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Google Play Musicの機械学習採用で起きる変化。オフライン時の強化も

 Googleは、11月14日に刷新した音楽サービスの「Google Play Music」に関する説明会を行ない、機械学習を用いた音楽のレコメンデーションの詳細や、他社サービスとの違いなどについて、Google Play Music リードプロダクトマネージャーのElias Roman氏が解説した。

Google Play Music リードプロダクトマネージャーのElias Roman氏が、ビデオ会議で説明

 Google Play Musicは、月額980円(税込)の定額制音楽配信サービスで、現在は全世界の4,000万曲を聴くことが可能。AndroidやiOS、パソコンなどから利用できるほか、気分や状況にあわせてラジオのように聴ける機能や、オフライン再生機能が利用可能。

 11月にアップデートされたGoogle Play Musicは、機械学習により、ユーザーに合わせた音楽やプレイリストをレコメンドするのが特徴。その中でも、Elias Roman氏が他の配信サービスにおける機械学習との違いとして強調するのは、単にユーザーの好みを学ぶだけでなく、その人が今いる場所や、状況、天気、行動といった情報に合わせてプレイリストを紹介するという点。「その人の文脈(状況/背景など)に合わせて適用するということが重要という、問題認識の部分が(Spotifyなど)他サービスと違う」としている。

新しいGoogle Play Musicの画面例

 新機能の利用には、ユーザーによるオプトイン(位置情報提供などの同意)が必要。これにより、自宅や仕事中、通勤、フライト、観光、街に繰り出すときなど、ユーザーのいる場所や状況に応じて、Google Play Musicが最適な音楽を選ぶようになる。なお、年齢などの個人情報については利用しないという。

Elias Roman氏の例。空港で出張する前に、落ち着ける曲がセレクト
夕焼けを見ている一時に聴いた曲
ジムでのワークアウトに聴くロックなど、様々な状況に対応

 ホーム画面もユーザーに最適化したデザインとなり「あまりスクロールする必要なく、トップに最善の曲が表示される」(Roman氏)。機械学習技術を活用したおすすめの曲と、Google社内にいる“エキスパート”が人力でキュレーションしたプレイリストの両方を活用し、使えば使うほど好みを学び、それらを反映した音楽体験を提供するという。新機能を使い始めた当初は学習されたデータが少ないため、似た好みを持つ他の人を探し、その人と同様のレコメンドを行なう。学習が進むにつれて、他の人とは違う、ユーザー本人だけのおすすめの割合が増えていくという。なお、新機能を使うためにオプトインした後でも、ユーザーはいつでもオプトアウト(情報提供の停止)ができる。

ホーム画面

 このほか、飛行機などでインターネットに接続できない状況でも、オフラインのプレイリストで聴いていた音楽を再生可能。当初から、お気に入りの曲を手動でダウンロードする機能は備えているが、新たにユーザーの好みや履歴から、一定数の曲をあらかじめダウンロードしておくことも可能になった。これにより、手動でのダウンロードを忘れていても、いつでも聴けるという。

 自動ダウンロードする容量/曲数の上限などは公開していないが、一定数に達すると、新たな好みを反映して楽曲の入れ替えを行なう。また、ダウンロードされた楽曲の容量はユーザーが確認可能。ダウンロード楽曲をクリアすることで、新たな好みに応じたライブラリにしていくこともできる。

ダウンロード済みの楽曲

日本の曲は300~400万曲、サブスクリプション配信の増加にも注力

 音楽プレイリストサービスのSongza立ち上げメンバーであり、同社がGoogleが買収された'14年にGoogleへ入ったRoman氏は、音楽のレコメンドについて「好みを知るだけでは不十分。眠りにつく時、エクササイズする時など、シーンによって聴く音楽は違う。どんな瞬間に、どんな曲を聞かせるかが重要」と指摘。

 今回の機能強化のコンセプトや、目指す形については、「Google Play Musicの4,000万曲以上のなかから、ラジオを聴くように簡単にタップして聴けて、ラジオよりもパーソナライズされた、適切な曲を見つけてくれる。未来の音楽は、人が曲を探すのではなく、曲の方が皆さんにたどり着く、探してくれることだと思う」と述べた。

Browse stationでは、ネットラジオを聴くように、ジャンルや今のアクティビティから選んで聴ける
歌詞の一部などから、目的の曲を検索することも可能

 新機能は、Android、iOS、デスクトップなどで、日本を含む62カ国で提供を開始。その中でも日本の特徴として、前述したGoogleのエキスパートがセレクトしたプレイリストがトップ3に入っているという。プレイリストを利用して再生する時間は、グローバルでは10%伸びているのも最近の傾向として紹介した。

 サブスクリプションで配信されている約4,000万曲のうち、“日本の楽曲”と位置づけられるのは「300~400万曲」(グーグル日本法人の鬼頭武也ミュージックパートナーシップマネージャー)としている。国内の課題として、まだサブスクリプション配信を許諾していないアーティストが多いことを挙げ、“独占配信の楽曲で差別化する”ことよりも、“サブスクリプションで聴ける(アーティストに許諾される)曲を増やす”ことを重視した結果として、福山雅治や、ゆずといった、他社のサブスクリプションでは聴けない曲がGoogle Play Musicで配信可能になったという。

 Roman氏は、Google Play Music全体の今後の方向性としては、「エキスパートが作るライブラリの拡充」と、「パーソナライズのための、より良い機械学習」を挙げる。具体的には、通勤時などオフラインで聴く際にも、どんな曲を聴きたいかを予測しておいて、その時に合った曲をすぐに再生できるといった体験を目指すという。