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スカイロボット、世界初赤外線カメラ搭載スカウター。赤外線撮影対応の小型ドローンも開発中

 産業用ドローンの開発・販売を行なうスカイロボットは、FLIR Systemsが開発した世界最軽量クラス・赤外線サーモグラフィカメラ「Boson」を搭載したゴーグル型IoTディスプレイ「Boson/スカイスカウターIR」を開発。8月上旬に395,000円で発売する。スカイロボットは、Bosonを搭載した小型ドローンの開発にも着手しているという。

Boson/スカイスカウターIR

 スカイロボットは現在、ソーラーパネルの洗浄を行なうロボット「SOLRIDER」や、赤外線カメラなどを取り付けたドローンで空から不具合のあるソーラーパネルを見つけ、そこにペイント弾を撃って修理の作業員の目印にできる「SKYSCAN PRO」、こうした映像をクラウド上で解析する「SKYANALYZER」といったサービスを主に展開。

左がソーラーパネルの洗浄を行なうロボット「SOLRIDER」
空から不具合のあるソーラーパネルを見つけるドローン「SKYSCAN PRO」
6つのノズルが見えるが、ここからペイント弾を発射する。中央のカメラが赤外線カメラ

 培ったドローンのエンジニアリング技術や飛行技術を活用し、橋などのインフラ点検、野生動物の調査、施設警備などのセキュリティ分野にもドローンの活躍の場を広げている。また、日本全国でこうした事業を展開するために、パートナーを募り、各地へのドローンの整備、操縦者の育成を目的としたドローンスクール(DS・J/Drone School Japan)も開校。7月時点で16拠点、17年内に50拠点を目標に拡大している。

 こうしたビジネスの中で、これまでFLIRの「Vue」などの小型赤外線サーモグラフィカメラをドローン開発で採用。Vueシリーズについては、スカイロボットがアジアでの総販売代理店として1年前から販売も担当している。そして、FLIRから新たに登場した、Vueシリーズの10分の1のサイズ、そして8.5gという大幅な小型・軽量化を果たした「Boson」のアジアでの販売についても、スカイロボットが総販売代理店契約を締結した。

従来のVueシリーズ
さらに小型になったBoson

 このBosonは、1円玉ほどの超小型赤外線カメラモジュールだが、1秒間に60回近くの画像撮影が可能で、-40度~+80度までの幅広い環境にも対応可能。消防やプラントの警備といった厳しい環境でも活用できるとする。12コアの映像処理SoCも内蔵し、開発自由度も高いのが特徴。

右が赤外線カメラの映像。可視カメラでは高感度であっても人影は判別できないが、赤外線カメラではクッキリとわかる
コンクリート点検の画面。コンクリートが劣化などすると、内部に空間ができ、そこに空気が入るため、赤外線映像からその部分が判別できるという

 カメラモジュールの販売だけでなく、スカイロボットはBosonを使った製品開発も開始しており、その第1弾が「Boson/スカイスカウターIR」となる。頭部に装着するディスプレイで、左眼向けに720pの映像を表示する単眼ディスプレイ(非透過型/透過型両対応)を装備。ディスプレイの反対側にBosonを備え、利用者の目線で赤外線映像を撮影。それを常時左眼の単眼ディスプレイで確認できる。インターフェイスはHDMIで、腰などに装着する小型のコントロールボックスにバッテリを内蔵し、約4時間の駆動が可能。Windows 10 Home 32bitをインストールしたスティックPC「DG-STK3」もセットになっており、指先につけて操作するクリッカー「400-MA077」も同梱する。

Boson/スカイスカウターIRに装備されたBoson部分
単眼ディスプレイ部分
右下の黒いユニットがスティックPC「DG-STK3」、奥の白いユニットがコントロールボックス。テレビに映像を出力するためにケーブルが多くなっているが、実際はもっとシンプルな結線となる

 スカイロボットの貝應大介社長は、「以前の赤外線カメラは大型でビデオカメラくらいのサイズがあり、高価で、使い勝手も悪く、ドローンに搭載するのも難しかった。それがFLIRのVueで十分小型になったが、さらに高性能で小型なモデルとしてBosonが登場した」と説明。

スカイロボットの貝應大介社長

 さらに、「スカイロボットにはドローンのイメージがあるが、ロボットによる人間のサポートを我々はミッションとしており、ドローンではないものも、ニーズがあれば積極的に取り組んでいきたい」とし、「Boson/スカイスカウターIR」を紹介。

 「スカウターは視線の移動を抑えながら、飛行するドローンと映像を確認できるので、ドローンと親和性の高いものとしてこれまでも販売してきた。今回の製品は世界初の赤外線スカウターでもある。頭部で285gと軽量で、手を塞がずに赤外線映像を確認できる。火災現場で消火の確認、災害時の人命救助、人や動物の捜索・監視にも利用できる。警備では、人や動物の侵入を防いだり、普段熱を発していない設備を点検するといった使い方も可能。軽量であるためヘルメットに長時間装着しても苦にならない。警備分野では革命が起こるのではないかと考えている」という。

Boson/スカイスカウターIRで実際に赤外線で撮影した映像

 今後は企業だけでなく、警察や自治体などにも提案していく予定で、「初年度は国内向けにBoson/スカイスカウターIRを1,000台くらい作って売っていきたいと考えている」という。

装着イメージ

 また、Bosonは小型のドローンにも搭載できる事から、「水面下ではBoson搭載ドローンの開発は進めている。これまではどうしても赤外線カメラを搭載すると機体が大きめになっていたが、小さなドローンであれば、例えば土管の中などに入り、可視カメラと赤外線カメラで撮影して確認する、といった活躍も可能になるだろう」と、展望を語った。

 さらに、FLIR Systemsから、OEM事業部アジアパシフィック・ディレクターのグレッグ・ナグラー氏も来日。「日本はイメージング技術や、それを用いたビジネスエリアが積極的に広がっている国であり、そのドローン業界で活躍しているスカイロボットとの提携は非常に嬉しい事」とコメント。

 また、「かつてはGPSテクノロジーは高価だったが、赤外線カメラの技術も、GPSのように今後は廉価になっていく。さらに、技術として既に確立しているCMOSセンサーに、サーマルセンサーの技術が投入される事で、いろいろなセンサーのコラボ製品が誕生するだろう。これにより、新しいジャンルのビジネスが展開すると考えている」と、今後に期待を寄せた。

中央がFLIR SystemsのOEM事業部アジアパシフィック・ディレクターのグレッグ・ナグラー氏