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ソニーヨーロッパがスマートスピーカーやRX0を投入する狙い、欧州TV/カメラ事業

 ドイツ・ベルリンで9月1日(現地時間)に開幕した「IFA 2017」において、ソニーヨーロッパの粂川滋社長が、欧州市場とソニーヨーロッパのこれまでの取り組みなどについて説明し、日本の報道陣からの質問に答えた。

ソニーヨーロッパの粂川滋社長

 前日のプレスカンファレンスで登壇し、同社初のGoogleアシスタント搭載スピーカーや、Bluetooth/ノイズキャンセリング(NC)ヘッドフォン「1000Xシリーズ」などの注目製品を発表した粂川氏。自身は1986年に国内営業本部へ入社後、マレーシアやロシア、ドバイなどの拠点でマーケティングを担当。日本のソニーマーケティングでもホームAVマーケティング部 統括部長などを務めた後、2016年にソニーヨーロッパ(英国)の社長に就任した。

 ソニーヨーロッパのコンシューマビジネスは、'14年度から黒字に転換し、'16年は熊本地震でカメラビジネスが影響を受けて全体の売上は横ばいとなったものの、収益は上昇を続け、'17年は売上2ケタ成長を目指し、「今のところはオントラックで順調。増収増益で終えられる見込み」としている。

ソニーヨーロッパのコンシューマビジネスの推移

 ソニーのエレクトロニクス事業全体の売上の1/4を占める欧州が注力しているのは「販売会社として基本動作を徹底すること」としている。当たり前のことのようにも見えるが、'12年当時はできていなかったことが、前社長の玉川勝氏の下で“基本動作”が徹底され、それが欧州の復活のきっかけになったという。

グループ連結に占めるエレクトロニクスと欧州

 具体的な取り組みとしては、データマーケティング、「現場魂」の注入、費用投下と選択と集中、「働き方」の徹底指導、の4つを挙げている。

 データマーケティングについては、店舗別で週次の実売台数、在庫までデータをチェック。「現場魂」については、リアル店舗の店頭だけでなく、ネット販売も現場ととらえて活動を強化。現地でも日本語の「Genba」が使われているという。

 選択と集中については、特に製品のプレミアムシフト(高付加価値モデル)が進んでいることから、有機ELやBluetooth/NCヘッドフォンなどのマーケティングを強化。また、「働き方」については、人材の欧州内再配備やグローバルへの人材の輩出などを行なっているという。

4つの取り組み
高付加価値モデルへの取り組み(液晶テレビ)
有機ELテレビ
ヘッドフォン

 欧州の特徴としては、一眼カメラ、特にフルサイズ機の販売において、知識を持つフォト専門店の売上が販路の中で大きな割合を占めるため、フォト専門店との協業を強化。セミナーやイベントの開催。専門店が持つWebサイトやメールリスト、SNSなどを活用したアプローチなどを進めているという。

販売会社における顧客接点(ラストワンインチ)
循環型(リカーリング)ビジネスの重要性

スマートスピーカー、RX0投入で目指すもの

 前日の会見でGoogleアシスタント対応のスマートスピーカー「LF-S50G」を発表したことに関連し、「Googleなどが自社でスマートスピーカーを持つ中、ソニーの強みとは? 」という質問に対して粂川氏は、「スマートスピーカー、AIといいながらも、最終的には音を聴くのが最大の楽しみ。ものづくりの思いを込めた商品であり、音質に自信を持っている。『360度どこにいても同じ音が聴ける』。BRAVIAにコンテンツを送るなど、機器連携ができるようになる(年内にBRAVIA '17年モデルがGoogleアシスタント対応予定)など、ソニーならではのつながりも実現できる」としている。

 会見でも注目された、1インチセンサーの超小型カメラ「RX0」の位置づけについては「使い方が自由なカメラ。(複数台を連動させる)マルチビューシューティング機能によって、今までで撮れなかったものが撮れるし、スタンドアロンで買われることも期待している。売場は、どこに置くか考えているところ。RXシリーズの横がいいのか、GoProのコーナー近くがいいのか、両方トライしようとしている。どちらも行ける可能性があって楽しみ。価格が850ユーロなので、GoProと並べると高価だが、その高さの意味を感じていただけるお客様をどれだけ作れるかが我々のマーケティング活動」とした。

 また、RX0のタフな仕様について「そのままポケットに突っ込んでも、ちょっと落としても、水に浸かっても大丈夫で、動画も静止画も1台で撮れる。これをスティックに着けるお客様も結構いるのでは。取り組みがいのある商品で、これがどの領域なのかは、我々もやってみないとわからないが、可能性はかなりある」との考えを示した。

欧州におけるテレビ、ハイレゾなどの現状は?

 「有機ELテレビの欧州の現状」の質問に対しては、「欧州ではUK、ドイツで特に好評。音や絵の説明を店員さんがしっかりできる販売店は、小さな店舗でも売れている。今はテレビが台数ベースで伸びる状況ではないので、我々も、一台当たりの単価を上げていこうと提案している。それをしっかり売り切れるところが、店の規模の大小にかかわらずしっかり売っていただいている」とした。

 「Android TVの欧州での評価」については、「テレビを買うときの優先順位とされているのは、画質、音質、デザイン、操作性の順。操作性のなかにAndroid TVもあるが、優先度でいうと画質が高い。ただし、ネットワークでコンテンツを楽しむお客様は増えているので、オープンプラットフォームのAndroid TVの意義は増えている。AIスピーカーとの連携など、新しい形でコンテンツをテレビで楽しめるといったつながりが出てくることで、Androidの価値もこれから出てくる。今年、4Kテレビの中で一番下だけはAndroidではなくLinuxのモデルも用意している。それらがどう受け入れられるのか、今年1年かけて、我々もよく見ようと思っている」と回答した。

 欧州のハイレゾの現状の認知については「音楽を聴くスタイルが、欧州はストリーミング文化のため、日本や東アジアに比べるとハイレゾの普及は遅れている。しかし、確実にいい音を聴きたいというお客様の数は増えていくので、ハードウェアが(ウォークマンなどの)ミュージックプレーヤーになるのか、Xperiaなのかという話はあるが、あきらめずに継続的に取り組む」と述べている。

 昨年のBluetooth/NCヘッドフォン最上位機「MDR-1000X」が登場してから1年で新たな最上位となる「WI-1000XMK2」が今回発表されるなど、プレミアム価格の製品に注力すると、必然的に上位機が入れ替わるサイクルが短くなる。「前のモデルを買った人の満足度を保つことについて、販売の立場としてどう考えるか」との質問には、「やはり商品を気に入っていただけると、買い替えしていただける場合も結構あって、例えばボーズさんの販売動向を見ると、(NCヘッドフォンの)QC35は、(旧機種の)QC25を持っている人が圧倒的に買っている。商品を持っていただく満足度を高めながら、どういうケアをしたコミュニケーションをとっていくかは重要。今回、1000Xシリーズが2サイクル目に入って、これからそういう課題を含めてぜひチャレンジしたい」と述べた。