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薄型テレビやオーディオ機器など、オーディオ・ビジュアル関連の総合展示会「A&Vフェスタ2009」が21日、横浜みなとみらいのパシフィコ横浜・カンファレンスセンターで開幕した。会期は2月21日~23日までの3日間。入場料は無料だが、Webで事前登録、もしくは当日会場での登録が必要。 ここでは各社のスピーカー新モデルを中心にレポートする。
■ TAD TADのブースでは初日の21日、報道向けの発表会を開催。オリジナルの高音質CD「Advanced High Resolution Sound」シリーズが発表された。このディスクは、音楽CD用基板に、通常のポリカーボネートではなく、物理特性に優れた光学用ガラス素材を採用しているのが特徴。開発はメモリーテックで、「クリスタルディスク」と名付けられている。
クリスタルディスクを採用したCDは既報の通り、ビクターエンタテインメントが1枚18万円の「K2HD MASTERING+ CRYSTAL」を4月に発売を予定している。このディスクはビクタースタジオのマスタリング技術「K2HD MASTERING」とクリスタルディスクを組み合わせたものであり、今回の「Advanced High Resolution Sound」は、TADがクリスタルディスク技術を用いて作り出した高音質CD。透過性や複屈折、入射/反射光の歪が少なく、より高精密なピット転写を行うことで高音質化を実現したという。
一般販売は予定されておらず、TAD製品購入者への提供を予定しているデモディスク。A&Vフェスタのようなイベントや、目黒にあるパイオニアの試聴室「STUDIO HINOKI」でリクエストがあれば聴くことができるという。第1弾として作られたアルバム「Dynamik」はパーカッションデュオのクリス&祥子をメインに、ベース吉野弘志、アボリジニの民族楽器ディジュリドゥの奏者・アンディをゲストに迎えて録音された。
収録には従来のマイクとアナログヘッドアンプに加え、デジタルマイクとデジタルマイクアンプを使い、メインコンソールにSSL/SL4064G+を経て、Pro Tools/HD3で24bit/96kHzでマルチ収録。過度な圧縮/伸張は控え、フェーダーも極力操作せず、ミュージシャン達が演奏の音を小さくしてフェードアウトするなどして音の鮮度を守ったという。音のチェックにはReference Oneが使われており、「Reference Oneで最も良く聞こえるディスク」と言えそうだ。
発表会ではReference Oneを用いて再生されたが、パーカッションの音の張り出しが実に生々しく、定位も明瞭。実在感に溢れている。それでいてベースの緩やかな低音は部屋全体を覆うほど大きく広がり、中低域の描きわけが明確だ。全体としてストレスをまったく感じさせない伸びやかな音で、過度な輪郭強調が無く、ゆったりとした気持ちで聴ける。高品位なアナログレコードプレーヤーを彷彿とさせる音で、後で聞いたところ、コンプレッションやリミッターは一切かけていないという。
会場にはディスク以外にも、未発表の2製品が置かれていた。1つはスピーカーで、「TAD-CR1」。Reference Oneの下部を切り落としたようなデザインのブックシェルフで、Reference One最大の特徴でもあるミッドレンジとツイータを担う独自のCST(Coherent Source Transducer)同軸ユニットをそのまま使っているのが特徴。そのため、一見すると2ウェイ2スピーカーだが、構成は3ウェイとなる。CSTの口径は3.5cm径ドーム型ツイータと、16cm径コーン型ミッドレンジで、軽量かつ剛性の高いベリリウムを振動板に使っている。
ウーファはReference Oneの25cm径より小さい20cm径。かつてのフラッシップ「TAD-M1」に使われたものとまったく同じ。曲線を多用した筐体デザインや仕上げはReference Oneを踏襲しており、発売は秋頃を予定。価格は未定で、「塗装や組み立てなどはReference Oneとまったく同じで、量産効果が望めない」(TAD 宮川務社長)とのことでかなり高価なモデルとなりそうだが、「Reference One(1本315万円)よりは低価格にしたい」(同氏)という。まだ音決めの段階とのことだが、サイズからは想像できないほどキッチリと制動された低域表現はReference One譲り。ブックシェルフならではの定位の良さも合わさり、注目の国産ハイエンドブックシェルフの登場となりそうだ。 もう1台はモノラルパワーアンプ。外形寸法516×620×295cm(幅×奥行き×高さ)で、重さは80kg。フロントパネルのヘアライン仕上げが美しく、シンプルなデザインを採用。出力は600W(4Ω)。フルバランス構成を採用しているのが特徴。こちらも秋頃の発売を予定しており、価格は「1台200万円~300万円を切るくらい」(宮川社長)という。
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■ パイオニア パイオニアでは、60型プラズマ「KRP-600M」と、BDプレーヤー「BDP-LX91」、AVアンプ「SC-LX90」、スピーカー「S-3EX」などを使ったハイエンドホームシアター試聴室を用意。20日に発売されたばかりのBlu-ray Discビデオ版「AKIRA」の24bit/192kHzサラウンドなどが体験できる。ブースにもシアターシステムは用意され、各開発スタッフが投入された技術を紹介するセミナーも実施。現行AVアンプやイヤフォン、ヘッドフォン、ピュアオーディオシステムなどに触れることもできる。
また、創業70周年を記念して復刻された、10cm径フルレンジスピーカーユニットの名機「PE-101A」も紹介。それを組み込む様々なタイプのエンクロージャーも展示されており、自作スピーカーの魅力も味わうことができる。
■ クリプトン 2ウェイの密閉型ブックシェルフにこだわり「Vigore(ヴィゴーレ) KX-3」シリーズを展開しているクリプトンだが、そのVigoreシリーズ最上位モデルとして「KX-1000P」を参考出品した。3ウェイ4スピーカーのトールボーイ型になっているのが特徴だが、2ウェイブックシェルフで培ったノウハウをそのまま使い、その下部にツインドライブのスーパーウーファ部を追加するという設計思想で作られている。エンクロージャも密閉型。6月頃の発売を予定しており、ペアで100万円程度を想定している。 ツイータは新開発の砲弾型イコライザ付き、ピュアシルク35mm径のリングダイアフラムタイプを採用。ミッドウーファも新開発の170mm径。スーパーウーファも同じ170mm径ユニットを2基搭載している。振動板には同社の特徴でもあるクルトミューラーコーンを使用。また、全てのユニットのドライバーにトランジェントの良いアルニコマグネット壷型磁気回路を使っている。クロスオーバー周波数は135Hzと3.5kHz。システム全体の再生周波数帯域は35Hz~40kHz。インピーダンスは6Ω。外形寸法は280×243×1,005mm(幅×奥行き×高さ)。重量は35kg(オーディオボード込)。 さらに、計画されている高音質サウンド・データ配信サービスも紹介。レコーディング・プロデューサーとしてウイーンを中心に活動している井阪紘氏が設立した、カメラータ・トウキョウからクラシックを中心に音源の提供を受け、24bit/96kHz以上の高音質ソースをリニアPCMでユーザーに提供するというサービスで、ネットワーク経由での配信や、ファイルサイズが大きいため、FLACなどで可逆圧縮してDVDメディアに収録しての提供することも検討しているという。電子透かしのDRMを予定しており、リンのDSシリーズなどで、NAS経由での再生を想定している。
■ フォステクス 2月25日発売の小型ブックシェルフ「GX100」(1台49,875円)が注目を集めるフォステクスのブースでは、未発表のスピーカー2モデルが参考展示された。GX100と同じ、低価格なGXシリーズの新モデルで、トールボーイタイプの「GX103」と、バーチカルツインの「GX102」。いずれもGX100と同じ、アルミニウム合金の振動板をHR振動板形状に成形した10cm径ウーファを採用。価格は未定だが「GXシリーズとして購入しやすい値段になる」という。秋から年末にかけての製品化を予定している。
単品ユニットでは、純マグネシウムHR振動板を採用した「MG100HR」(6月発売予定/予価29,925円/予定本数400本)が注目だが、近日発売予定の特別モデルとして、バックロードホーン用に最適なパラメータ値で設計された「MG100HR-S」が展示された。価格は同額で、700本を予定。長岡鉄男氏設計のD-101S(スーパースワン)などでの使用を想定したユニットで、会場ではスーパースワンを用いたデモ再生も行なわれた。 ほかにも、「MG100HR」の組み込みを想定したエンクロージャ「YK100MG」や、純マグネシウム振動板のドームツイータ「T250A」、4月下旬発売の80cm径の超大型ウーファユニット「FW800HS」(34万1,250円)なども展示され、自作ファンの注目を集めていた。
■ ViV laboratory 独創的なデザインで注目を集めているのはViV laboratoryのフロア型「evanui(エヴァヌイ) signature」。ネットワークレス、エッジレス、ダンパーレスを実現したのが特徴。上部に搭載された8cm径フルレンジユニットは純マグネシウムで、表面を本漆で塗装して錆を防いでいる。純鉄と大型ネオジウムマグネットによる磁気回路は、ブラックアルマイト処理された20kg以上あるジュラルミンの無垢ヘッド部に固定。振動板はダンパーとエッジの無い新機構で、メカニカルに浮いた状態で駆動される。 エンクロージャは18mm厚のシナアピトン材を63枚積層し、カーブに合わせて中をくりぬいたバックロードホーン構造となっている。開口部は底部に用意。外形寸法は60×70×140cm(幅×奥行き×高さ)で、70kg。再生周波数帯域は50~30kHz。価格は1本210万円。
同社ブースでは、東京・町田にあるオーディオショップ「カンタービレ」が、WadiaのiPodトランスポート「Wadia 170 iTransport」を独自にカスタマイズした、「Wadia 170 iTransport-HST」をソースとして使用している。参考出品モデルで、発売日は未定。通常価格は62,790円だが、カスタマイズモデルは11万円。カスタマイズのみも55,000円で依頼でき、カスタマイズキットも52,500円で販売。しかし、スパイク足取り付けのため、底板に3カ所の穴あけ加工が必要。 具体的には2mm厚の特注CFRPべスボードで底板を強化し、制振。基盤サポートも2mm厚のCFRPスペーサーで振動を遮断。基盤内部やiPodコネクト部などにもスペーサーを投入するほか、インシュレータとしてステンレス製スパイクも追加する。電気回路には手を加えていないが「フニャフニャした音から格段にクオリティアップする」という。ViV laboratoryではこれと組み合わせる専用電源を開発しており、高品質なコンデンサなどを投入することで、再生音により磨きがかけられるという。
■ そのほか 高強度の特殊鋳鉄、ダグタイル鋳鉄一体型によるエンクロージャーが特徴のCASTRONは、デスクトップ用小型スピーカーの新製品「MP-01」(ペア15万7,500円)をデモ。2ウェイ2スピーカーのバスレフ型で、28mm径ソフトドームツイータと100mm径アルミニウムコーンウーファを採用している。外形寸法は126×158×250mm(幅×奥行き×高さ)。重量は5.5kg。 また、ハイエンドモデルとして開発中の「新型Mk1」プロトタイプも参考展示。現行の「Mk1」と同じダグタイル鋳鉄一体型のエンクロージャを使用しているが、よりグレードの高いユニットを搭載する予定。採用ユニットはまだ決定しておらず、エンクロージャの変更も含めて、検討している段階だという。 超弩級フロアスピーカー「HANIWA」を展開しているクボテックは、小型の新スピーカーラインナップを発表。同社スピーカーはチャンネルデバイダ込みで300~600万円程度(ペア)で、高さ1~1.3m程度の大型モデルが多かったが、高さ50cm程度の小型エンクロージャを採用しているのが特徴。チャンネルデバイダ込みの価格(ペア)は、7インチマグネシウムウーファと2インチコンプレッションドライバの「HSP2H 07」が220万5,000円、同ウーファで29mmドームツイータの「HSP2D 07」が189万円、ウーファが6インチでツイータが25mmの「HSP2D 06」が157万5,000円。
□A&Vフェスタ2009のホームページ
(2009年2月21日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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