニー・エリクソンの持分法による投資利益の減少。 液晶テレビ「BRAVIA」は好調で、売上高向上に寄与。損益も改善した。一方、先進国における成長鈍化や競争激化により、デジタルカメラ「サイバーショット」とビデオカメラ「ハンディカム」が減益。パソコンのVAIOも減益となった。 しかし、サイバーショット、ハンディカムともに利益面では「引き続き大きな貢献(原直史 業務執行役員SVP)」で、利益額の大きいカテゴリは、順にハンディカム、サイバーショット、イメージセンサー、放送用業務機器。 損失額が大きいのは液晶テレビ事業。テレビ事業の売上高は3,130億円。損益は180億円改善し、営業損失190億円となった。テレビビジネスは、2008年度の黒字化を目指している。 大根田信行 執行役EVP兼CFOは、「第1四半期のテレビの実績はほぼ予定通り。第2、第3四半期は販売台数も増えるので、今の段階では売上も利益も出ると考えている」と説明。「価格下落は中小型が20%ぐらいで、大型が2~30%で、去年よりは落ち幅が落ち着いてきている。コストダウンは今回の製品に織り込まれており、去年の今頃に比べると商品に競争力も出ている。今後、想定どおりにビジネスができると考えている」とした。 なお、有機ELテレビ事業の今後については、「20インチ以上の量産技術開発で、年末から2009年初頭にかけて、220億円の投資をすることを決めており、これを着々と進めていく。これ以上のことは決まっていない(原直史 SVP)」という。 地域別の売上では、日本と米国がそれぞれ3%減少。日本ではBlu-ray Discレコーダが増収に寄与しているが、VAIOとイメージセンサーが減収となった。
2008年通期のエレクトロニクス製品売上見通しは、ウォークマンが700万台、ハンディカムが770万台、サイバーショットが2,600万台、BDレコーダ60万台、BDプレーヤー250万台、DVDプレーヤー(ポータブル型含む)900万台、DVDレコーダ180万台、BRAVIA 1,700万台、VAIO 680万台。 また、持ち分法適用会社である、ソニー・エリクソンの業績が悪化。売上高は前年同期比9%減の28億2,000万ユーロ、税引き前利益は同98%減の800万ユーロ、純利益は同97%減の600万ユーロ。為替レート変動の悪影響や、中/上位機種の市場成長鈍化などが響き大幅に減益。ソニーの持分法による今期の投資利益は6億円。 ■ PS3は前年比で倍増。逆ザヤ解消は2009年度に
ゲーム分野では、売上高が前年同期比16.8%増加の2,296億円。営業利益が54億円と黒字化している。ハードウェアはPLAYSTATION 3(PS3)とPSPの増収により、全体で売上が増加した。 損益改善の理由は主に、PS3ハードウェアのコスト改善と、ソフトウェアの売上増によるPS3ビジネスの営業損益改善、PSPハードウェアの販売好調によるもの。同四半期のハードウェアの売上台数はPS3が156万台(前年同期比86万台増)、PSPが372万台(同159万台増)、PS2が151万台(同115万台減)。 ソフトウェアは、PS3が2,280万本(同1,810万本増)、PSPが1,180万本(同200万本増)、PS2が1,930万本(同1,180万本減)。 ネットワークビジネスについても、PLAYSTATION Networkのアカウント数が1,000万を突破。ダウンロード数も2億を超えるなど好調としており、米国で開始したビデオ配信サービスを皮切りに拡充を図っていく。 2008年度の販売目標は、PS3が1,000万台、PSPが1,500万台、PS2が900万台で5月の発表から変更無し。ソフトウェアの2008年度見通しは、全プラットフォーム合計で2億5,000万本。 ゲーム事業全体では2008年の黒字化を予定。ただし、年末商戦向けに棚卸資産を増やす第2四半期について、大根田CFOは、「PS3のハードウェアの(生産コストが販売価格を上回る)“逆ザヤ”は続いており、評価損が出る。そのため慎重に見ている」と言及。逆ザヤの解消のための施策については、「PS3で搭載しているCellとRSX、サウスブリッジの3つの大きな半導体のうち、RSXは今後秋に向かって65nmに、2009年はさらにシュリンクしたものになる。2009年のどこかでハードとして黒字になるだろう」とした。
映画事業は、売上高が前年同期比31%減の1,596億円、営業損失83億円と赤字となった。前年は「スパイダーマン 3」が高い興行収入を記録していたが、今期は同規模のヒット作がなかったことが減収要因。ただし、テレビ番組の販売ビジネスは増益となった。 金融事業は売上高が前年同期比1%減の1,830億円、営業利益は同9.4%減の306億円。その他の事業では売上高は前年同期比9.5%増の921億円、営業利益は同24.3%減の67億円。音楽ビジネスでは、著作権侵害に伴う賠償金請求に介する和解金収入などにより増収となったが、ソニーBMGに関する持分法投資損益の悪化により、全体では減益となった。 SMEJは、音楽配信やアニメDVD作品の売上が増加。売上貢献アルバムはYUIの「I LOVED YESTERDAY」、加藤ミリヤの「TOKYO STAR」など。 ■ ソニー・エリクソンは不振。通期見通しも修正 第1四半期決算の発表とともに、2008年通期の業績見通しも修正。売上高は当初見通しに対し2%増の9兆2,000億円、営業利益は同10%減の4,700億円、純利益は同17%減の2,400億円。要因は、ソニー・エリクソンの不振により、5月発表時の見通しから持分法による投資利益を当初の700億円から100億円に修正したことなど。 ソニーエリクソンの減益については、「われわれの商品が、残念ながら十分にコンペティティブじゃなかった。特に欧州における中級、高級機種が、マーケットの鈍化で落ちてきて価格が安いほうにひっぱられている。そこの採算の問題(大根田CFO)」と説明した。 また、資源高などの影響については、「集中購買をやっているが、一番、大きな影響を受けているのはコバルト。あとは、プラスチック、スティールなどで、おそらく、2~300億円の影響を受けている。しかし、今の段階までは予算の中で織り込んでいる。これが今以上にあがったら厳しい状況になる。また、材料だけでなく、船や飛行機などの輸送費も10数パーセント上昇しているが、これも予算に織り込んでいる」とした。 「サブプライムの直接的な影響はない」としながらも、消費への影響については、 「消費の牽引を液晶テレビに頼っている。2009年に米国でアナログが低波。日本でも2011年にデジタルに移行する。価格も下がっていて、値ごろ感があるうえ、販路も拡大しているので、液晶テレビが牽引役になる。全体でマイナスになることはないと思っている。ただし、液晶テレビを除くと、地域によってはマイナス成長もでてくるので、対策もしなければいけない。現段階では産業に大きな影響はまだないが、意識はしている」と語った。
( 2008年7月29日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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