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8K液晶で裸眼3D立体視を実現するライトフィールドディスプレイ。NHK-MTとJDIが開発

 ジャパンディスプレイ(JDI)とNHKメディアテクノロジー(NHK-MT)は、8K液晶を用いて、裸眼3D映像を実現する「17型ライトフィールドディスプレイ」を共同開発。12日にメディア向けに紹介した。同ディスプレイは、5月に米国で開催されたディスプレイ関連学会・展示会「SID DISPLAY WEEK 2017」ので技術展示が行なわれたが、国内では初公開となる。

17型ライトフィールドディスプレイ

 JDIによる8K/7,680×4,320ドットの高精細ディスプレイと、NHK-MTによる次世代3D映像を組み合わせることで、見る視点によって異なった映像を表示し、「実物のような立体感」が体験できる。

ライトフィールドディスプレイの概要

 3Dメガネを使う3D立体視や、従来の裸眼による3D立体ディスプレイでは、左右の目の位置にそれぞれの視差画像を集める「視差方式」が主に用いられてきたが、今回のディスプレイでは、物体の放つ光線を再現する「Light Field(ライトフィールド:光線空間再現)」方式を採用。物体が放つ様々な方向の光を、ディスプレイ上で再現し、視聴位置に応じた3D立体視が行なえる点が特徴。

見る角度に応じて見え方が変わり、立体のように見える
Light Field方式の概要

 8Kパネルの精細度は510ppi。2Dの撮影画像から、NHK-MTがライトフィールドディスプレイに合わせた独自の3D変換を行ない映像を作成、パネル上で表示する。8Kの画素を用いながらも、ユーザーの視点からはフォーカスのあった画素とぼけた画素が見え、実際の視聴位置にあわせて異なる映像として認識される。そのため、ユーザーの視点からは「HD解像度相当」の立体画像のように見える。

 本ディスプレイの特徴は、高精細であることと、視野角が130度と広いこと。従来のライトフィールドディスプレイの視域は20~30度程度だったが、本方式では左右130度を実現している。そのため3Dで見える“スイートスポット”が広く、1人だけではなく、同時にに複数人でディスプレイ映像の立体視を楽しめるという。

 技術の詳細やコンテンツオーサリング手法については、「まだ公開できない」とのこと。

 表示には、専用のコンテンツが必要で、今回のデモ映像は、ターンテーブル上に載せた人形や工芸品などの物体を、2Dのカメラで“数十枚”の写真として、視聴者に見せたい角度から記録。それをNHK-MTが開発したライトフィールド3D専用のソフトウェアでオーサリングする。

視域は130度で、見る角度に応じて見え方も変わるため、立体的に感じる
コンテンツの作り方にも依るが、今回のデモ機は上下方向の立体感はほとんどない

 ディスプレイ側の技術も明らかにしていないが、「原理的には有機ELでも実現できる。高解像度化という点で、液晶に優位性がある(JDI 次世代研究センター 先端技術研究部 テクニカルスペシャリスト 林氏)」とのことで、バックライト側の技術ではなく、液晶パネル側の画素構造や特殊フィルタ等などを用いたものと推測される。接写してみると、画素が斜めに配列されているのが見えたが、技術的な詳細については、「時期が来たら説明し、採用パートナーを増やしていきたい」という。

 ジャパンディスプレイ 次世代研究センター 先端技術研究部 テクニカルスペシャリストの林宗治氏は、「2年前に話をいただき、ライトフィールドに取り組んだ。当初は4Kで視域も30度程度であったが、8Kになればさらに良くなりそうだと感じだ。実際に手掛けてみると、解像度が高く“現実的”な立体像ができた。またその中で、視域を広くする方法もわかってきた。130度まで視域を広げたことで、さまざまな応用が考えられるようになる」とした。

JDI 次世代研究センター 先端技術研究部 テクニカルスペシャリスト 林宗治氏

  ​​NHKメディアテクノロジー 放送技術本部 映像部 副部長 大塚悌二朗氏​、「ディスプレイによって物体の放つ光線を再現する」というライトフィールド技術の概要を説明し、用途としては、「美術品のアーカイブやデジタルサイネージ。医療、教育分野にも応用できる」という。

NHK-MT ​​放送技術本部 映像部 副部長 大塚悌二朗氏​

 実用化の時期については、「まだ開発段階だが、課題は多くある。例えば、画質、品位はまだ高められるはず。そのあたりのノウハウを積んでいかなければいけない」(JDI 林氏)とのことで、今後1~2年かけて方向性を固め、事業化に向けた検討はもう少し先になるとの見通しを示した。

 また、「動画対応」も課題。3DCGであれば、ライトフィールドディスプレイ向けのコンテンツを用意できるが、「動く物体をどのような手法で撮影すればよいか」といった撮影手法や製作手段を含めて、まだ解決すべき問題があるという。