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Dolby Japan株式会社は8日、デジタルシネマ向けの3D技術「Dolby 3D Digital Cinema」についての説明/試写会を開催した。 DLPデジタルシネマ上映館で3D上映を可能とするDolbyの技術の総称で、プロジェクタ内部のフィルタホイールで分光した映像を、対応メガネを通して視聴することで、映像が立体化して見える。国内では16館/18スクリーンでDolby 3D Digital Cinemaが導入されている。 試写会では、「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」や「センター・オブ・ジ・アース 予告編」、「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」、「U2 3D」、「カンフー・パンダ」などを上映。なお、10月25日より映画「センター・オブ・ジ・アース」の3D上映が「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」などで開始される。
Dolby Japan代表取締役社長の漆山正幸氏は、「CEATEC JAPAN 2008でも多数の展示があり、メディアで取り上げられる回数が高まっている。3Dのブームは今まで何度もあったが、いずれも一過性のもので大きなうねりにはならなかった。しかし、映画のフルデジタル化と同時に、3Dは新しいステージに入った」と述べ、米国での3Dシネマの人気や、日本での3D対応スクリーンの増加について言及。「3Dが確実に伸びていくと期待している」と語った。 Dolby Japanマーケティング部 テクノロジー・エバンジェリストの松浦亮氏は、Dolby 3D Digital Cinemaについて解説。着席位置に関わらず優れた3D効果を実現できるほか、優れたディティール描写や色再現、電池不要なパッシブ型の3Dメガネ、通常のマットスクリーンで利用できること、などが特徴という。
3Dを実現するためにはさまざまな方式があるが、ほとんどの方式で両眼視差を用いている。異なるアングルに撮影した映像を同時に投影し、左右それぞれの目で見ることで、奥行きを感じるという仕組みだ。
1922年に赤/青のメガネを使うアナグリフ方式を用いた最初の長編立体映画「The Power of Love」が公開。トーキーより5年も古いという長い歴史を持つ3D映画は、これまでにも盛り上がりを見せたことがあったが、定着することはなかった。しかし、映画が、フィルムからデジタル化されたことにより、3D映画の普及が近づいているという。 松浦氏は、現在の3D方式の違いを簡単に見分ける方式として、「メガネ」を挙げる。既存の技術では以下の3種類がある。
円偏光フィルター方式については、2005年のチキンリトルの3D上映などDolbyでも利用したきた。しかし、いくつかのデメリットが存在していたという。 まずはメガネの経済性について。一回の上映で廃棄することが基本のため、動員が見込まれる作品では、一回の上映でたくさんのメガネを廃棄しなければいけない。また、偏光するため、スクリーンも反射特性の特殊なシルバースクリーンを使わなければいけない。つまり、上映館では、普通のマットスクリーンと切り替ける手間やコストが発生する。そのため上映運営上のフレキシビリティに欠けてしまうという。 さらに、コントラストの強い映像の場合は、ゴーストが発生しやすく、上映前の素材にゴースト除去処理が必要となるという。 もう1つの「アクティブシャッター方式」は、映像に同期してメガネの左/右目のシャッターを開閉。左右それぞれの目に、各目に対応する映像を送ることで、3Dとして知覚される。ただし、メガネに電池と同期用の赤外線受光部が必要となるので大型化などの弊害がある。 Dolby 3Dが採用した「分光方式」はR、G、Bの各波長を、右目用/左目用にシフトさせそれぞれの目に異なる映像を送る。この分光を行なうためにプロジェクタの光学系に「フィルターホイール」を搭載。左目用/右目用にフィルターホイールを使って分光し、フィルタコントローラを用いて毎秒144コマの映像に完全に同期させる。そのためフィルタと同じ特性を持ったメガネを装着することで、左右の目それぞれに、それぞれの目にあわせて映像を届けることができる。また、メガネも再利用可能で経済性に優れているという。
また、分光しているものの、左右それぞれの映像がR、G、Bの情報を持っているため、赤/青のメガネ(アナグリフ方式)などと比較して、色再現に優れるという。画質面でも、偏光フィルタを用いる方式の場合は、レンズを通過した後の光にフィルタをかけるため、画質劣化が生じる。一方、Dolby 3Dでは、光源のすぐ後ろのDLPのエンジン部にフィルターホイールを内蔵するため、劣化が少ないという。 なお、フィルターホイールは、NEC、BARCO、クリスティの3社のDLPシネマディスプレイに対応。後で組み込むことも可能となっている。
Dolby Japan代表取締役 ストラテジックアドバイザーの伏木雅昭氏は、3D映画の現状について解説。Dolby 3Dの前提となるデジタルシネマ上映館は、現在アメリカが約5,000、日本が約80、欧州が約1,200。そのうち、3D対応はアメリカが約1,000、日本が約40、欧州が300となっている。日本では現時点でデジタルシネマ上映館が少ないため、「3Dを生かし、デジタルシネマの導入加速といった逆方向の提案も必要になるのではないか」とした。 また、3Dが求められる理由について、技術の成熟や制作経験の蓄積や、表現の可能性の拡大などを挙げ、「立体視がオーディオのサラウンドと同じように定着するだろう」と予測。北米で3D上映を行なった「ベオウルフ」では、2Dに比較して3Dによる動員を324%、収入では450%と成功を収めた事例を紹介した。また、「3Dは盗撮しても役に立たない。というセキュリティ的なメリットも配給会社にはある」とした。
株式会社IMAGICA 映画本部デジタルシネマ推進室の中西勇樹課長は、同社のデジタルシネマへの取り組みを説明し、3Dデジタルシネマのマスタリングについても紹介。制作過程で左右別にファイル作成を行ない、エンコード後にデジタルシネマ用にパッケージ化する際に左右ファイルを統合するという。 3Dについては、「すぐにビジネスが立ち上がるわけではないが、業界の意向を汲んでサービス化していきたい」と説明。そのために、同社の常設の3D試写室を構築し、クオリティチェックなどに活用していくという。
□Dolby Japanのホームページ ( 2008年10月8日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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