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パイオニア、'10年3月までにディスプレイ事業から完全撤退
−「断腸の思い」。現行製品が最後に。純損失1,300億円


パイオニア 小谷進社長
2月12日発表


 パイオニア株式会社は12日、2009年3月期第3四半期(10月1日〜12月31日)の決算を発表すると同時に、同日の取締役会で決議した構造改革を発表。ディスプレイ事業からの完全撤退を決定した。現在販売している商品を最後とし、今後の自社開発を中止。2010年3月までに撤退するという。

2009年3月期第3四半期(10月1日〜12月31日)の決算

 パイオニアは、1997年に50型の民生用プラズマテレビを発売。その後、2004年にNECからプラズマ事業を買収するなど、プラズマディスプレイを事業の中核に据えて展開してきたが、コスト競争力の低下などを受け、2008年3月にプラズマディスプレイパネルの自社生産から撤退する方針を発表。パナソニックからのプラズマパネル調達や、シャープからのパネル供給を受けての液晶テレビ参入を計画していた。

 製造コストを下げ、原価の低減を目指したこれらの施策について小谷進社長は「当初は計画通り進んでおり、ほぼ今期中にディスプレイ事業の構造改革は終了する見通しだった」と振り返る。しかし、「10月からの急激な経済環境の悪化により、薄型テレビの価格が想定を遙かに上回るスピードで進んでしまい、今の構造改革スピードでは損益改善ができない事になってしまった」という。

 「それでもなんとか事業を残せないかと色々と検討した」(小谷社長)が、頼みの綱とも言えるカーエレクトロニクス事業の営業収入は、自動車販売不況の影響を受け、カーオーディオ/ナビの売り上げが共に減少したことで、前年同期28.4%減の663億円。営業損益もカーオーディオの売り上げ減少と原価率悪化が影響し、前年同期59億円の利益から、71億円悪化した12億円の赤字。通期でも125億円の赤字になる見込みで「将来考えるとディスプレイはどうしても続けていけない。断腸の思いで撤退を決断した」という。

 パネルなどで協業関係にあるパナソニックとシャープとの今後の関係について小谷社長は「プラズマをパナソニックから供給してもらうという話は断念したが、当社はプラズマ関係の特許をかなり保有しているので、このへんをどうするかは今後のパナソニックとの話し合いによる」と説明。シャープとは「色々な分野でプロジェクトが進んでおり、協業した製品も市場に出ている。液晶パネルの供給はカーナビなどの小さなサイズになるだろう」と語った。

 さらに、光ディスク事業についても具体的な協業の方法について検討を進めており、合弁も視野に入れた損益改善策を進めるという。協業相手はシャープで「今現在、光ディスク事業での合弁会社設立に向けた協議を進めている。細部の詰めが終了すれば、近いうちにご案内できるだろう」とした。

 なお、第3四半期の決算は、営業収入が前年同期比62.2%の1,312億円。営業利益は107億円の損失、純利益も261億円の赤字となった。4月〜12月の、9カ月通期では営業収入が同77.1%の4,583億円。営業損失は238億円、純損失は791億円。

 ホームエレクトロニクスの営業収入は前年同期に比べ、48.8%減の514億円。プラズマやDVDドライブ、オーディオ製品の売上減が響いた。なお、ホームエレクトロニクスの営業収入全体に占めるディスプレイの売上構成比は前年同期の約42%から約39%に低下している。営業収入は国内は30.4%減の102億円、海外は52%減の411億円。営業損益は前年同期の7億7,700万円の利益から、97億円の赤字へと大幅に悪化している。

 これを踏まえ、10月に発表した2009年3月期の通期連結業績予想を修正。営業収入を前回の7,000億円から5,600億円に1,400億円マイナス。営業損失は170億円から690億円へと拡大。純損失も780億円から1,300億円に拡大するとした。ホームエレクトロニクス事業の通期予想は、営業収入が前回予想の2,700億円から2,050億円に減り、営業損益も270億円から520億円へと拡大する見通し。

第3四半期のホームエレクトロニクス事業の業績 第3四半期のカーエレクトロニクス事業の業績
通期の業績予想 9カ月通期のセグメント別業績


■ ホームエレクトロニクス事業は、オーディオ、DJ機器、CATV関連機器の3つに

 ディスプレイ事業の撤退により、今後のホームエレクトロニクス事業は、オーディオ、DJ機器、CATV関連機器の3つに絞って展開される予定。「特に“音”へのこだわりを持って、これまで当社が積み重ねてきた“音”に関する技術や知識を活かし、新たな事業領域にも積極的に取り組んでいく」としている。

 また、カーエレクトロニクス事業も経済環境の悪化による自動車需要の減少影響を、市販/OEMともに受けているが、2010年3月期には回復基調に入り、その後は環境対応や省エネルギー対応等の需要が拡大すると予想。ディスプレイなどから経営資源を振り向け、新たなビジネスチャンスに挑戦する。具体的な製品としては、Blu-ray Disc対応の車載モデルや、ネットワーク対応型商品など、新しいラインナップを拡充。テレマティクス事業への取り組みを強化し、中期的にはテレマティクス事業をカーエレクトロニクス事業拡大の牽引役として育てていく予定。「ネットワーク対応など、当社の技術と他社との技術を組み合わせればさらに飛躍できると考えており、悲観はしていない」という。

 市販市場では、BRICsを中心とした新興国での事業拡大は継続。日本や欧米の市販市場の縮小を補っていく計画。OEM事業では、ネットワーク対応や高付加価値製品の導入など、従来の企画力を活かし、「自動車メーカーに対しても新たな価値を生み出す提案を積極的に行ない、カーナビゲーションを中心に受注拡大に取り組んでいく」としている。一方で、費用が増大しているカーナビ用ソフトウェア開発の開発効率の向上、プラットフォーム共通化によるハードウェアのコスト削減などを推進。他社との協業も協議を進めているという。物流コスト削減、生産拠点の統廃合による生産効率の向上なども実施。市場回復後の事業拡大に備える。

 ディスプレイ事業の撤退や、カーエレクトロニクス事業での生産体制見直しに加え、従来からスピーカー事業統合の一環として取り組んできた生産拠点の統合により、国内外の生産拠点を集約。現在全世界で30社ある生産会社を約3割削減する。販売体制もホームエレクトロニクス事業の縮小に合わせて見直し、拠点の統廃合も含め、事業規模に合わせた体制をとる。本社機能、研究開発機能についても同様で、こうした施策により、従業員については2008年12月末と比べ、全世界で約6,000名、派遣・請負社員も約4,000名の削減を計画。各地域で労働組合との協議が開始される。

 財務体質の改善にも着手。棚卸資産の圧縮、設備投資の抑制、遊休資産売却、役員報酬や給与の減額などを推進。昨年7月から実施している役員報酬減額の幅を、2009年2月から基本報酬部分の20〜50%とし、2011年3月まで実施。役員報酬は引き続き支給しない。さらに、将来的な財務体質改善を図るため、財務面でのパートナーシップに向けても活動を進めるという。


■ ディスプレイ撤退は「断腸の思い」

小谷進社長

 小谷進社長はこうした構造改革について「5期連続の最終赤字という厳しい状況を脱却し、当社が再び光り輝くために、大きな痛みを伴うもの。私が先頭に立ち、不退転の心構えで取り組むものだ」と説明。ディスプレイ事業からの撤退については「我々が業界の先駆けとなって取り組んだ事業を断念するのは断腸の思い。しかし、このままでは損益改善は見込めないと判断して決意した。ユーザー、販売店、これまでのご支援頂いた皆様に対し、心から感謝している。なお、製品のアフターサービスは引き続き行なう」と語った。

 ディスプレイ事業に対する思いとして小谷社長は、「今でもプラズマの事業を続けられれば続けたいと思っている。国内外で大変に高く評価していただいたKUROなど、技術的な面も自信を持っている。本当になんとかして続けられないかと手を尽くした」と未練を滲ませる。「(そうしたパネルを開発した)技術者達の思いも十分わかっているつもりであり、申し訳ないなと思っている。しかし、今後パイオニアが再び立ち直り、光り輝けなければ従業員に対しても我々が責任を全うしていないことになる」と撤退を決意した心境を語る。

 また、こうした厳しい決断をしなければならなくなった理由について問われると「今までプラズマで赤字を出していても、カーエレクトロニクス事業の黒字で帳消しにして、利益が残るパターンを続けてきた。そのへんが甘かったのかなと思っている」と分析した。

 黒字化のタイミングについては「構造改革を確実にやれば、2011年には黒字化できると考えている」と説明。「今の計画では、2010年3月期も厳しい数字にはなるだろうが、債務超過には陥らないと考えている」とした。

 最後に、将来の成長に結びつく新規事業の開拓にも意欲を見せる。同社は光ディスク製造技術・微細加工技術を応用した「次世代ハードディスク製造装置」や、「高感度撮像素子を利用した高付加価値部品」などで優位性ある技術を保有しており、これらを用いて、産業用分野で早期事業化を目指す。同時に、一般家庭向けの製品だけでなく、住宅組み込み型の製品の開発や、「生活音」に対する研究も進めるという。

□パイオニアのホームページ
http://pioneer.jp/
□ニュースリリース(構造改革について/PDF)
http://pioneer.jp/press/2009/pdf/release_3q09j_02.pdf
□ニュースリリース(第3四半期決算について/PDF)
http://pioneer.jp/press/2009/pdf/release_3q09j.pdf
□ニュースリリース(連結業績予測修正について/PDF)
http://pioneer.jp/press/2009/pdf/release_3q09j_04.pdf
□関連記事
【2月9日】パイオニア、テレビ撤退報道について声明
−「構造改革策を12日発表」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20090209/pioneer.htm
【2008年10月30日】パイオニア、業績不振を受けて須藤社長が退任
−第2四半期決算を発表。通期損失は780億円に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081030/pioneer.htm
【2008年3月7日】パイオニア、プラズマパネルの自社生産を終了へ
−今後は「松下から調達」。秋には液晶テレビ投入
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080307/pioneer.htm

(2009年2月12日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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