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「スーパームーンのように光り輝くシャープに」。戴社長がメッセージ。社長特別賞与も

 シャープの戴正呉社長が、2016年11月22日、社内のイントラネットで、社員に向けてメッセージを配信した。戴社長は、鴻海精密工業によるシャープへの出資が完了した翌日となる8月13日に社長に就任。それ以降、8月22日、9月21日、11月1日に社員にメッセージを配信。今回が4回目のメッセージ配信となった。

シャープ 戴正呉社長

 「有言実行から“有言実現”へ。総力を挙げて目標を成し遂げよう」と題したメッセージでは、8月21日の経営基本方針発表から3カ月間の総括と、当面取り組まなければならない3つの重点事項について言及。そのなかで、自らが事業本部を訪れて改革の進捗を確認することや、粘り強い交渉によって、11%のコストダウンを実現した例などを示しながら、戴社長流の改革を今後も加速することを強調。社員に対して、社長特別賞与の支給と、シャープ製品を特別価格での提供することについても触れた。

 戴社長は、「今後、私たちがなすべきことは、何よりも、今回公表したステークホルダーとの約束を有言実行すること」とし、「私たちの約束、目標を実現する“有言実現”に徹底してこだわる。下期は、何としても当期純利益の黒字化を“有言実現”して、ステークホルダーの信頼を回復する」と語った。

 また、11月12日、13日の2日間、初めての試みとして「構造改革進捗・収益確認会」を開催したことに触れ、ここで、取り組むべき3つの重点課題について説明したことを明らかにした。

 同会議は、土日の開催となったが、海外を含めた37カ所の拠点をテレビ会議でつなぎ、部長クラス以上の責任者が約750人参加。事業本部、管理統轄本部、社長室の責任者から、3カ月間の構造改革の成果と下期の収益見通しについて報告が行なわれたという。

 戴社長は、「事業本部主導の構造改革への転換」、「調達コストダウン」、「売上拡大への取り組み強化」の3点を重点課題にあげたという。

 事業本部主導の構造改革への転換では、「変化に俊敏に対応していくためにも、事業本部主導での構造改革が重要。私は、これからは、毎月、事業本部を訪問し、構造改革への取り組みを確認する」と、戴社長流の手法によって、現場の改革を促進する考えを改めて強調した。

 調達コストダウンでは、「長らく経営危機が続いたシャープは、不平等な条件での契約や、割高な価格条件や支払条件などが残っている。しかし、いまは過去のシャープとは違い、交渉力がある強いシャープである」とし、「ある事業本部長からは、これまでコストダウンに応じたことがない取引先であり、コストダウンは不可能との報告を受けた案件があったが、私は一切認めなかった。その後、事業本部で粘り強く交渉した結果、11%にもおよぶ過去には考えられないコストダウンを勝ち取ることができた。今後は、調達交渉に限らず、すべての交渉において、マインドを切り替え、粘り強い姿勢で交渉に臨むよう心掛けてほしい」とした。

 売上拡大への取り組み強化については、「下期黒字化と、17年度以降のV字回復のためには、構造改革効果による利益改善だけでなく、売上拡大による利益創出を急ぐ必要があり、そのためには、販売手法も構造改革する必要がある」とし、「顧客とのメンバーシップを作り、継続的に、特長ある商品やサービスを提供する。こうした取り組みの最終形として、シャープならではのスマートホームを提案したい」と述べた。

 信賞必罰を掲げる戴社長は、それを実行するように、今回のメッセージのなかで、「3カ月間のがんばりに、2つの施策で感謝を示す」とし、社長特別賞与の支給と、シャープ製品の特別価格での提供を発表した。

 社長特別賞与の支給では、緊急対策として実行している平均1カ月の冬季賞与は維持するものの、これとは別枠で、若手マネージャーを中心に、成果を出した社員に対して、社長特別賞与を上乗せして支給するという。

 また、特別価格での販売は、1月28日までの期間限定で、従業員本人や社友会会員、OBを対象に、購入者個人での使用を条件に実施するものになる。

 「これは過去に実施した従業員向け販売とは異なり、販売目標は一切ない。価格は、相当お得な水準で設定する。純粋に感謝の証であり、ぜひ、自分自身へのご褒美や、家族へのプレゼントなど、 日頃の労をねぎらってもらいたい」とした。

 特別価格の販売は、メンバーシップ作りにもつながるとしている。

 また、今回のメッセージのなかでは、新たなスローガンである「Be Original.」が、シャープの社友会会長から、「いいメッセージである。創業の精神を取り戻し、再生を果たしてほしい」との期待の声があがったことや、創業者である早川徳次氏の実娘と自宅で面談し、創業者の考えや思い出などの話を聞く機会を得るなかで、新たなメッセージに対する評価の言葉をもらったことや、「以和為貴(和を以て貴しと為す)」と書かれた額を、激励の言葉ともにもらったことを紹介。「これには、“One SHARP”となって再生を果たしてほしいというメッセージが込められていると思う」などと記した。

 メッセージの最後に戴社長は、創業者の実娘と夕食をした11月13日は、翌日に、68年ぶりに月が地球に最接近するスーパームーンであったことに触れながら、「私は、その月を見上げながら、シャープは、この月と同じように、あと一歩でスーパームーンのように大きく光り輝くと感じた。簡単な一歩ではないが、社員と一緒になり、何としても歩んでみせると決意を新たにした。来年春には、全員で大きな満月を見よう」と締めくくり、下期黒字化達成に改めて強い意志をみせた。