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JDI「ラストチャンス」構造改革、OLED量産は'19年。能美工場生産停止、約4,000名削減も

 中小型ディスプレイ事業のジャパンディスプレイ(JDI)は9日、記者会見を開催。第1四半期の決算や、構造改革の実施、中期経営計画などについて東入來信博会長兼CEOが説明。OLED(有機EL)への注力や、スマホ以外への拡大を進める方針を示したほか、構造改革に伴う工場などの統廃合や、人員の削減などにも言及した。

JDIの東入來信博会長兼CEO

 東入來信博会長兼CEOは「抜本的な改革を断行する。これがラストチャンス」と宣言。OLED量産技術の確立と事業化を加速するため、グローバル企業とのパートナーシップ構築を検討していることや、OLED(有機EL)への注力の強化、人員削減を含むコスト削減を進めることなどを明かした。構造改革実施に伴い、'17年度は特別損失1,700億円程度を計上予定。

OLEDなくしてスマホビジネスに将来なし

 第1四半期は、売上高が前年同期比8.2%増の1,886億円。中国向け出荷の減速を欧米向けの増加でカバーした。営業損失は144億円の赤字だが「製品ミックスの影響により、ほぼ予想通りに着地した」としている。前年同期比では売上高が増加となったが、OLED開発加速と白山工場稼働にともない、固定費増加のため営業赤字は前年同期の34億円から拡大。純損失は315億円で、前年同期の118億円の赤字から悪化した。事業構造改善費用の一部として、27億円の特別損失を計上する。

第1四半期決算

 中期経営計画について東入來氏は、利益を確保できる体制構築のための「選択と捨象」と、新分野への成長戦略加速などの「破壊と創造」を軸に、“第二の創業”を目指すことを説明。2019年度に営業利益400億円、営業利益率5%の達成を目指す。

 「破壊」の部分については、過剰な生産キャパシティの適正化や、売上高6,500億円をブレークイーブンポイントとする体質の構築などを目的とした構造改革を断行。グループ全体で年間固定費は約500億円削減を見込む。「創造」に関しては、OLED量産技術の確立と事業化の加速を目指す。

従来の体制を振り返り、「第二の創業」を目指す
構造改革の概要
中期経営計画の骨子

 OLEDについては、「開発は鋭意取り組んでおり、ほぼマイルストーン通りに進んでいる」とし、スマートフォン向けは2019年の量産開始を計画。スマホ向けの蒸着方式や、グループのJOLEDによる印刷方式までをカバーしたOLEDリーディングカンパニーを目指す。スマホ向けは、狭額縁の「FULL ACTIVE」液晶が'18年~'19年に中国向けなどを含めて収益に貢献するという見方の一方で、その先については「OLEDなくしてスマホビジネスに将来なし」として、高付加価値なOLEDへの注力を進める姿勢を示した。

構造改革断行により見込む効果

 '17年度はOLED開発を中心とした研究開発は増加する見込み。国内前工程の整理として、石川の能美工場は12月に生産停止、JOLEDによる印刷OLEDへの活用を検討するほか、OLED試作ラインについては、石川OLEDラインの廃止、茂原第6世代OLED試作ラインへの統合を目指す。

 海外では製造子会社の統廃合や、EMSの活用などを進め、海外後工程を整理。生産停止などに伴う人員削減については、海外は3,500名。国内は240名を希望退職として募る。

 資本の受け入れを含むグローバルパートナーについては、「いろいろな形が考えられる」として、具体的な提携先などは明らかにせず、「まずやるべきことは、収益を生む体質に変えること。その上で色々な形のパートナーが考えられる」とした。

 JDIの目指す方向性としては、スマートフォン向けが引き続き大きな割合を占めるものの、それ以外の“ノンモバイル”として、車載、産業機器、新規事業を成長領域と見ている。中期経営計画では、ノンモバイルの構成比を、'16年度の19%から、'18年は25%、'19年は30%、'21年は45%以上への拡大を見込む。

事業ポートフォリオ。ノンモバイルの構成比を拡大
新生JDIのコミットメント
JDIの目指す方向性