クリプトン、ブックシェルフの中核モデル「KX-5」
-ペア約47万円。鉄と木のハイブリッドスタンドも
2ウェイの密閉型ブックシェルフ「KX-5」 |
クリプトンは、スピーカー「ヴィゴーレ」KXシリーズの新モデルとして、2ウェイの密閉型ブックシェルフ「KX-5」を10月下旬に発売する。価格はペアで472,500円。
さらに、木と鉄を組み合わせた、ハイブリッド・スピーカースタンド「SD-5」も10月下旬に発売する。価格はペアで73,500円。
■ KX-5
2ウェイの密閉型ブックシェルフ「KX-5」 |
ハイエンドのフロア型「KX-100P」と、ブックシェルフ「KX-3」シリーズの間に位置する、中核モデルとして開発されたもの。木目が美しい密閉型エンクロージャを採用した、2ウェイ2スピーカーシステムとなっている。
素材に南米産のパープルウッドを採用したのが特徴。固く、密度が高い特徴があるものの、数の減少により、輸出が禁止されたブラジリアン・ローズウッドに代わる木材として注目されるもので、高級家具や楽器にも採用されている。
針葉樹系高密度18mm厚パーチクルボードで密閉型エンクロージャーを構成し、パープルウッドつき板を6面に使用。木目をデザインに活かすため、ポリウレタンを約5層塗装して仕上げている。
南米産のパープルウッドを使用。木目を活かしたデザインで、仕上げはポリウレタンで約5層塗装 | KX-3シリーズとの背面比較。KX-5は背面に0.3mm厚のパープルウッドつき板を使い、フラットな仕上げになっている事がわかる。「大きな木材からスピーカーをくりぬいて作り上げたようなイメージを目標とした」という |
ユニットは、KX-1000Pで開発されたツイータやウーファの技術を取り入れているのが特徴。同社スピーカーの特徴でもある、希少金属のアルニコマグネットを壷型にした磁気回路を採用。ツイータは砲弾型イコライザー付のピュアシルク・リングダイアフラム・ツィータで、サイズは35mm径。同社が展開している高音質音楽配信にも対応するため、50kHzまでの超高域再生能力を持っている。
ウーファは同社スピーカーでは定番となる、クルトミューラーコーン紙を使ったもので、低域共振周波数(fo)を35Hzとした170mmウーファを採用。能率を高め、大きな駆動力と大振幅時の磁気回路はずれに対応した、歪みの少ないユニットになっているという。ボイスコイルはエッジワイズのロングトラベルボイスコイル。線積率を上げ、低域のリニアリティを改善している。
ツイータは砲弾型イコライザー付のピュアシルク・リングダイアフラム・ツィータ | ウーファの振動版は、お馴染みクルトミューラーコーン |
吸音材にはウールの低密度フェルトと、同社製吸音材「ミスティックホワイト」をハイブリッドで使用。ネットワークには、歪を極小まで抑えるため、抵抗値の低い直径1.2mmの空芯コイル、ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサーなどのネットワーク素子を採用。全ての内部配線材に、インアクースティック(旧モニター社)製OFC線を採用するなど、厳選した部品を使用。素子間の結線はハンダフリーのかしめ方式としている。
サランネットにもこだわっており、KX-1000Pや漆のKX-3Uシリーズで採用している、譽田屋源兵衛製・西陣紗織の絹のネットを採用。透過特性が高く、ツィーターの高域特性を損なわないという。なお、音決めはサランネットを装着した状態で行なわれている。
KX-3シリーズのサランネット。市場の多くのスピーカーで使われているジャージのネットだ | KX-5やKX-1000P、漆のKX-3Uシリーズに使われているのが譽田屋源兵衛製・西陣紗織の絹のネット(左)。織り方で生まれる模様がついているのがわかる |
スピーカーターミナルはバイワイヤリング対応。ショートワイヤーも付属する。定格入力は50W、最大入力は150W。出力音圧レベルは87dB/m。インピーダンスは6Ω。クロスオーバー周波数は3,500Hz。全体の再生周波数帯域は35Hz~50kHz。外形寸法は224×319×380mm(幅×奥行き×高さ)。重量は10.8Kg。
背面のスピーカーターミナル | 木目を活かしたデザインになっている |
■ SD-5
前述のKX-5や、KX-3Uシリーズなどにデザインマッチする、汎用性のあるスピーカースタンド。
KX-5と組み合わせたところ |
最大の特徴は、ホワイトアッシュムク材の木柱の中心に、鉄の柱が貫通したハイブリッド仕様になっている事。木製の響きの良さと、スピーカーをしっかり支える剛性の高い鉄柱という2つの素材の良さを兼ね備えているという。
また、これを支えるボードは、内部に鉄球を充填したオーディオボードとなっており、スタンドの振動が床に伝わるのを防いでいる。高さは620mm。スピーカー設置部のサイズは200×260×21mm(幅×奥行き×高さ)、ベース部は249×325×47mm(同)。重量は10kg
木柱の中心に空間が設けられている | その内部空間に鉄の柱が入っている | ベースのオーディオボード |
■ KX-5&SD-5を組み合わせて聴いてみる
KX-3シリーズと比べてエンクロージャがやや大きくなり、容積がアップしたことから、低域の沈み込みや量感の豊かさが向上。ブックシェルフながら、胸やお腹を圧迫するようなズシン、ズズンと沈み込む低域が味わえる。
24bit/96kHzなどの高音質配信楽曲で試聴すると、その低域がむやみに膨らまないおかげで、ベースの弦の描写などが精密に描写されている事がわかる。バスレフ型スピーカーとは一味違う“質の良い”低域であり、密閉型と高音質配信の相性の良さを感じさせる。
エンクロージャが若干サイズアップしている |
高域の伸びの良さも特筆すべき点で、KX-1000Pに通じるクリアさがある。同時にブックシェルフならではの広く精密な音場も特徴的。高域は抜けが良いと同時に、かすかな艶が感じられ、音量が高くても不快には感じない。サランネットを外すと、高域にかすかな荒れとキツさが感じられる。
製品版のスタンドと、開発段階で木のみで作られたスタンドを比較 |
通常のスピーカーはネットを外すと音質が向上するものだが、西陣紗織の絹サランネットの場合は、取り付けた事で高域がマスキングされる事がなく、逆に艶をわずかに与え、再生音の品位を高める効果がある。「ネットを付けたまま聴きたい」と思わせる、珍しいスピーカーとも言えるだろう。
なお、試聴用のスタンドはSD-5だが、開発段階で作られたという“内部に鉄柱が入っていない、木のみのSD-5”と比較試聴ができた。違いは歴然で、アコースティックベースの音が出た瞬間に最低音の沈み込みや、伸びた低音の締まり具合、低い音の描写の細かさなどで“鉄柱&木柱ハイブリッド”の方に軍配が上がる。木のみでは低域が膨らんで明瞭度が下がり、地を這うような最低音も落ちきらない。ハイブリッド仕様の利点を確かに感じる事ができた。
(2010年 9月 17日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]