シャープの新工場「グリーンフロント堺」見学記

-液晶工場は2010年年末にフル稼働へ


11月30日公開


 シャープは30日、大阪府 堺市の液晶/太陽電池新工場「グリーンフロント堺」を報道陣向けに公開した。

 グリーンフロント 堺は、10月1日から第10世代の液晶パネル生産を開始しており、「LED AQUOS」ことAQUOS LX1シリーズで採用しているUV2Aパネルなどを生産している。液晶パネルのほか、薄膜太陽電池パネルも製造。太陽電池工場は2010年3月までに稼働予定としている。

正面ゲート。左が液晶のガラスエリア、右がカラーフィルタエリアで、手前には大日本印刷が入っている
ガラスエリアTFTパネル工場からゲート方向を望む。左はカラーフィルタエリアで凸版印刷が入っている

 液晶パネル工場では、先頃発表した新世代液晶パネル「UV2A」を生産。畳約5畳分に相当する2,880×3,130mmの第10世代のマザーガラスから、40型で18枚、60型で8枚のパネルを切り出すことができる。

 液晶パネル工場の生産能力は、当初は月3万6,000枚でスタート。フル稼働時には月7万2,000枚を生産する計画であり、「2010年のクリスマス商戦向けに、'10年の10月ごろのフル稼働を目指したい」とする。パネルは、シャープの液晶テレビのほか、国内外のテレヒメーカーにも供給する予定。


グリーンフロント堺グリーンフロント堺完成予想図AQUOS LX1シリーズのUV2Aパネルは堺で生産される
グリーンフロント堺の工場配置

 グリーンフロント堺では、127万m2という広大な敷地に、TFT液晶パネル工場や薄膜太陽電池工場を配置。さらにコーニングなどのガラス基板や、大日本印刷や凸版印刷などのカラーフィルタの工場も集約しており、これらの運営設備や物流などを共有することで、効率的なTFT液晶パネル/太陽電池生産を目指す。

 今回報道向けに公開されたのは、「TFT基板の製造工程」と「統合エネルギー管理センター」の2か所。いずれも建物以外の写真撮影は禁止となっていた。

 TFT基板の製造工程は、メインの液晶パネル工場の4階と3階で、4階ではTFT基板に回路パターンなどを作るための露光装置や洗浄などの工程を紹介。3階ではTFT基板の検査などが行なわれている。基板が通るエリアは、クラス10のクリーンルームになっているという。なお現在、グリーンフロンティア堺で働く従業員の数は約2,000名で、そのうちシャープが約1,000名という。

TFT液晶パネル工場ロボット(写真はシャープ提供)

 


■ 液晶工場は2010年年末商戦に向けてフル稼働へ

濱野副社長

 シャープ代表取締役副社長の濱野稔重氏は、亀山工場の約4倍の127万m2という敷地に、薄膜太陽電池と液晶パネル工場を配した「グリーンフロント 堺」のレイアウトを紹介。TFT液晶の薄膜トランジスタと、薄膜太陽電池の技術的な近似性から、この分野に親和性を持つパートナー企業とともに、グリーンフロント堺を立ち上げる姿勢を強調した。

 グリーンフロント 堺には、シャープだけではなく旭硝子やコーニング、大日本印刷、凸版などの関連企業19社が敷地内に進出。「19社があたかもひとつのバーチャルカンパニーのように動く。これにより効率的な経営が図られる」という。具体的には、敷地内の各工場のエネルギーやユーティリティを集中管理する「統合エネルギー管理センター」を設置。純水や圧縮空気、窒素ガスなど、各社の工場で共通して使用するものを統合管理することで、分散供給と比較して、約20%のCO2削減が可能となり、年間のCO2削減効果は48,000t/年にも上るという。

 また、グリーンフロント堺では、各施設が免振機能を有しているほか、3カ所に地震計を設置している。直下型地震の場合、気象庁からの情報では6秒後の通知となるが、この地震計の設置により1.5秒前に検知可能となり、障害回避のための機械の停止などが行なわれるという。

19社のパートナ企業が参加統合エネルギー管理センターで、各社における純水などの使用状況を把握し、一括管理する統合エネルギー管理センター

 また、亀山工場では、梱包材や薬液、ガラス、カラーフィルターなどが各工場を行き来するため、50台のトラックが毎日稼働しているが、グリーンフロント堺では棟間搬送システムを導入することで、こうした工場間の移動にかかえる環境負荷を大幅に低減。年間CO2削減効果は3,300tにも及ぶという。

亀山では50台のトラックで各工場間で物資輸送していたグリーンフロント堺は棟間搬送システムで、棟から棟の輸送を自動化。CO2排出も抑制している棟間搬送システム

 さらに、廃熱の再利用により5,500万t/年のCO2削減を行なっているほか、全工場にLED照明を導入することで、調光を加味した省エネ効果として消費電力を47%削減し、CO2の削減効果は17,750t/年におよぶ。また、グリーンフロント堺の各棟の屋根には太陽電池を配置し、大規模なソーラー発電を実施。当初は9MW、最終的には18MWの発電を目指し、「工場の電力の一部を補う」という。さらに、対岸に関西電力が計画している堺第7-3区における約10MWの発電と合わせて、合計28MWのソーラー発電設備を構築する。

廃熱を再利用全工場にLEDを導入駐車場にもLED
太陽光発電で、一部の電力を賄う19社以外のパートナーと協力薄膜太陽電池工場

 グリーンフロント堺では、これらにより生産設備全体で亀山工場と比較して、CO2原単位排出量を35%削減できたという。また、第10世代マザーガラス採用の新UV2Aパネルによる省エネ効果など、生産する製品における省エネ、創エネにも取り組んでいく。

 濱野副社長は、「グリーンフロント堺は、日本が持つ最新のテクノロジーを集めた施設になる。低炭素社会づくりに微力ながら役立ちたい。グリーン社会のための技術は大いに発展の余地がある、液晶に続く、大きな事業と期待している太陽電池や、LEDなども低炭素社会づくりに役立つもの。われわれはそこに力を入れていく。オンリーワン技術をもつ、大学や企業、研究機関らと連携し、新しい創造の場にしていきたい」と語った。

創エネ/省エネ製品の開発でCO2削減UV2Aパネルでは20%の省エネ化を達成亀山工場との比較で約35%のCO2原単位排出量を削減

(2009年 12月 1日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]