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任天堂は1日、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の新モデル「ニンテンドーDSi」を発売した。DSといえば、シリーズ累計で7,754万台(2008年6月末時)を突破した携帯ゲーム機の代表格だが、その新モデルということで、注目度は高い。 機能面の強化で言えば、液晶ディスプレイの大型化や、カメラ機能や音楽プレーヤーの内蔵など。こうした強化を行なった理由について、任天堂は「“一家に一台から一人一台の所有へ”という究極の普及目標に一歩でも近づきたいと考えており、“マイDS”を作り上げる楽しみを提供したい」と説明している。 つや消しのホワイトとブラックの2色を用意する。価格は18,900円とDS Liteより2,100円高くなっているが、多くの機能向上を含むDSi。AV Watchで注目したい点は専用ソフトウェア「ニンテンドーDSiサウンド」によるオーディオプレーヤー機能だ。同機能を中心にDSiを試用した。 なお、ゲーム機としては僚誌のGAME Watchが、セキュリティを強化した無線LANなどネットワーク関連についてはBB Watchが、ハードウェアの分解についてはPC Watchがレポートしているので、そちらも参照してほしい。 ■ カメラ追加や液晶大型化にとどまらない変化。本体の質感も向上
パッケージには、ACアダプタやタッチペンなどを同梱。さらに、クイックガイドに基本編、操作編など多数の説明書が同梱されている。 DSiの外形寸法は137.0×74.9×18.9mm(幅×奥行き×厚み)。従来モデルのニンテンドーDS Liteと比べると、横幅が4mm、縦が1mm伸びているのだが、厚みは2.6mm薄くなっている。重量は214g(ニンテンドーDS Liteは218g)とあまり変わらない。ただ、外装の素材がザラっとした手触りの質感になり、より手になじむ感触がある。 30万画素のデジタルカメラも新たに搭載しており、ヒンジ部中央と本体の外側に合計2つ搭載。撮影機能「DSiカメラ」で撮影できる。左側面にはボリュームボタン、右側面にはSDカードスロットを装備し、SDHCにも対応。SDカード上の音楽ファイル再生などが可能となっている。前面にはヘッドフォン出力を装備する。 本体を開くと3.25型に大型化された液晶が2面あらわれる。輝度も若干向上しているように感じる。ゲーム機としての基本操作系に大きな変更はないが、一点大きな違いといえるのが、電源/リセットボタンの追加だ。下部液晶左側に配した[Power]と記されたボタンで、DSiに新搭載された機能切り替えメニュー「ニンテンドーDSiメニュー」を呼び出し可能となる。後述するが、このメニューの追加がソフトウェア面でのDSiの非常に大きな変更点といえる。 また、ヒンジ部の中央にはカメラのほかマイクも内蔵。左側にはスピーカーを内蔵している。DS Liteからの機能削減箇所としては、ゲームボーイアドバンス(GBA)用のスロットを削除したこと。GBAのソフトをプレイできないほか、GBA用スロットを利用するDS用ゲームもプレイできないのだが、オーディオプレーヤーと考えるとまったく問題はない。
■ 基本システムが一新。拡張性に期待
起動してみて驚いたのが、「ニンテンドーDSiメニュー」だ。ここからDSスロットに差し込んだゲームを選択して起動するだけでなく、本体設定や、DSiカメラ、DSiサウンド、DSiショップ、DSダウンロードプレイ、ピクトチャットなどの機能が呼び出せる。さらに、ネットワークを介して、専用ソフトウェア「DSiウェア」の追加も可能となっている。 また、カメラの撮影画像や録音ファイルが保存可能な256MBのメモリも内蔵したことで、アプリケーションの追加を可能としている。従来は、DSのソフトと、ピクトチャットを選択する程度の機能しか提供していなかったが、DSiではアプリケーションの追加や並び順の変更などさまざまな設定が行なえるようになった。 外見上DS Liteと大きな変更が無いが、ソフトウェア的には一新ともいえる変化だ。このDSiメニューがOSのように動作するため、今後PSPやPS3などのようにソフトウェアアップデートによる機能強化も期待される。実際、発売当日の1日にネットワークサービスの「ニンテンドーDSiショップ」にアクセスすると、ファームウェアのバージョンアップが行なわれ、Ver.1.0JからVer.1.1Jにアップグレードされた。
■ 音質はイマイチだが、圧倒的に“楽しい”音楽プレーヤー 注目のオーディオプレーヤー機能だが、DSiサウンドというアプリケーションが標準で搭載されたことで、SDカードスロット内の楽曲再生を可能としている。
再生可能な音楽ファイルはAACで、拡張子が.m4a、.mp4、.3gpのファイル。ビットレートは16kbps~320kbpsまで、サンプリング周波数は32kHz~48kHzまで対応する。 AACを転送したSDカードをDSiに挿したところ、iTunesで作成したAACファイルについては問題なく再生できた。また、iTunes Storeで購入したDRM付き楽曲は再生できないが、DRMなしのiTunes Plus楽曲は再生可能。なお、MP3(.mp3)やWMA(.wma)の拡張子を変更して、SDカードに記録してみたが、本体から楽曲名は表示されるものの、「対応していないファイルです」との警告が表示されてしまい再生できなかった。 SDカードへの転送に特別なソフトなどは必要なく、パソコンからカードリーダ上のSDカードにそのままドラッグ&ドロップし、そのカードをDSiに入れるだけでDSi側から認識される。ただし、DSiのSDカードスロットはSDカードのレーベル面を裏返して挿入する形になっているので、最初は戸惑った。DSiで表示されるフォルダ数は最大1,000個、1フォルダにつき最大100個までの楽曲が認識できる。 SDカードにAACファイルを入れれば再生できる、という汎用性の高い方式なのだが、AACファイルを用意する(作る)、SDカードに転送するというのは、完全にユーザー任せになっているのが気になった。そういった知識のないユーザーに対しても、AACファイルの作成や、転送・管理に任天堂らしい提案があっても楽しかったように思う。 音楽プレーヤーとして利用するためには、DSiメニューから新たに追加された「DSiサウンド」を起動する。すると、「マイクで録音してあそぶ」と「SDカードの音楽であそぶ」の2つの項目が現れる。ここでSDカードの音楽であそぶを選択するとプレーヤー機能が立ち上がる。
プレイリスト転送/再生機能は備えていないが、ランダム再生を行なう「おまかせ」や、SDカードの任意の楽曲を登録できる[ベスト10]、[思い出]などの機能を備えている。 再生画面に入ると上の液晶に楽曲リストが表示される。下の液晶部にはDSiサウンドの最大の特徴ともいえる「音楽であそぶ」機能の選択項目が現れるが、まずは“普通”のプレーヤーとしての音質をチェックしてみた。 ソニー「MDR-EX90SL」やULTRASONEの「HFi 680」などのイヤフォン、ヘッドフォンを接続してみたが、ダイナミックレンジが狭めで、特に高域側の伸びがいまひとつ聞こえる。女性ボーカルを聞くと、やや息詰まったようなヌケの悪さが気になってしまう。情報量も専用のプレーヤーと比べると今一歩物足りない。とはいえ楽曲のバランスを失うような音作りではないので、カジュアルに楽しむ分には問題ないだろう。ただ音にこだわりたいという人には、専用プレーヤーには敵わないことは確かだ。 なお、音楽再生中はヘッドフォンを接続している場合は本体を閉じても、再生が継続されるが、ヘッドフォンを接続せずに内蔵スピーカーで聴いている場合は、閉じると再生が一時停止されるようになっている。
・一青窈が平井堅に……。 8ビットゲーム風効果も
DSiサウンドの最大の魅力といえるのが、音で遊ぶという機能だ。再生画面で下の液晶に表示される3つのアイコンで呼び出し、一番左は再生スピードやピッチを変更、中央は4種類のエフェクト、右がDSiで録音した音を重ねる機能だ。 まずは再生速度/ピッチ変更を行なってみた。同画面では十字のUIが表示され、横軸が再生速度を、縦軸が音程を表している。タッチパネルで横軸右側に動かすと再生速度が速くなり、左に動かすと遅くなる。一方、上方向にスライドすると音程があがり演奏も声も高くなり、下方向で音程を下げ押しつぶしたような声質に変えることができる。 もちろん、速度を上げながら、音程を落とすということもでき、パネルの操作をすぐに追従してくれるので、曲の雰囲気を思いっきり変えて楽しめる。単純にいろいろな曲をいじるのも面白いが、例えば、テレビ番組の「トリビアの泉」でも取り上げられたことのある、“一青窈の歌のピッチを下げると平井堅が歌っているように聞こえる”、というネタを簡単に確かめられる。ためしに一青窈のアルバムのピッチを下げる聞いてみたが、語りの部分以外は、本当に平井堅のアルバムのように感じて、驚いた。「何に使う?」と聞かれると、すぐに答えは出てこないのだが、使っているだけで楽しい機能であるのは間違いない。
パネル中央のエフェクト機能は、「ラジオ」、「エコー」、「カラオケ」、「8ビット」の4種類を用意している。この機能も非常によくできている。ラジオは古いラジオのような音に変えるもので、ステレオ感がまったく無くなり、すべての音がセンターにまとめられ、時折軽いノイズも混じってくる。それほど受信状態のよくないAMラジオといった雰囲気が非常によく出ていて、さまざまな曲に適用して楽しめる。 エコーはそのままで楽曲に響きが付加される。カラオケはボーカルをキャンセルする機能で、自分で歌いたいときなどに楽しめる。かなり高い確率で、ボーカルがきちんとカットされ、完成度はなかなか高い。 さらにユニークなのが8ビット。楽曲をファミコン世代の音源のようなピコピコした音に変えてしまう。オールドゲームファンなどには楽しめるだろうし、懐かしさを感じる人も多いだろう。ただし、大抵の音源が同じようなテイストになってしまうので、飽きると使わなくなってしまうかもしれない。 また、DSiで録音した音声を楽曲に重ねるという機能も装備。後述するが、録音ファイルに各種エフェクトを適用できるので、音を重ねて楽しむことができる。画面上に表示されているインコをクリックすると、DSiサウンドの楽しみ方を教えてくれる。
さらに、楽曲再生中に下の液晶上部のつり革のようなアイコンをクリックするか、カーソルキーの上下を押すことで、上画面の表示を切り替えられる。画面はイコライザを模したものから、スーパーマリオやエキサイトバイクなどのオールドゲーム風のものも用意。スーパーマリオでは音を聞きながら、ジャンプしてコインを集める簡易ゲームとしても楽しむことができる。 また、L/Rボタンを押すと、楽曲に効果音を追加できる。効果音はキックやタムなどのドラムサウンドから、拍手などまで用意されている。ちなみに、エフェクト機能を使用していると、この効果音にも適用される。
・遊べる録音機能も
マイクによる録音機能も装備。録音時間は10秒だけだが、録音したファイルにさまざまな効果を適用できるのが特徴だ。18個までの録音ファイルを保存でき、この音声データのピッチや再生スピードを変えるだけでなく、インコやロボット、ヘリウムなど声質を変えたり、扇風機やトンネルの音、トランペットや口笛の音などのエフェクトを適用できる。 ここで作成した音を、音楽再生時に曲に重ねることもできる。なお、録音したデータをSDカードに保存したり、SDカードから読み込んだ楽曲に対して、エフェクトを適用して登録することはできない。この機能で扱えるのは、あくまでマイクで録音した曲のみだ。
■ 画質はそこそこに“楽しめる”カメラ機能
DSiの大きな特徴といえるカメラ機能についても簡単に紹介しよう。画素数は30万画素/640×480ドットとたいしたことがなく、だいぶ昔の携帯電話並みだ。この画素数は、DSiの液晶の解像度のちょうど2.5倍ということで決められたという。 フル機能を使うためには、「DSiカメラ」をDSiメニューから呼び出す必要があるが、アイコンを選ばずにも、DSiメニュー時でもL/Rを押すだけで、カメラモードを呼び出せるなど非常にアクセスしやすくなっている。 DSiカメラを立ち上げると、カメラ、アルバムという2つの機能のほか、上部に[本体]、[SDカード]という項目が用意されている。ここで、撮影画像の記録先を選択できる。 カメラのトップ画面では、撮影用のカメラを選択可能となっている。内側と外側のカメラの選択だけで無く、“ふつうの”カメラのほか、ゆがみ、らくがき、色付け、いたずらカメラ、顔合成、似てる度などさまざまなカメラのエフェクトが選択できるようになっている。タッチパネルを触りながら、写真に落書きしたり、顔をゆがめたり、2人の顔を合成したり、といったさまざまな機能が用意されている。こうした“写真遊び”がDSiのUI上でうまくまとめられており、気軽に楽しめる。
撮影した画像の「色かえ」や「らくがき」、「ゆがみ」などの編集も可能。また、撮影した画像をDSi起動時の上画面の壁紙に指定できるほか、スライドショー表示も可能。撮影した画像をカレンダーから確認することもでき、「その日の出来事」を後から確認できるのも面白いポイントだ。
■ Webブラウザは、YouTubeやニコニコ動画の再生は不可
無線LANも機能強化され、セキュリティ方式としてWEPだけでなくWPA方式も利用可能となった。また、新たにスタートした「ニンテンドーDSiショップ」でDSi専用ソフト「DSiウェア」がダウンロード可能で、11月1日現在は「ニンテンドーDSiブラウザー」が提供開始されている。 OperaをベースとしたWebブラウザで、描画速度はさほど速くないが、2画面表示しながらWebサイト内容を確認でき、慣れてくるとなかなか使いやすい。なお、YouTubeやニコニコ動画などにおけるFLV動画再生はできなかった。
GBAスロットが省かれたため、その関連周辺機器は利用できないが、DS専用の周辺機器、ワンセグチューナの「DSテレビ」はDSiでも利用可能。DSiメニューからDSテレビが認識され、従来どおり利用できた。 ■ 音楽や写真の可能性を広げるプレーヤーに 「DSi」については、外見上はさほど大きな変化を感じなかったため、“カメラがついたマイナーチェンジ機”程度に考えていた。しかし、DSというプラットフォーム自体が一新され、未来のさまざまな可能性を感じさせる仕上がりになっている。 今回も発売当日にソフトウェアのアップデートが行なわれており、DSiが“進化するプラットフォーム”となった。また、DSiウェアによる機能強化がこれからどうなっていくのか、Wiiとの連携も含めて注目されるところだ。 新たに追加された音楽プレーヤー、カメラ機能についても、DSiならではの楽しみ方の提案がなされている。いつも持ち運ぶ、一人一台の「マイDS」を目指す任天堂ならではの工夫が、音楽を聴くこと、写真を撮る/見ることのそれぞれのシーンで、新しい楽しさとして、確かに感じられる。 音楽を聴きながら、自分で音を加えたり、音自体をいじってみたりという体験は、単に“聴くこと”とはまた違った新鮮な驚きがある。その驚きの機会をうまく演出する仕組みが多数盛り込まれているのが、新DSiだ。「音であそぶ」という機能名からもそうした意気込みが感じられるが、遊びに特化した会社だからこそ、“遊びを真剣に考える”ことの凄みを見せてくれているようにも感じる。 そろそろ頭打ち間の見えてきたデジタルオーディオプレーヤーやデジタルカメラの市場についても新しい刺激になっていく。DSiは、そんな新しい「楽しさ」の提案が詰まった製品となっている。 □任天堂のホームページ ( 2008年11月1日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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