シャープ、増収増益の2010年度第1四半期決算

-液晶テレビの黒字化が定着、堺はフル生産体制


代表取締役兼副社長執行役員の濱野稔重氏

7月29日発表


 シャープは、2010年度第1四半期(2010年4~6月)連結決算を発表した。売上高は、前年同期比24.0%増の7,416億円、営業利益は485億円改善の225億円と黒字転換。経常利益は502億円改善の200億円、当期純利益は358億円改善の106億円と黒字転換した。



■ 液晶テレビ黒字化が定着。「4原色と3D」を徹底訴求

第1四半期の連結業績概況

 代表取締役兼副社長執行役員の濱野稔重氏は、「国内外の景気は着実に持ち直しつつあるが、欧州の金融不安、為替の影響、中国の成長鈍化、米国の需要動向の変化などの懸念材料もある。そのなかで、液晶、携帯電話、プラズマクラスターイオン、太陽電池など独自のオンリーワン商品により、増収増益になった」と総括した。

 セグメント別では、エレクトロニクス機器部門は、売上高が11.2%増の4,804億円、営業利益は275億円改善し、223億円と黒字。そのうち、AV・通信機器事業の売上高は12.0%増の3,491億円、営業利益は251億円改善し、123億円の黒字。健康・環境機器事業の売上高は12.1%増の647億円、営業利益は193.7%増の52億円。情報機器事業は、売上高が6.5%増の665億円、営業利益は18.0%減の46億円となった。

 「AV・通信機器事業は、液晶テレビと携帯電話が増加。国内にける携帯電話の収益性が向上している。また、健康・環境機器事業では冷蔵庫、エアコンに加えて、LED照明の販売が好調に推移。情報機器はデジタルカラー複合機の販売が順調だった」とした。

 液晶テレビに関しては、「液晶テレビの黒字化が定着した」と前置きし、「国内においては、価格下落の影響はあるものの、昨年5月からのエコポイント制度の継続により、新製品の販売が好調。また海外では中国を中心に販売を伸ばすことができた。第2四半期以降は4原色のAQUOSクアトロンやクアトロン3Dがいよいよ本格的に市場投入することになる。4原色と3Dワールドを徹底訴求し、国内外での拡販を図る」とした。

 液晶テレビの売上高は前年同期比12.1%増の1,560億円。販売台数は34.4%増の269万台。そのうち、国内は42.0%増の152万台。海外は、25.6%増の117万台。北米が39.3%減の27万台、欧州が48.5%増の34万台、中国が189.3%増の39万台、その他地域が38.0%増の17万台。

 携帯電話については、「国内の販売が堅調で収益を確保した」としたものの、「2009年度は国内5年連続ナンバーワンを獲得したが、今後ともユーザーニーズにあわせた製品を投入しなくてはならない。国内では、スマートフォンが昨年から上昇傾向にあり、当社もオープンOS搭載のスマートフォン商品をラインアップし、収益拡大を図る」と語った。

 携帯電話の売上高は前年同期比7.4%増の1,336億円、販売台数は21.9%増の334万台となった。

 また、濱野副社長は、マイクロソフトが販売を停止したKINについて触れながら、「シャープでは、年間1,370万台の携帯電話の販売目標を掲げているが、KINの影響がどれぐらいでるのかは今の段階では確認できていない。しかし、KINに頼り切っているわけではなく、中国でも携帯電話の販売は好調であり、国内でもシェアがあがっている。スマートフォンの販売増加も見込める」として、1,370万台の出荷計画はそのままとした。

四半期別の営業利益の推移四半期別の経常利益の推移四半期の純利益推移


■ 大画面液晶が堅調。LEDや3Dの需要拡大は想定以上

 一方、電子部品等部門の売上高は45.0%増の3,923億円、営業利益は220億円改善し63億円の黒字。そのうち、液晶は、売上高が48.0%増の2,610億円、営業利益が142億円改善の17億円の黒字。太陽電池は、売上高が65.7%増の576億円、営業利益が35億円増加の10億円の黒字に転換。その他電子デバイスの売上高は24.0%増の736億円、営業利益は42億円改善の35億円の黒字となった。

 「液晶に関しては、テレビの大型化需要が堅調であり、グリーンフロント堺が稼働したことで事業が拡大した。中小型は厳しい状況にあるが、下期には3Dゲーム機や電子書籍の発売もあり、建て直しを図る」としたほか、「太陽電池は国内における住宅向け補助金制度により国内販売が順調。その他電子デバイスでは、CCDやCMOSイメージャーの販売が増加した」とした。

部門別売上高部門別営業利益主要製品・デバイス別の状況
2010年度の連結業績見通し

 液晶に関しては、「新興国での需要拡大やPCの需要拡大などのほか、LEDテレビや3Dテレビの拡大が想定以上のスピードで進展しており、当社の高精細、高輝度のパネルへのニーズが高まっている。これに応えるべく4原色、UV2Aのパネルを開発した。グリーンフロント堺では、このパネルを昨年10月から月産3万6,000枚、5月から5万5,000台に引き上げ、7月からは7万2,000枚のフル生産体制に増強した。だが、4~6月の需要をみると、パネルの在庫増加の問題が出てきている。下期のパネル需要についても若干不透明なところもあり、7万2,000枚のフル生産体制については、慎重にみていかなくてはならないと考えている。パネルの生産は高い効率性が発揮されているが、後半のモジュール工程の効率性が前半部分ほど高まっていない。経営としては在庫水準を適正に維持することが重要である」として、フル生産体制の維持については柔軟に姿勢で取り組む考えを示した。

 なお、同社では、2010年度の連結業績予想については、そのまま据え置き、売上高が前年比12.5%増の3兆1,000億円。営業利益は131.2%増の1,200億円、経常利益は206.5%増の950億円、当期純利益は約11倍となる500億円を見込む。



(2010年 7月 29日)

[Reported by 大河原 克行]