「省エネは基本性能」。シンプル大画面AQUOSの進化点

-AQUOS初の40型も。消費者の声を地道に反映


4月10日より順次発売

標準価格:オープンプライス


AVシステム事業本部 液晶デジタルシステム 第1事業部 商品企画部 井出岡副参事

 シャープが4月10日より順次発売する「AQUOS Aシリーズ」。40型超の大画面サイズで業界ナンバー1の省エネ性能を実現したという液晶テレビだが、目を見張るような新機能があるわけではない。ごくごくシンプルな「普通の液晶テレビ」といえる製品だ。

 同社ではこのAQUOS Aを、省エネ性能を軸に積極的にアピールしていく方針だという。今、省エネが求められる理由、シャープがAQUOS Aシリーズに込めた狙いを、同社AVシステム事業本部 液晶デジタルシステム 第1事業部 商品企画部 副参事の井出岡完治氏に聞いた。


品名サイズパネル発売日店頭予想価格
LC-52AE652型1,920×1,080ドット
倍速フルHD液晶技術
5月15日39万円前後
LC-46AE646型29万円前後
LC-40AE640型4月10日20万円前後

 


■ 普通のテレビに求められる「省エネ性能」

 仕様を見ると、AQUOS Aシリーズ(AE6)はそれほど奇をてらったようなものではない。1,920×1,080ドットのフルHDパネル/倍速駆動対応や、HDMIリンク機能「AQUOSファミリンク」などは搭載してるものの、大画面ながら機能を絞ったベーシックモデルと位置づけられている。

 ある意味「普通」の製品。その製品で「省エネ性能」を前面に出して展開していくのには、CRTなどの買い替え層に向けてアピールできる製品だからという。

LC-52AE6LC-46AE6LC-40AE6

 薄型テレビのマーケットが成熟期にさしかかる一方で、2011年の地上デジタル完全移行というタイムリミットがある。シャープでは、2011年までのCRTや古い液晶テレビからの買い替え需要は3,000万台と予測している。

 そこで「初期の薄型テレビやブラウン管テレビからの買い替えに対応する製品」としてベーシックモデルを訴求。特に薄型化による奥行き自由度の向上や視聴距離の短縮などの特徴を生かし、買い替えにお勧めしやすいサイズとして、40型以上の大画面モデルをアピールしていく方針だ。

40~46型をCRT買い替えマーケットに訴求小さな部屋でも大画面を楽しめる点をアピールAQUOS AE6シリーズの位置づけ

 また、経済環境の悪化により、「ためになる商品。生活防衛型の製品が求められている」という。そこで「環境配慮」と「節約」という2点を満たす省エネ性能に市場の要求が高まっているとシャープは考え、AQUOS Aの価格的な買いやすさとランニングコストを訴えていく。

生活防衛製品として、環境配慮、省エネをアピールAQUOSに望む環境性能は「省エネ」
従来モデルとの比較

 そうした状況から、Aシリーズは省エネ性能にこだわり設計された。年間消費電力量は、52型で年間消費電力量175kWh/年(従来モデルEX5では248kWh/年)、46型で145kWh/年(同215kWh/年)、40型で120kWh/年(同194kWh/年)で、いずれも業界最高の省エネ化を実現している。

 とはいえ、それほど独創的な取り組みがなされたわけでもなく、52/46型については液晶パネルも従来と大きな変更が行なわれたわけでもない。具体的な取り組みとしては、バックライト本数を若干削減したほか、光学シートや電源回路の最適化など、さまざまな要素をすり合わせて相乗効果で、消費電力削減を達成した。

 省エネを追求するのであれば、2倍のリフレッシュレートで駆動する倍速駆動は、消費電力増要因になる。しかし、Aシリーズでは搭載している。「お客様の意見などを聞いても、40型以上ではフルHD/倍速は必須」と井出岡副参事は語る。

 


■ 40型をボリュームゾーンに。細かな改善も

LC-40AE6の背面側面にもHDMI端子を備えている

 省エネ性能以外に注目したいのは40型の「LC-40AE6」。シャープとして初めて40型というパネルサイズをラインナップしている点だ。従来のAQOUS、およびシャープの液晶パネルは、32/37/42/46型というサイズ展開になっていた。ここでに40型を新たに追加したのだ。

 井出岡副参事は、「お客様の要望が多かったため。32/37型をお買い求めいただいた方のアンケートなどでも『もう少し大きなサイズにすればよかった』という意見が多く、37と42型の間が必要と判断した。設置スペースやAVラックのサイズなどから考えても40型もボリュームゾーンに入る」とする。なお、AQUOSのラインナップとしては、37型も継続して展開し、シリーズの特徴や構成などを配慮してサイズを決定するという。


左右20度回転するスタンドを装備

 また、ユーザーの声の反映という点では、細かな変更も行なわれている。まず、スタンド部を左右20度回転可能としたこと。いままでAQUOSの大画面モデルではほとんど採用していなかったが、店舗や購入者からの意見が多く、AE6シリーズで導入された。

 さらに、従来設けられていた本体上面の排気口をなくし、背面排気としている。これもテレビ上部を触れた時の熱を不快と感じる、という意見などから改善したポイントとなる。このため冷却系の新設計を導入したが、上面排気を無くせた理由として、設計の変更とともに、システム全体の省エネ化も貢献しているという。

 仕様だけをみると「普通」なAQUOS Aシリーズ。しかしそこには、省エネというトレンドを織り込みつつ、着実かつ細かく進化が確認できる。


上部の排気口を無くし、触れた時の不快感を抑えたという46/52型用のリモコン40型用のリモコン

(2009年 4月 3日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]