ソニー、2008年度通期決算は989億円の赤字に

-テレビは1,270億円の赤字。「台数より利益確保を優先」


大根田執行役EVP兼CFO

5月14日発表


2008年度連結業績

 ソニーは、2008年度連結業績を発表。売上高は、前年比12.9%減の7兆7,300億円。営業損益は前年の4,753億円から、マイナス2,278億円へと赤字転落。税引前損益は前年の5,671億円からマイナス1,750億円の赤字、当期純損益は3,694億円からマイナス989億円の赤字となった。

 ソニーの大根田執行役EVP兼CFOは、「減収の85%が為替の影響によるもの。それを除くと前年比2%の減少に留まる。また、営業損失の2,278億円から持分法による投資利益および構造改革費用を除いた1,272億円の赤字のうち、2,790億円が為替の影響、1,910億円がエレクトロニクス事業における売り上げ減少や原価率の悪化によるもの、540億円が日本の株式の下落による金融資産の損失によるもの」と説明した。

 


■ テレビ出荷台数拡大も、損益悪化。ゲームはPS3が伸長

エレクトロニクス事業の2008年度概要

 エレクトロニクス部門の売上高は、前年比17.0%減の5兆4,880億円。営業損益は前年同期の4,418億円から、マイナス1,681億円の赤字となった。

 為替の影響で2,496億円の減少、原価率の悪化で1,030億円の減少、売上減で879億円の減少など。製品ごとの減収要因としては、ハンディカム、サイバーショット、VAIO。さらに、システムLSIの低迷も減益に影響した。

 テレビの出荷台数は、全世界で1,520万台となり、前年の1,060万台から43%増加。1月公表値の1,500万台の計画を超えたものの、テレビ事業の売上高は7%減の1兆2,700億円、営業損失は620億円悪化の1,270億円の赤字となった。

 「テレビとPCは、販売台数は増加したものの、低価格化の影響、為替の影響を受けて減益となっている」という。

 ウォークマンの販売台数は700万台(前年実績は580万台)、ハンディカムは620万台(同770万台)、サイバーショットは2,200万台(同2,350万台)、ブルーレイディスクレコーダーは50万台、ブルーレイプレーヤーは220万台、DVDプレーヤーは970万台(同850万台)、DVDレコーダー120万台、VAIOは580万台(同520万台)となった。

エレクトロニクスの営業利益増減要因エレクトロニクスの連結棚卸資産
ゲーム事業の2008年度概要

 一方、ゲーム部門は、売上高が18.0%減の1兆531億円、営業損益は前年の1,245億円の赤字から661億円縮小したものの、585億円の赤字となった。

 ハードウェアの売上台数は、PS3が前年比94万台増の1,006万台、PSPが同30万台増の1,411万台、PS2は同575万台減の791万台。

  映画部門は、売上高が16.4%減の7,175億円、営業利益は48.9%減の299億円。金融部門はビジネス収入が7.4%減の5,382億円、営業損益は前年の226億円から、マイナス312億円と赤字となった。その他部門の売上高は41.2%増の5,396億円、営業利益は50.1%減の304億円となった。

映画事業の概要ソニーエリクソン事業の概要
金融事業の概要その他事業の概要

 さらに、構造改革の進捗状況について、「費用削減」、「事業所の統廃合」、「人員計画」の3点から言及。ソニーグループ全体で2009年度に2,500億円の費用削減する計画に対して、3,000億円を上回る費用削減に向けた施策を実行していること、エレクトロニクス製造事業所を2009年度末までに57拠点の1割を削減する目標については、国内4拠点、海外4拠点の合計8拠点での削減を決定し、49拠点にまで削減。エレクトロニクス分野の16万人の従業員から8,000人削減、派遣社員などの外部リソースで8,000人を削減する計画では、早期退職制度などによりすでに8,000人以上を減少するめどがたっているほか、外部リソースについても2009年度3月時点で、8,000人以上の減少になったという。「引き続き、効率化推進への取り組みを行なっていく」としている。

 製造事業所の統合では、すでに発表している米国ピッツバーグ、仏ダックス、日本の一宮テックに加えて、新たにメキシコの液晶テレビ製造拠点、インドネシアのケーブル製造を行う生産拠点のほか、携帯電話用カメラモジュールなどの生産を行う小見川テック、光学ピックアップなどの生産拠点である浜松テック、FeliCaのリーダー/ライターなどを生産する千厩テックの統廃合を行なうことを公表した。

構造改革の進捗状況今回発表の構造改革

 


■ 当面損益優先も「テレビ世界一の目標は下ろさない」

2009年度連結業績見通し

 一方、2009年度連結業績見通しは、売上高は、前年比6%減の7兆3,000億円。営業損益はマイナス1,100億円の赤字。税引前損益はマイナス1,400億円の赤字、当期純損益はマイナス1,200億円の赤字とした。

 売上高は為替の影響を除くと前年並みとなるという。2009年度の構造改革費用としては、1,100億円を予定しており、前年の754億円に拡大する。

 「エレクトロニクス部門は、厳しい事業環境の継続に加えて、為替の動向など、厳しい環境が続くと考えており、減収を見込んでいる。一方で、製造コストおよび営業経費の削減を推進し、とくにテレビ事業においては大幅な損失縮小を見込んでいる。とはいうものの、エレクトロニクス事業全体としては、構造改革費用の増加などにより、損失が増加すると見ている。ゲームは、円高の影響およびプレイステーション2ビジネスの売上高減少などにより減収を見込んでおり、損益についてはハードウェアのコスト削減、ソフトタイトルの充実などによるPLAYSTATION 3ビジネスの損益改善を見込んでいる。映画では、2008年度に比べて大型の映画作品の公開が増加することや、米国以外で番組配信事業における広告収入、受信料収入の増加などが見込める」とした。

 テレビ事業に関しては、2009年度は、前年度から20万台減少の1,500万台を目標とする。

 「台数では前年に比べて若干下がる程度。やたらに値段を下げて台数を売るということはしない。利益確保という観点からも、大型化や倍速化技術などの付加価値を重視した施策を行なう。ただ、新興国をやらないというわけではなく、こうした地域にはOEMやODMを通じてマーケットをとっていきたい。上期は、厳しい状況が続くため、テレビ事業は黒字にはならない。下期にブレイクイーブンを目指す」との見通しを示した。

 テレビ事業の収益性回復に向けた具体的な施策としては、正規社員にまで踏み込んだ人員削減を進め、固定費を抱えない形での体制を構築する一方、ブラウン管時代の全世界4拠点ごとに開発、設計、製造拠点をそれぞれ配置していた体制から、設計拠点を一カ所にし、各国ごとに個別のテレビ用シャーシを作らない体制とすることをあげた。

ソニー業務執行役兼SVPの原直史氏

 「現在でも9シャーシ程度があり、これを来年には4~5つぐらいにしていきたい。前年は、パネルを買い急いで失敗したという部分もあった。サプライチェーンを短くすることでも改善を図れる。それぞれの施策は、決して新たなものをやるということではないが、もう一歩突っ込んだ形でやる」とした。

 さらに、「世界ナンバーワンを目指すという目標を下ろしたわけではない。ただ、いまの実力では、ナンバーワンを追うべきできない。条件が整った段階で、サムスンと戦える時期が来るだろう。今年度に限っては、数よりも利益を確保したい」と語った。

 主要製品の販売計画は、ウォークマンは630万台、ハンディカムは530万台、サイバーショットは2,000万台、ブルーレイディスクレコーダーは70万台、ブルーレイプレーヤーは350万台、DVDプレーヤーは900万台、VAIOは620万台。

 なお、明日から始まるエコポイント制度の影響については、「国内の需要を喚起するという意味では期待しているが、テレビビジネス全体から見れば、国内の販売比率が低いため、影響は大きくはない」(ソニー業務執行役兼SVPの原直史氏)とした。



(2009年 5月 14日)

[Reported by 大河原克行]