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12月1日にスタートした、日本放送協会(NHK)の有料VODサービス「NHKオンデマンド」。AV Watchでは、同日にPC向けサービスの試用レポートを掲載したが、NHKオンデマンドはPCだけでなく、対応テレビで使用できる「アクトビラ ビデオ・フル」と、ケーブルテレビの「J:COM オン デマンド」、NTT系の光ファイバ回線向けの「ひかりTV」でもスタートしている。 テレビ向けのサービスの特徴は、HD解像度での高画質配信となる点。PC版は756kbpsもしくは1.5MbpsのSD解像度となっていただけに、テレビ向けのほうが画質面での優位性は大きい。 今回デジタルテレビ向けのポータルサイト「アクトビラ」上で展開されているNHKオンデマンドをテストしてみた。対応機器として、アクトビラ ビデオ・フル対応のテレビやレコーダが必要となるが、今回はブルーレイDIGA「DMR-BW930」を利用した。
■ 大画面で見るならテレビ版が優位。一覧性はPC
アクトビラ対応のテレビ製品は多いが、NHKオンデマンドを楽しむためには、MPEG-4 AVC/H.264でHD映像を受信できる「アクトビラビデオ・フル」に対応している必要がある。現時点での対応機種は、シャープ、パナソニック、東芝、日立の薄型テレビの一部製品と、パナソニックのブルーレイDIGA「DMR-BW930/830/730」のみだ。 また、インターネット回線も実効速度12Mbps以上のFTTHでの利用が推奨されている。そのため、パソコン版と比べると、使用機器もインターネット回線もややハードルが高いといわざるを得ない。 NHKオンデマンドの利用の前に、アクトビラの登録が必要となる。一度登録してしまえばいいとはいえ、リモコンで「名前」、「ふりがな」、「生年月日」、「クレジットカード番号」などを入力していくのは面倒だ。このあたりはパソコン版のNHKオンデマンドのほうが使用前のハードルが低いと感じる。 決済方法は、クレジットカードのほか、So-netの課金システムを利用する「Smash決済」も用意されている。
登録が終わると、アクトビラのトップページが立ち上がる。トップページでは、NHKオンデマンドを直接選択できる箇所は無いが、下の告知バーの部分からNHKオンデマンドにアクセス可能となっていた。また、ビデオメニューに入ると、大きなNHKオンデマンドのバナー表示が現れ、ここからもアクセス可能だ。 サービスの料金体系は、PC版とほぼ共通で、NHKの地上波/BS合わせて1日10~15番組を放送後から約1週間、購入後24時間まで視聴できる「見逃し番組」と、1,200本以上のタイトルを用意し、購入後72時間まで再生可能な「特選ライブラリー」の2種類のカテゴリが用意されている。 料金体系もPC版と同じ。「見逃し番組」には1,470円の「見放題パック」を用意。単品の視聴料金は、PC/テレビ向けいずれのサービスも105円~315円。ただし、特選ライブラリーの本数はパソコン用より少なく28本となっているなど、内容には若干差があるようだ。コンテンツは、試用した限りではすべてHD/16:9と記載されている。 アクトビラ上のNHKオンデマンドは、リモコンでの操作に最適化しており、一覧性はPCほど高くはないが、スムーズに操作可能だ。画面左側に「見逃し・ニュース見放題」、「特選ライブラリー」、「見逃し番組」、「ランキング」、「ジャンル」、「マイページ」の各検索項目を用意している。 各項目には1~6までの番号が振られており、カーソルーキーでの移動だけでなく、リモコンのボタンでも項目選択が可能。また今日の特集やピックアップ番組なども用意されている。 「見逃し・ニュース見放題」は月額1,470円で、直近1週間、1日10~15本の番組やニュースを視聴可能となるメニュー。見逃した番組を確認する場合は、この項目を中心に活用することになるだろう。
「特選ライブラリー」はおすすめの番組を表示。「見逃し番組」は、1週間以内の任意の見逃し番組を選択して、視聴できる。「ジャンル」では、報道/ドキュメンタリー/スポーツなどのジャンルだけでなく、サブジャンルに分けての検索も可能。ただ、パソコンのようにサムネイルが用意されておらず、キーワードを絞り込んで検索していく方式なので、あまり一覧性が高く無いのが残念なところだ。
今回はクレジットカード情報をアクトビラに登録し、「かんたん決済」で番組を購入した。カード情報とアクトビラの会員情報登録さえ済んでいれば、購入方法はシンプルだ。番組を選択すると、回線状況が視聴可能かどうか、確認を促す画面を表示。購入を選ぶと、4桁の暗証番号の入力画面が現れる。ここでアクトビラ登録時に設定した暗証番号を入力することで、購入完了する。
PC版と同様に、朝の連続ドラマ「だんだん」を視聴してみた。22型/1,366×768ドットの液晶テレビで再生してみたが、確かにネット配信とは思えないほどの解像度の高さが感じられる。ただし、少し離れてみるとさほど気にならないが、よく見ると衣装のディティールなどはつぶれ気味で、モスキートノイズも散見される。また、若干顔の肌色ものっぺりとした印象で細かいノイズも感じられる。 もともと高画質な番組ということもあるが、地上デジタル放送の同番組と比べると、画質差はかなりあった。また、今回試用したブルーレイDIGAには、MPEG-4 AVC/H.264で長時間録画する機能も備えているが、低ビットレートのHL(4.3Mbps)モードで圧縮したほうが、ノイズの少なさや精細感などで上回っていると感じた。とはいえ、NHKオンデマンドの配信番組も、字幕のクリアさや背景の見通しの良さ、立体感など、SD解像度の配信とは次元の違う画質が体験できる。 なお、番組検索画面ではほぼすべてのコンテンツがHDとして表示されているが、実際には素材はSDでアップコンバートしていると思われる番組もある。例えばHD収録は無理だろうと思われる「あの人に会いたい 松下幸之助」も[HD]と記されている。視聴してみると、タイトル画面とエンディングだけHDで、実際の収録番組は4:3となっていた。ただ、こちらも字幕はかなり高精細だ。 また、途中で再生停止したあとに、中断した箇所から再生を再開するレジューム機能も備えており、テレビ向け配信ならではの機能追加も図られているようだ。 気になるのはトリックプレイ。アクトビラ経由のNHKオンデマンドでは、早送り/戻しができない。再生を開始すると、カーソルキーで早送り/戻しができるかのように、画面に操作メニューが表示されるが、実際に使ってみると「この操作はできません」と表示されてしまう。ただし、番組には3分ごとにチャプタが切られているため、リモコンの赤ボタンで3分スキップ、青ボタンで3分バックが可能となっている。とはいえ、「数十秒スキップしたい」というときには若干ストレスを感じてしまう。
また、早送り/戻しの仕様については、配信事業者によって異なっており、J:COM オンデマンドは、各3段階の早送り/戻し(コンテンツにより倍速は異なる)、ひかりTVは4/8/32倍速の早送り/巻き戻しや、10分ごとのチャプタ、時間指定のジャンプ機能を備えているという。 パソコン版に比べると、画質面でのアドバンテージは大きい。なにより、じっくりと作りこまれたドキュメンタリーなどは、テレビでしっかり見たいという人も多いだろう。そうした意味で、特に大画面テレビの利用者にとっては、テレビならではの良さは歴然とあるだろう。ただ、今回試用したDIGAでは、録画実行中はアクトビラへのアクセスができないなど、使い勝手の面では柔軟性に欠けるきらいもある。 情報ツール的に活用するのであれば、パソコンのほうが検索性や一覧性に優れているといえるかもしれない。NHKの膨大なアーカイブにアクセスでき、何があるかをすぐに調べるという点はPC版のほうが使いやすく感じた。 パソコンとテレビの双方で利用するためには、それぞれに契約が必要というのが残念なところ。できれば、1つのIDを共有し、同一料金でさまざまな機器で利用できるようになってほしいところだ。とはいえ、膨大なアーカイブを気軽に楽しめるサービスとして、テレビ/PC版ともに十分に魅力的といえる。
□NHKオンデマンドのホームページ ( 2008年12月3日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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