日立、新LEDバックライト方式「S-LED」採用の液晶TV

-42/37型の「ZP05」。直下とエッジの“いいとこ取り”


上が37型「L37-ZP05」、下が42型「L42-ZP05」

 日立製作所は、直下型ともエッジ型とも異なる、新しいLEDバックライト方式「スリムブロックLEDパネル」を採用した液晶テレビ「Wooo」ZP05シリーズを発売する。500GB HDDも内蔵し、録画機能も搭載。

 いずれもオープンプライス。店頭予想価格は、42型「L42-ZP05」が10月下旬発売で28万円前後、37型「L37-ZP05」が10月中旬発売で、24万円前後の見込み。

 最大の特徴は「スリムブロックLEDパネル」をバックライトに採用したこと。日立では略称として「S-LED」と名付けている。キャッチフレーズは「光を支配する、Wooo。」


42型「L42-ZP05」37型「L37-ZP05」


■ S-LEDバックライトの特徴と利点

直下型LEDの仕組みと特徴、そして問題点

 現在の液晶テレビのLEDバックライト方式には、大きく分けて直下型とエッジ型が存在する。直下型は液晶パネルの真下にLEDを配置するもので、光源の色には白色とRGB3原色のタイプがある。個々のLEDを独立して発光制御するエリア制御が可能で、バックライトが不要な部分は光らせないことで黒浮きを低減。ハイコントラストな表現が可能になっている。

 その反面で、LEDの光は拡散するため、例えば真っ暗な画面に小さな光の点がある映像の場合、周囲の暗闇部分に光が漏れてぼんやり明るくなるなど、細かな光源制御が難しいという問題がある。さらに、輝度を均一に拡散板に広げるために、LEDと拡散板との間に一定の距離が必要であるため、厚みが増えてしまうこと、使用するLEDが増えると発熱が増えて熱処理が大変になるといった問題もある。

エッジ型LEDの仕組みと特徴、問題点

 エッジ型は、パネルの上下などにLEDを配置し、導光板に光を送り込んでバックライトとするもので、薄型化できるのが特徴。しかし、上下配置の場合は短冊状のエリア制御は可能だが、直下型のような細かな制御は行なえない。また、テレビが大型化し、導光板も大型化すると、導光板そのものに歪が起きたり、大きすぎてエッジ配置のLEDの光が中央までうまく届かず、パネル全体の輝度を均一にするのが難しいといった問題もある。

 S-LEDはこれらの問題を解消するものとして開発されており、イメージとしては、LEDを搭載した導光板の小さなブロックを、タイルのように多数敷き詰めて1枚のバックライトを構成している。LEDはエッジ型のようにブロックの横に設置されており、LEDがある側のブロックは分厚く、反対側が薄くなっているのが特徴。薄い部分は、隣のブロックのLEDがある厚い部分と重ねるように配置。それを繰り返して1枚の導光板を構成している。LEDは白色。

 直下型と同様に、この1ブロックずつを発光制御することで、エリア制御を実現。直下型のように光を拡散させるための一定距離が不要で薄型化できる。さらに、エッジ型よりも細かなエリア制御ができ、大型テレビになってもブロック数を増やすことで対応できるため、巨大な導光板の歪やコストアップなどが問題にならないという。ブロックには独自のフラグパターンが作られており、光を効率よく行き渡らせている。


スリムブロック型LEDバックライトの構造イメージ左が表示している映像、右がバックライトの動作
S-LEDの動作を説明する映像を撮影したもの。これは花火を表示している際の、バックライトの光り方で、中央部分だけがまるく光っているのがわかる。なお、あくまで説明のイメージ映像であるため実際のテレビのS-LEDブロックが、この個数搭載されているわけではないこちらはライトアップされた橋の映像左の橋の映像を表示している際の、S-LEDバックライトの光り方。こちらもイメージ映像で、ブロックの数などは実際とは異なる

 また、画質面では直下型よりも有利な点があるとしており、前述のようにLEDから導光板に入らずに漏れた光は、隣のブロックがLEDの上にかぶさるように配置されるため、そのブロックの背中に遮られ、液晶パネルへ漏れない。これにより、直下型で発生しやすい、発光部分周囲の光漏れや黒浮きを防げるという。さらにLEDの個数削減にも寄与できる。

S-LEDとエッジ型LEDの比較S-LEDと直下型LEDの比較

 なお、直下型に近いようなきめ細かなエリア制御を行なうためには、多数のブロックを配置する必要があるが、日立では42/37型に搭載されているブロック数は公表していない。また、1ブロックに幾つのLEDが搭載されているかも非公表となっている。

 この機構は省エネにも貢献。エリア制御が可能なことから、ムダのない電力活用ができ、録画機能内蔵テレビで業界トップクラスという省エネを達成。「L42-ZP05」の場合、蛍光管を使った従来モデル(L42-XP03)と比べ、年間消費電力量を約27%削減している。



■ その他の仕様

 両機種とも、液晶パネルは新IPSパネルで、視野角は178度。光沢処理パネルとなっている。輝度は500cd/m2

 液晶は倍速120コマ駆動で、バックライトスキャニングも採用。画面の上から下に黒いバーが降りてくるようなイメージで、エリアごとに分割してバックライトを点滅させることで擬似的に黒を表示させ、残光を低減。液晶特有のぼやけを抑え、動画解像度1,080本を実現している。

 高画質技術として、超解像技術「ピクセルマネージャー」を採用。入力信号の各画素情報を分析し、映像の部分ごとにデータ圧縮の過程で有効な信号成分として認識されなくなったデータを、元の解像度に適した状態に復元。斜め方向の解像度と画面全体の解像感を向上させるという。

 さらに、自動画質調整機能の「インテリジェント・オート高画質 2」も採用。前面に内蔵したインテリジェント・センサーにより、室内の明るさや照明の色を判別、番組のジャンルや映像のシーン情報も加味して、最適な画質に自動調整する。

 ほかにも、高画質画像処理技術の「新Picture Master Full HD2」も搭載。シーンごとに輝度分布を使った画像認識処理に、平均輝度レベルを分析する機能を加え、より効果的な階調処理を行なうことで表現力を向上する「アドバンストダイナミックコントラスト」や、「カラーリミッター」、色彩を改善する「3次元デジタルカラーマネジメント」などの高画質化技術を搭載。1080/24p信号の場合は、24コマ/秒で再生する映画の持つ、均等なコマ感覚を再現することで、フィルム映画のテイストを再現する「シネマスキャン」機能も使用できる。

バックライトスキャニングも採用42型「L42-ZP05」の側面背面の入出力端子部

 どちらのモデルも、500GBのHDDを搭載。チューナは、地上デジタル3系統とBS/110度CSデジタル2系統、地上アナログを1系統装備。内蔵HDDに加え、iVDR-Sスロットも備えており、別売iVDR-Sメディアへの録画も可能。地デジチューナを3系統装備したことで、2番組同時録画に対応するとともに、2番組録画中でも裏番組を視聴できる。

 HD映像のトランスコード技術「XCodeHD」により、MPEG-4 AVC形式での録画も可能。録画モードは、TS(ストリーム記録)のほか、HD画質が、TSE(2倍/MPEG-2)/TSX4(4倍/AVC)/TSX8(8倍/AVC)の3モード。SD解像度のMPEG-2がXP/SP/LPとAVC記録のTSX24を用意する。ダビング10に対応する。

 EPGも新しくなり、番組をジャンル別に色分け表示するようになり、録画予約した番組には、新聞のテレビ欄に赤丸をつけたような、赤丸マークが表示される。また、EPGの右下には視聴中の映像が小画面で表示される。

EPGのデザインも新しくなった付属のリモコン

 ほかにも、連続ドラマなどを、同じ番組名ごとに自動的にフォルダ分類して表示する機能や、独自のシーン解析アルゴリズムを用いて見所シーンが探せる「いいとこジャンプ」、「みどころシーンサーチ」が使用可能。

 音質面では、音響パワー補正技術の「CONEQ」を採用。筐体などに起因する音響的なズレを低減し、理想的な周波数特性に補正する技術となっている。さらに、スピーカーの開口率もアップ。自然かつワイドレンジな再生ができるとしている。

 AVネットワーク機能は、DLNAとDTCP-IPに対応。DLNAサーバー/クライアントとして動作し、PCに保存されている動画を Woooから再生できるほか、Woooの内蔵HDDやiVDR-Sに録画した番組をLAN経由で対応のテレビやパソコンから再生できる。

 さらに、発売に先駆けてWooonetのトップページを9月9日にリニューアル。各サービスの最新情報を、リンクと共に表示する「ピックアップ情報機能」を追加し、Yahoo! JAPANの急上昇検索ワード、アクトビラやTSUTAYA TVの最新コンテンツ情報なども入手できるという。

 アクトビラは、「アクトビラ ビデオ・フル」にもビデオダウンロードにも対応。映画コンテンツをダウンロードし、内蔵HDD/iVDRに記録/ダビングできる。HDMI端子はver.1.4に対応。HDMI CECやARC(オーディオリターンチャンネル)にも対応。高速切替を実現する「InstaPort」にも対応する。

モデル名L42-ZP05L37-ZP05
パネルフルHD IPSα
チューナ地上デジタル×3
BS/110度CSデジタル×2
地上アナログ×1
内蔵HDD500GB
iVポケット搭載
スピーカー(4.5×12cm)×2
最大出力10W×2ch
HDMI入力4系統
入力端子D4×1、S映像×1、コンポジット×3、アナログ音声×3
出力端子光デジタル音声×1、録画番組出力(アナログ)×1、ヘッドフォン出力×1
その他の端子Ethernet×1、SDカードスロット×1
消費電力179W151W
年間消費電力量107kWh/年99kWh/年
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
(スタンド含む)
1,027×307×699mm916×307×637mm
重量(スタンド含む)25.7kg20.8kg



■ S-LEDを中型以上のテレビに展開

 マーケティング本部担当本部長の山内浩人氏は、「エコポイント実施中ということもあり、買いやすいものが重宝される“価格志向”だが、それ以降は“商品志向”に切り替わるのではないかと考えている。それに向け、付加価値のある、お客さんが納得できるものを提供したいと考えており、S-LED採用モデルはその第1弾」と、開発の背景を説明。

マーケティング本部担当本部長の山内浩人氏S-LEDのロゴマークとキャッチフレーズ
商品戦略企画部部長代理の鈴木宏幸氏

 新しいLEDバックライトを開発した理由について、商品戦略企画部部長代理の鈴木宏幸氏は、直下型やエッジ型の利点と問題点を説明した後、「どうしてもパネルモジュールに手を加えないと我々の考える画質は手に入らないと考えた。そこで、そこでバックライトに自社開発のものを投入する事を決定。液晶モジュールは購入してきて、我々の工場でバックライトを作り、貼りあわせている」という。

 この仕組と、それが生み出す高画質の消費者へのアピール方法として、山内氏は「コントラスト比などの数字はあえて出さず、とにかく映像を観てもらうことで体験して欲しいと考えている。そして、他社のLEDと構造が違うことをしっかり説明していきたい」という。

 今後の製品へのS-LEDの採用については、「テレビが大型になればなるほど、S-LEDの利点が活きるため、まずは中型サイズから、それ以上のサイズを中心に展開していく」という。また、3D表示に対応したテレビについては既に公表されているように「今年度中には投入していく」と説明した。


(2010年 9月 9日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]