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Astell&Kernの小さなハイレゾプレーヤー「AK70」。599ドルでバランス&USBオーディオ出力

 アユートは21日、iriver Astell&Kernのハイレゾプレーヤー新エントリーモデル「AK70」を発表した。詳細な発売日や価格は未定だが、海外では599ドルで発売予定。日本での発売は7月を予定している。カラーはミスティミント。

AK70

 さらに、beyerdynamicとAKがコラボしたイヤフォン「AK T8iE」の後継モデル「AK T8iE MkII」も発表している。こちらも詳しい価格や発売日は未定で、海外での価格は999ドル。日本発売は7月頃のイメージだという。イヤフォンは別記事でレポートする。

AKシリーズの新エントリーモデル

 「AK70」は、「AK Jr」(直販税込69,800円)の後継となるエントリーモデル。AK380など、AKの第3世代シリーズと似たデザインで、AndroidベースのOSを採用するなどUIなども同じ系統のものを採用している。同時に、サイズを大幅に小型化しているのが特徴。

 今後は、第3世代のAK380/320/300と、「AKのサウンドを身近に楽しんで欲しい」というAK70のラインナップがメインとなっていく。

左がAK Jr、右がAK70
左からAK380、AK300、AK70

 外形寸法は96.8×60.3×13mm(幅×奥行き×高さ)、重量は132g。AK300の112.4×75.15×15.45mm(同)/約205gや、AK380の112.4×79.8×17.9mm(同)/約230gと比べ、コンパクトかつ軽量になっている。

右がAK240
左からAK70、AK100II、AK120II

 DACはシーラス・ロジックの「CS4398」で、第2世代のAK240/120II/100IIと同じ。このDACをシングルで搭載している。内蔵メモリは64GB、microSDカードスロットも備えており、最大128GBまでのカードも利用できる。

 出力面では、低価格モデルながら、AK Jrには無かった2.5mm 4極のバランス出力を搭載。ステレオミニの出力も搭載する。光デジタル出力は搭載していない。アウトプットレベルは、アンバランスが2.3Vrms、バランスが2.3Vrms(負荷なし)。SN比はバランス/アンバランスどちらも116dB。

AK Jrには無かった2.5mm 4極のバランス出力を搭載

 再生対応ファイルは、192kHz/24bitまでのネイティブ再生が可能で、それを超える384kHz/32bitまでの再生も可能だが、ダウンコンバート再生となる。DSDはネイティブ再生非対応だが、5.6MHzまでのファイルを、PCM 176.4kHz/24bitへ変換しながら再生できる。ファイル形式は、WAV/FLAC/MP3/WMA/OGG/APE/AAC/Apple Lossless/AIFF/DFF/DSFをサポート。ギャップレス再生にも対応する。

 ユニークな機能として、底面のUSB端子からUSBオーディオデジタル出力が可能。AK70をスマートフォンのように扱い、外部のDAC搭載アンプなどにデジタル出力し、そのアンプから音を聴くといった使い方ができる。

USBオーディオデジタル出力が可能

 その際、PCMは384kHz/32bit、DSDはDoPで5.6MHzまでの伝送をサポートする。PCとUSB接続して、USB DACとして動作する事も可能。その場合は96kHz/24bitまでに対応する。なお、AKの第2、第3世代機にも今後のファームウェアアップデートにより、USBオーディオデジタル出力を搭載していく予定。

背面
側面に操作ボタンとmicroSDカードスロット
AK380(左)との厚さ比較

 その他の上位モデルから省かれている機能として、パラメトリックイコライザが無く、デジタルイコライザとなる。また、第3世代シリーズのフェムトクロックも非搭載。ジャケット型アンプの「AK AMP」、マイクの「AK Recorder」との接続も非対応だが、CDドライブの「AK CD-Ripper」との接続はサポートしている。

 Bluetooth送信機能も備え、プロファイルはA2DP/AVRCPに対応。コーデックはSBC/aptXをサポートする。IEEE 802.11b/g/nの無線LAN機能も備え、DLNAを使い、NASなどに保存した音楽を再生したり、スマホからの制御を受け入れる「AK Connect」機能が利用可能。

 バッテリは、内蔵のリチウムポリマーバッテリで、容量は2,200mAh/3.7V。ディスプレイは3.3型の液晶で、解像度は480×800ドット。静電容量式のタッチパネル仕様。

 筐体の素材はアルミで、パステルカラーのミスティミントを採用。アルマイト処理も施されている。上位モデルで同梱されている、専用のケースは付属しない。

第2、3世代に未搭載の機能も

 第2、3世代にまだ搭載されていない機能としてUSBオーディオデジタル出力を備えているのは前述の通りだが、それに加え、トップメニューの「アートワーク拡大表示機能」も先行で搭載している

 これは、ディスプレイの上部に表示されるアルバムのジャケット画像のサイズが、下部に表示される操作ボタンが増えるにつれ小さくなっている事に対応するためのもの。トップメニューでボタン群を引き下げるようにスライドすると、ボタンが幾つか格納され、上部のジャケット画像表示サイズが大きくなる。

 今後、第2、3世代向けにもファームウェアアップデートにより、同様の機能が提供される予定。

ボタンが増えるとアルバムジャケットが小さくなってしまうので、ボタンを下部に格納する機能を追加

AKのサウンドをもっと身近に

 AK70の開発コンセプトは「MUSIC FRIEND IN MY POCKET」。AKのサウンドをもっと身近に体験して欲しいという、AK Jrと同様の立ち位置のモデルとして開発された。価格はエントリークラスながら、操作性やバランス出力など、AKブランドのスペックは踏襲しているモデルとして展開する。

 アユート 営業部 マーケティンググループの藤川真人氏によれば、AK70の音作りについて「第2世代の開発などで、iriverは既にDAC CS4398に関するノウハウを持っている。その技術を余すところなく投入した。バランス出力など、上位機の要素もサポート。さらに、USBからデジタルで出力し、例えばChord MojoのようなDAC内蔵ヘッドフォンアンプと連携できるプレーヤーになっている」と魅力を語った。

Chord Mojoと連携しているところ

音を聴いてみる

 発表会場で短時間ではあるが、サウンドをチェックした。

 “第2世代と同じDACをシングルで搭載した低価格モデル”という面では、AK100IIのサウンドに近いのかなと想像しながら試聴を開始した。しかし、出てくる音は、大幅にグレードアップしている。

 特に顕著なのが中低域の馬力や音圧だ。AK100IIにあった、低域の弱さはまったく感じられず、ドライブ能力の高さはむしろAK300など、第3世代モデルを彷彿とさせるものがある。そのため、低価格モデルながら、まったく音は安っぽくなく、むしろ堂々とした上位機種の風格を感じさせる。

 メリハリのあるサウンドで、音の輪郭がとてもクリアだ。色付けは殆ど無くニュートラル。パワフルなだけのやんちゃなサウンドではなく、中低域がしっかりしているので安定感がある。従来モデルのAK Jrと比較すると、低域の分解能やスケール感が進化しているのも感じる。

 気になるのは、旭化成の「AK4490」を搭載した第3世代シリーズとの違いだが、音場の奥行きや、横方向の広がり、高域の質感などは、やはり第3世代の方が一枚上手だ。だが、価格を比較するとAK70は非常に健闘していると感じる。コストパフォーマンスに優れながら、バランス出力やUSBオーディオ出力など、AKらしい豊富な機能も内包した注目のプレーヤーだ。