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三菱、薄型の「レーザーバックライト液晶テレビ」を開発

−'11年度製品化へ。赤色レーザー採用で色域を拡張


 三菱電機は16日、2010年度の研究開発成果の披露会を開催した。その中で、液晶テレビの新技術として光源に赤色レーザーとシアンLEDを組み合わせた「レーザーバックライト液晶テレビ」を開発したと発表。2011年度内の製品化を目指す。

新開発のレーザーバックライト液晶テレビ試作機。バックライト部以外は現行の「LCD-46MDR」とほぼ共通となっている

 光源のRGBのうち、R(赤)にレーザーを、G(緑)/B(青)には新開発のシアン(青緑)LEDを採用した液晶テレビ。特に人の目で識別しやすい赤色に純度の高いレーザーを採用したことで、白色LEDバックライト搭載の現行モデル「LCD-46MDR」に比べて色再現範囲を約1.3倍に拡大した。xvYCCの色再現もサポートしている。

 さらに、輝度やコントラストなどを保ったまま、本体の奥行きも従来品と同程度を維持したことも特徴。消費電力も従来品同等としている。3Dテレビにもこの技術を採用できる。

 赤色レーザーのモジュールは既に製品化されているもので、出力300mW、波長は638nm。DVDに使われる赤色レーザー(650nm)に比べ、やや波長を短くしてディスプレイに最適化。彩度の高い原色の再現と、肌色のような淡い色あいの自然な表現を両立させた。また、これまでのレーザー光源のリアプロテレビで培った光源制御技術も応用されている。緑/青色については、青色LEDに緑の蛍光体を組み合わせてシアン色の発光を行なっている。

白色LEDバックライトモデルとの色域比較 赤色レーザーモジュールは既発売の同社製品を使用 シアン色LEDの構成

 製品化に向けては、拡散角が大きく異なるLEDとレーザーの組み合わせが課題となっていたが、2種の光源で均一に液晶パネルを照射する独自の光学技術を開発。発散角が狭いレーザーを、LEDと同じ導光版を通して照射すると不均一な光になり、画面に色ムラが発生する。そのため、レーザー光源の照度分布を最適化することによりパネルを均一に照射する独自の光学系を開発。色の鮮やかさを損なわず、色ムラの無い高画質を実現したという。

 なお、今回の試作機では従来モデルと同じ液晶パネルを使用。独自のカラーマネジメント技術の「ナチュラルカラーマトリックス」を適用し、パネルの色特性を補正。色成分と輝度成分を分離して画像信号をマトリクス演算することで、赤/緑/青の色調整に加え、中間色である赤紫/黄色/青緑についても独立して制御。液晶パネルの特性に合った色再現を可能にした。

左側に置かれているのがレーザーバックライト液晶テレビ試作機、右側が現行モデル「LCD-46MDR」。写真では分かりづらいが、現行品では朱色に近い色合いのものが、試作機ではより深い赤が表現されていた 本体の薄さも従来品と同等を維持

 これまでの同社テレビの高画質化に向けた取り組みとしては、赤/緑/青の3原色に加えシアン/マゼンタ/イエローのカラーフィルタを搭載した「6原色テレビ」('06年に米国で製品化)のような“多原色化”というアプローチがあったが、原色の純度が低いと色再現範囲は大幅に広がらないという問題があった。これを受けて、3原色の純度を向上するため、RGBレーザーを使用したリアプロテレビを米国('08年)や日本('10年)で製品化した。今回、液晶テレビをさらに色鮮やかにする方法として新技術が開発された。

 今回のレーザーバックライト液晶テレビが製品化される際、当初は高付加価値帯のモデルとして提案する予定。今後も、製品化に向けて異種光源の最適な配置を追求し、照射方式の改善を進めるとしている。



■ サイネージなどの新技術も展示

 説明会では、街頭やビル内などで、複数のディスプレイに同時表示する映像技術も紹介。複数のディスプレイに表示する際、これまでは各ディスプレイのコンテンツを個別に調整する必要があったが、これらをまとめて編集し、ディスプレイ間でズレの無い表示を可能にする編集システムを開発した。

 新システムでは、ディスプレイの設置位置や面数を自由に設定してコンテンツを編集/プレビューできるマルチ画面コンテンツ編集機能を搭載。離れたディスプレイ間でも同期して表示できる。用途としては、公共施設や、鉄道・空港の運行情報表示システムなどへの採用を想定している。

デジタルサイネージシステムのデモ。地下鉄などの窓の外に表示される映像のイメージ 編集/プレビュー用のPC画面 14面のディスプレイを連動させるデモも

 その他にも、家電のユニバーサルデザイン適用への取り組みとして、液晶テレビのEPGの見やすさや、IHクッキングヒーターのボタンの使いやすさなどを紹介する展示や、携帯電話の通話内容の暗号化として量子鍵配送を用いたセキュリティ技術などのコーナーが用意された。

「ユニバーサルデザイン」紹介コーナーでの液晶テレビのEPG表示。(文字サイズを最大にしたとき) 「三菱らしさ」を表現するためのツールという「デザインコンパスマップ」の適用事例 産業用ロボットなどのコントローラ基盤技術。生産設備の海外移転などの際に、過去の制御ソフトウェア資産を継承できることが特徴
携帯電話向けの量子鍵配送を用いた技術。使い捨ての暗号鍵を使うことで、海外との通話などでも内容の暗号化の解読リスクを低減する。中央にあるのが量子鍵配送装置で、今後は小型化を目指す デモに使われたスマートフォン試作機 電話をクレードルに装着し、暗号鍵を転送する
山西健一郎社長

 三菱電機の山西健一郎社長は、2010年度の業績について「円高の急激な進行やグローバル競争の激化などもあったが、これまでの競争力/経営体質/財務体質強化が実を結び、前年度比で大幅な増収増益が達成できる見込み」と説明。今後の成長が見込める環境・エネルギー分野や新興国の社会インフラなどを中心に、今後も開発を進めていく姿勢を示した。

 同社は2011年2月で創業90周年を迎えた。80周年の2001年から、キャッチフレーズとして「Changes for the Better」が使われているが、新たに「eco changes」も掲げ、100周年となる2021年に向け、低炭素/循環型/生物多様性保全のためのビジョンを提示。山西氏は「社会環境や経営状況、市場は大きく様変わりしているが、これまで“宇宙から家庭まで”技術を通じて社会への貢献を進めてきた。これからは、“100周年に向けた10年のスタートの年”と位置付け、環境先進企業として今後の新しい世界を切り開いていきたい」と語った。

100周年に向けた取り組みの説明 スマートグリッドや太陽光発電など、エネルギー/環境に関する展示が充実していた 発表・展示された技術の一覧


(2011年 2月 16日)

[ AV Watch編集部 中林暁]