◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
シャープ、液晶テレビが200億円を超える赤字
-通期業績は、58年ぶりの最終赤字見通しに


シャープ大阪本社

2月6日発表


 シャープ株式会社は6日、2008年度第3四半期(10~12月)連結決算を発表した。連結売上高は前年比20.2%減の9,212億円、営業損益は前年同期の519億円から158億円の赤字に転落。経常損益は同じく486億円の黒字から158億円の赤字に転落。また、当期純損益は295億円から赤字化し、658億円の赤字となった。

 減収減益要因として、シャープの大西徹夫取締役兼執行役員経理本部長は、「第2四半期の業績発表以降、景気の下振れ懸念が高まり、売上高においては市場価格の下落で1,755億円のマイナス、為替で741億円のマイナスが影響した。また、営業利益では市場価格の下落で1,755億円、為替で195億円の影響。コストダウン効果などで1,273億円のプラスとなったが、これをカバーできる前年同期に比べて、678億円悪化した」とした。

 主な特別損失として、投資有価証券評価損で433億円、液晶パネル工場の再編などによる影響で217億円、独占禁止法関連損失で120億円が含まれている。

 また、2008年4月~12月までの9カ月累計では、売上高は前年比10.3%減の2兆2,975億円、営業利益は前年同期の73.4%減の348億円、経常利益は81.0%減の216億円、当期純損益は前年同期の729億円から378億円の赤字となった。

 一方、同社では、2008年度の通期連結業績見通しを下方修正した。売上高は10月6日公表値に比べて5,200億円の減少となる前年比15.1%減の2兆9,000億円、営業損益は1,600億円の減少となる300億円の赤字、経常損益は1,500億円の減少となる500億円の赤字、当期純損益は1,600億円の減少となる1,000億円の赤字へと修正した。

 通期で最終赤字になるのは、1950年以来、58年ぶりのこと。また、営業赤字は1953年に開示して以来、初めてのことになるという。


■ 液晶テレビが200億円を超える赤字

 第3四半期(10~12月)の部門別の業績は、エレクトロニクス機器部門が18.1%減の5,038億円、営業損益は前年同期の220億円の黒字から185億円の赤字に転落した。同部門のうち、AV・通信機器の売上高は18.0%減の3,732億円、営業損益は前年同期の130億円の黒字から223億円の赤字に転落。「液晶テレビは販売台数は増加したものの、大幅な価格下落と、為替の影響を受け、販売金額が減少。赤字のほとんどが液晶テレビによるものだと考えてもらっていい」とした。

 液晶テレビの販売台数は前年同期比12%増の289万台と2桁増となったものの、販売金額は19.6%減の2,049億円となった。通期見通しは前年比21%増の1,000万台とするが、販売金額は10.3%減の7,300億円に留まるとした。同社では、期中に年間1,100万台の出荷見通しへと計画を引き上げたが、今回、改めて期初目標と同じ1,000万台に引き下げた。

 大西取締役は、「BDレコーダ内蔵テレビなどの明確に差別化した商品を投入するとともに、液晶テレビ生産の世界5極体制によって、為替リスクを回避する体制を整えるほか、企画、設計、調達といった分野においても現地化をはかり、さらには製造アウトソーシングの活用も検討していく。コスト競争力の強化、リードタイムの短縮などによって収益改善に乗り出す」とした。

 2008年4~12月までの9カ月累計での液晶テレビの販売台数は21%増の767万台。販売金額は8.6%減の5,834億円となった。「第4四半期についても、液晶テレビ事業の回復は難しい。同じ状況が今期は続くとみており、第4四半期の赤字幅は、第3四半期と同等規模になりそうだ。来期以降の収益改善を図りたい」と語った。

 第3四半期単独での289万台の出荷台数実績のうち、国内が2.5%増の110万台、海外が18.6%増の179万台。海外のうち北米が5.1%減の76万台、欧州が37.1%増の63万台。また、9か月累計では、国内が15.2%増の約297万台、海外が25.5%増の約471万台。そのうち北米が10.3%増の222万台、欧州が16.7%増の140万台。一方、通期見通しの1000万台のうち、国内が10.1%増の380万台、海外が29.2%増の620万台。そのうち、北米が8.9%増の280万台、欧州が24.1%増の180万台とした。

 なお、2010年3月の稼働を予定している大阪府堺市の堺工場については、「計画通りの稼働を予定している。当初は3万6,000枚の稼働を予定し、フル稼働時には7万2,000枚を計画しているが、市場の状況を見ておく必要がある」と慎重な姿勢をみせた。

 一方で、携帯電話は、国内市場の低迷により、前年から大幅な減少。携帯電話端末および通信融合端末では、第3四半期単独の実績で販売台数が前年同期比28%減の260万台、販売金額は27.0%減の1,153億円。9カ月累計では31%減の802万台。29.8%減の3,470億円となった。また、通期見通しは、31%減の1,070万台、32.4%減の4,400億円とした。

 「国内携帯電話市場の低迷はあるが、高機能と普及機に二極化する市場に対して、ターゲットユーザーを明確化した製品を投入する。欧米向けの通信融合端末の強化、中国をはじめとする新興国市場向けの強化も図る」とした。

 健康・環境機器の売上高は17.6%減の490億円、営業利益は27.2%減の5億円。エアコンの減少などが影響したが、「白物家電全体では利益が出ており、前年同期比でも増加している」などとしている。情報機器の売上高は19.2%減の815億円、営業利益は61.1%減の32億円。ファクシミリなどの販売が減少した。

 電子部品等部門は、売上高が19.9%減の3,529億円、営業利益は94.9%減の15億円。そのうち液晶の売上高は20.9%減の2,426億円、営業利益は77.4%減の55億円。需給状況の変化に伴うパネル価格の下落のほか、携帯電話向けを中心とした中小型液晶パネルの販売が減少したのがマイナスに影響しているという。

 「テレビ向けの大型パネルは、北京オリンピック時点から在庫が溜まりはじめ、第3四半期にはその反動があった。10~12月に販売が思ったほど伸びなかったことも影響している。だが、各社とも生産調整をしており、1~3月に底を打ち、4月以降は徐々に需給状況が緩和されてくると見ている」と予想した。

 太陽電池の売上高は18.1%増の378億円、営業損失は前年同期の19億円の赤字から、さらに赤字幅が拡大し35億円の赤字。昨年10月の葛城新工場稼働に伴う立ち上げ費用の影響とともに、太陽電池需要が旺盛な欧州におけるユーロ安が影響した。「欧州での為替条件の悪化はあるが、国内での太陽電池の需要が伸びていることに加え、米国市場における販売が堅実に伸びている。通期での収支はトントンと見ており、来期以降は黒字で進められる」とした。

 その他電子デバイスは25.0%減の724億円、営業損益が前年同期の71億円の黒字から4億円の赤字となった。携帯電話市場の減速などにより、CCDおよびCMOSイメージャーなどの電子部品の減少が影響した。


■ 非正規社員1,500人を削減

 同社では、第3四半期決算および通期業績見通しの下方修正にあわせて、業績改善対策を明らかにした。液晶工場の再編では、昨年12月に発表した三重第1工場および天理工場の一部生産ラインを閉鎖するとともに、既存のラインにおける生産品目やパネルサイズの最適化、工場集約による収益の改善を図る。「競争力を維持するための施策。来年度以降、ランニングコストの削減を図れるようにする」という。

 また、人員体制の見直しとして、成長事業分野および営業・サービス部門の体制強化を図る一方、国内の非正規社員1,500人を、契約を延長せずに削減する方針を示した。「売り上げ規模に応じた適正な人員規模にする」としている。

 さらに、固定費で1,000億円の削減、総経費で2,000億円の削減のほか、世界各地における国内生産意識の高まりにあわせた前半工程の現地化の促進、イタリアのエネル社と太陽電池分野における協業をはじめとする世界有力現地企業とのアライアンスへの取り組み、投資額の最小化および投資効果の最大化を狙ったキャッシュフローの改善を図るという。

 大西取締役は、「来期には黒字化できる体制にする」としたほか、「業務改善対策の詳しい内容については、2月下旬から3月上旬に改めて説明する」と語った。

 一方、同社では、役員報酬の減額を発表。2009年3月から9月まで、取締役および執行役員は月額報酬を5~30%減額するとともに、監査役は5%の報酬を自主返上。さらに2009年6月の役員賞与はゼロとし、役員の実質年収は30~50%減額することになる。また、管理職についても、年収で10~20%の減額になる。

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□第3四半期決算情報
http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/library/financial/index.html
□業績予想の修正、配当予想の修正及び役員報酬の減額等に関するお知らせ
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/090206-a.html
□関連記事
【2008年12月12日】シャープ、液晶パネル工場を再編。一部を閉鎖へ
-三重第1と天理を閉鎖。堺工場稼動を視野に効率化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081212/sharp.htm
【2008年10月30日】シャープ、上期決算は携帯電話などの不振で減収減益に
-ソニーとの液晶パネル生産合弁は「良い方向を模索中」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081030/sharp.htm
【2008年10月6日】シャープ、携帯電話や液晶の減収で業績予想を下方修正
-通期も修正。「携帯電話関連は厳しい経営が続く」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081006/sharp.htm

( 2009年2月6日 )

[Reported by 大河原克行]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.