レビュー

DJI最小ドローンSparkを屋内飛行場で飛ばしてみた。快適“空撮自撮り”、注意点も

 DJIの新ドローン「Spark」の第1弾出荷が6月15日からスタートした。DJI最小のドローンであり、価格も本体のみで65,800円(税込)と、同社ドローンの中では比較的安価。これを機に“ドローンデビュー”をしてみようと考えている人もいるだろう。そこで、都心から近く、ドローンの技能が磨ける「ドローンスクールジャパン 東京潮見校」の屋内飛行場で実際にSparkを飛ばしてみた。そこでわかった操作感や注意事項をまとめた。

DJI Spark

Sparkの特徴と、飛行の操作感

 Sparkは 外形寸法143×143×55mm(縦×横×厚さ)、飛行時の重量は300gと、小型・軽量なドローン。これまでDJIのドローンで一番小さかった「Mavic Pro」のように折りたたみ機構は備えていないが、飛行スタイルで比べるとMavic Proより一回り以上小さい。重量の300gも、Mavic Proの734g(バッテリやプロペラ含む/ジンバルカバー含まない)の半分以下となる軽さだ。実際に持ち比べると、Sparkは驚くほど軽い。

左がMavic Pro、右がSpark

 カメラのジンバルは2軸。Mavic Proの3軸と比べるとスペックダウンしているが、映像のブレやローリングシャッター現象を大幅に軽減するという「UltraSmooth」機能で補っている。1/2.3型のCMOSセンサーを搭載し、有効1,200万画素。焦点距離は35mm版換算で25mm。撮影してみると、2軸とは思えないほど安定した動画が撮影できる。

DJI Spark -カメラ映像

 1080/30pまでの撮影が可能。(Mavic Proは4K対応)。最大ビデオビットレートは24Mbpsで、フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264のMP4。JPEG静止画撮影も可能だ。記録メディアはmicroSD。

 空撮ドローンとして可搬性、収納性に優れているほか、より手軽に飛ばせるのも特徴だ。スマートフォンとWi-Fiで接続してアプリから操作したり、別売の送信機+スマホから操作するといった、Mavic Proと同様の飛ばし方ができるだけでなく、スマホや送信機をまったく使わず、ジェスチャーだけで飛行させる事もできる。

DJI Spark

 背面の電源ボタンを2回押すと、カメラがユーザーの顔を認識。プロペラが回転し、手のひらからの離陸できる。Sparkに手をかざして、右へと手を動かすとSparkも右に、左に動かすと左に、近寄ると遠ざかる……と、直感的に制御できる。

 さらに、Sparkに向かって手を振ると、3mほど後方上空に飛び去ってホバリング。写真のフレームを作るようなジェスチャーをすると、ユーザーを“自撮り”してくれる。バンザイのポーズをとると、ユーザーの前まで帰還。胴体の真下に手を入れると、手の上に着陸する。こうした簡単な自撮り用途であれば、スマホや送信機を使わずに撮影できる気軽さもウリだ。

Sparkなど、DJIのドローン飛行動画

 実際に体験してみると、手のひらでの発着は便利だ。Mavicの場合は、地面から離陸する場合、平らな場所、プロペラに石や草がからまない場所などを探す手間がかかるが、Sparkは思い立ったらすぐに飛ばせ、サッと撮影して、着陸して仕舞うという一連の動作が短時間でできる。ジェスチャーに従ってくれるSparkは、ドローンというより、ペットのようにも感じられる。

 スマホのアプリ「DJI GO 4」を使うと、より細かな操作が可能。タップひとつで自動的に飛行し、多彩な空撮ができる「QuickShot」機能を備え、カメラを下向きに、機体は真上に上昇しながら撮影する「ロケット」、カメラで被写体を捉えたまま、機体が斜め上に上昇する「Dronie」、被写体を中心に、周囲を旋回しながら撮影する「サークル」、被写体を中心に、周囲を旋回しながら上昇して撮影する「Helix(螺旋)」を用意。

 Mavicと同様に、指定した被写体を自動で追尾する「ActiveTrack」も利用でき、被写体の周囲を回りながら追尾撮影する「トレース」、被写体と並走しながら撮影する「プロフィール」といった機能も用意している。

DJI - Introducing Spark

 豊富な空撮だけでなく、基本的な飛行性能も高い。ホバリングは安定しており、小型だから機敏過ぎて難しいといった印象も受けない。Mavicなどと同様の感覚で飛ばす事が可能だ。

 一方、小型化によってスペックダウンしている部分もある。例えば、Sparkの飛行時間は無風状態で16分、ホバリングでは15分(Mavic Proは飛行時間約27分)。スポーツモード時の最高速度も時速50kmと、Mavicの64.8kmには届かない。

 実際に飛ばしてみても、向かい風の中で進む時のパワフルさや、スピードなどにMavicとSparkの違いを感じる。Sparkでも操縦を「スポーツモード」に設定すると、機敏かつ高速な飛行が可能にはなるが、操縦の難易度も高くなるため、利用には注意が必要。空撮用というよりも、レースなどに向いた機能と言えるだろう。

Mavic Pro

 また、先日山奥で飛行させた際の印象だが、飛行中にドローンから送信機+スマホへ送られてくる映像が途切れがちになるまでの距離も、MavicよりSparkの方が短く感じられた。

 “4Kカメラを使い、遠くまで飛行して本格的な空撮を可能にするMavic”に対して、“そこまで遠くまで行かず、空からの手軽に自撮りを実現するSpark”という棲み分けがされているようだ。

 だが、Sparkの小型・軽量さと使い勝手の良さは、欠点をカバーして余りある魅力だ。例えば、Mavicのバッテリ充電には専用のACアダプタが必要だったが、SparkはUSBからの充電にも新たに対応している。泊りがけの旅行にドローンを持っていく際、MavicはACアダプタも持っていかねばならないが、Sparkであればスマホ用の充電装備が兼用できるといった利点もある。

 細かな点だが、送信機の利用スタイルもMavicとSparkでは違う。Mavicでは送信機とスマホをUSBで有線接続するが、Sparkは送信機とスマホを無線LANで接続する。Mavicは有線接続のついでに、送信機からスマホに給電してくれるが、Sparkの送信機ではそれができないといった違いもある。なお、MavicとSparkで送信機に互換性は無い。

Sparkの送信機

飛ばす時の注意、改正航空法のおさらい

 軽くて小さく、空撮能力も高いSpark。気軽に飛ばせるのは嬉しい事だが、当然ながらルールやマナーを守って楽しむ必要がある。また、軽いといっても200g以上あるため、2015年12月から施行されている改正航空法の対象となる。そこで、改めてこの改正航空法をおさらいしておこう。

 ドローンなどの無人航空機の飛行が禁止されているのは、具体的には空港周辺など、航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域、人又は家屋の密集している地域の上空。さらに、地上から150m以上の高さでの飛行も禁止。ただし、あらかじめ申請を行ない、国土交通大臣の許可を得た場合は飛行可能となる。

飛行可能な空域(出典:国土交通省)

 DJIのドローンはGPSを活用しているが、荻野裕一マーケティングスペシャリストによれば「DJIの機体の場合、テロの道具などに使われる事のないよう、空港などの周辺ではそもそも離陸もできないようになっている」という。どこが人口密集地帯にあたるのかを確認できるフライトマップは、DJIのページで公開されている。

DJIのフライトマップページ。赤い部分が人口密集地帯などの飛行禁止エリア

 まとめると、空港周辺や人口密集地以外であり、地上から150m以上の高さにならない空域が飛行可能なわけだが、その空域であればどこでも飛ばして良いというわけではない。第三者や建物、自動車などから30m以上の距離を保って飛行する事、お祭りなどのイベントの上空飛行、危険物の輸送やドローンからモノを落とすといった飛行も承認が必要だ。

 さらに、肉眼で見えない距離まで飛ばす“目視外飛行”、機体が見えなくなる夜間の飛行にも承認が必要となる。国交省への申請は、飛行予定日の少なくとも10日前(土日祝日を除く)までに郵送で提出する必要がある。条件によって申請先は異なり、詳細は国交省のページを参照のこと。

DJIの荻野裕一マーケティングスペシャリスト

 荻野氏は国交省申請について、「万が一落下した時に、“誰が飛ばしていたのか”がすぐにわかるよう紐付けをするためのもの。何処で、何時、誰が飛ばしたのか、どのような安全対策をしていたのかといった事を届け出る必要がある」という。

 保険もある。DJIでは製品購入者を対象に、賠償責任保険(最大対人1億円/対物5,000万円まで)が1年間無償で付帯。これとは別に、機体保険や賠償責任保険なども用意されている。

 さらに「DJI CAMP」として、ドローンを正しく、より安全に使用できる操縦者を認定する民間認定プログラムも実施。100時間以上の飛行操縦経験を持つDJIマスターを筆頭に、DJIインストラクター、DJIスペシャリストの資格が取得できる。

 荻野氏は飛行時の心構えとして、「機種によっては時速100kmで飛ぶものもある。安全に飛行するための機能は備えているが、落下した時に操縦者が最大の責任者となる。感覚としては、自動車と同じように、慎重に扱って欲しい」と語る。

墜落しないために気をつけたいこと

 筆者はMavicとSparkを所有し、高機能さを実感しているが、実際に飛ばしてみると、気をつけたい部分も見えてくる。それは障害物を認識し、回避する機能についてだ。

 MavicとSparkはどちらもこの機能を搭載。Mavicは、前方と下方に付いているデュアル・ビジョン・センサーで機体と障害物間の距離を計測し、4台のカメラで写真を撮影、それらの情報から3Dマップを作成し、回避すべき障害物を認識。明るい場所であれば進行方向15m先まで認識できる。

 Sparkも前方に3次元認識システムを搭載。メインのカメラ、ビジョンポジショニング・システム(VPS)、デュアルバンドGPS、高精度慣性測定ユニット、プロセッサなども活用し、最大30mの範囲で正確にホバリングし、最大5m先の障害物を認識して衝突を防止する。

カメラの上部に3次元認識システムを搭載しているSpark
スマホの画面に、Sparkのカメラがとらえた映像が写っているが、中央に「1.5M」という文字と、赤い警告マークが表示されている。これは1.5m先に障害物(椅子)を認識しているという意味だ

 このおかげで、例えば壁に向かって勢い良く飛び過ぎた時も、自動で停止してくれる。気をつけなければならないのは、このシステムが“前方用”である事だ。

 例えばSparkの場合、前述のようにジェスチャー操作で手を振ると、3mほど後方上空に飛び去って、空撮待機モードになる。しかし、室内で不用意にこのジェスチャーをしてしまうと、後方の壁や、天井などにぶつかってしまう。後方にはセンサーが搭載されていないためだ。

 Mavicで、ランニングしている人を被写体とし、並走して撮影するといった場合も、機体の横方向にセンサーは搭載されていないので、並木などに突っ込んでしまう可能性がある。

 山頂に立った自分を中心に、ドローンを旋回させながら撮影しようという場合も、ドローンが横方向に、スライドしながら飛行した際、その先に障害物が無いかどうか確認してから飛ばす必要があるだろう。

 例えば上位機種「Phantom 4 Pro」には、ステレオビジョンセンサーを機体の前方と後方に、赤外線センサーを機体の左右に搭載している。こういった“弱いポイント”を把握した上で飛ばす事も重要だ。

上位機種「Phantom 4 Pro」

都心に近いドローンスクール

 今回フライトさせてもらった場所は、東京駅から京葉線で3駅、潮見駅から徒歩1分という、都心に近い立地の「ドローンスクールジャパン 東京潮見校」。国交省登録管理団体DPA認定ドローン学校だ。

潮見駅から横断歩道を渡り、細い小路を進むと「ドローンスクールジャパン 東京潮見校」に到着

 最大の特徴は、世界最大級という屋内操縦所があるところ。取材日は大雨だったが、屋根があるため、濡れる事なく飛行に専念できた。

 プロの操縦士も目指せる本格的なスクールで、急に行って飛ばせる、という施設ではないが、初心者向けの「スカイチャレンジ」(1万円)というコースを用意。インストラクター1名につき受講生は最大3名まで参加できるもので、1名から参加可能。受講時間は90分。無料で貸し出される訓練用ドローンを使い、操縦訓練や空撮テクニックに関するカウンセリング&アドバイスが受けられる。

 自分のドローンを持ち込んでの練習はできないが、都心に近い場所で、インストラクターに教わりながら飛ばしてみたいという人にマッチするだろう。もちろん、より本格的なフライトコース、ビジネスコースも用意されており、空撮だけでなく、農業や警備、監視、計測、観測といった、多様なドローン事業向けのスキルを取得する事もできる。取材日も、多くの人が腕を磨いていた。

GPSなどの補助を切って、スキルを磨く人達の姿も
フライトシミュレーターも用意されていた

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DJI Mavic Pro

山崎健太郎