ソニー、家庭用初の4K SXRDプロジェクタ「VPL-VW1000ES」

-168万円。4Kアップスケール用超解像LSI搭載。3D対応


4K SXRDプロジェクタ「VPL-VW1000ES」

 ソニーは3日、家庭用初となる4K SXRDプロジェクタ「VPL-VW1000ES」を国内発表した。12月下旬の発売で、価格は168万円。

 10月4日から8日まで、幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2011のソニーブースで投写デモが行なわれるほか、銀座と大阪で先行体験会も開催。銀座・ソニーショールームでは10月22日~10月23日、ソニーストア 大阪では11月12日~11月13日までの日程で実施される。

 新開発された、4Kディスプレイデバイスとしては世界最小の0.74型4K SXRDパネルを搭載したプロジェクタ。業務用デジタルシネマプロジェクタに搭載されている4K SXRDパネル(1.55型)で培ったノウハウをベースに開発されたもので、解像度は4,096×2,160ドット。HDTVの4倍の解像度を持つ。画素間スペースは0.2μm。開口率は90%。階調特性は12bit、フレームレートは120Hz。


シアター用4Kプロジェクタと比べ、大幅な小型化を実現した筐体側面背面。前面吸気、背面排気機構を採用している
Kディスプレイデバイスとしては世界最小の0.74型4K SXRDパネル

 ホームシアタープロジェクタ向けに、画素ピッチを従来の7μmから4μmに微細化。微細化するために、シリコン駆動基板(画素駆動回路/画素電極形成プロセス)を新開発した。さらに、シリコン駆動基板表面を平坦化することで、液晶層の厚みを均一化。表示輝度にムラが少なく高コントラストな画質を実現したという。

 また、4μmの画素ピッチでは、環境温度による部材の膨張などでパネルの位置関係が変化すると、映像に問題が出る。そこで、材料と形状を最適化した新たなパッケージを開発。赤、緑、青の3枚パネルの位置合わせを正確に保ちつつ、熱伝導性の良い材料を使うことで、冷却性能を向上させ、従来よりも輝度を上げても解像感と色再現性を高品位に維持。パネル本来の特性を引き出せるようになったという。

 なお、画素が微細で目立たないことから、ソニーでは「スクリーンの高さの約1.5倍まで近づける」としており、120インチの16:9画面を投写する場合、約2.3mまで近づいて鑑賞できるという。この場合では、「スクリーンに対する視野角は60度になり、頭を振らずに視界いっぱいに映像が入ることになり、人間工学的見地からも理想的な位置で視聴でき、映像への没入感を生み出す」(ソニー)という。


レンズ部分。周囲の金色の部分から吸気する画素が目立たないことから、近寄って鑑賞できる画素ずらしによる4Kとのクオリティの違いをアピール。画素ずらしではラインが太くなってしまうなどの問題がある


■4K用超解像処理LSIを搭載

4K映像表示デバイス向けデータベース型超解像処理LSI
ソニーの総合力を活かして開発したという

 さらに、新開発の「4K映像表示デバイス向けデータベース型超解像処理LSI」も搭載。フルHD解像度の映像を、高精細でリアルな4K映像に変換し、投写できるという。4Kカメラで撮影された素材やCGなどに対しても処理を行ない、画質や色の再現を4K特性に最適化させ、より高品位な映像に変換するとしている。

 3D映像の投写にも対応しており、フルHDの3D映像を前述のLSIで処理し、4K解像度の3D映像にアップコンバートしてとして投写可能。3Dメガネ「TDG-PJ1」も2個付属している。同期用のエミッタはプロジェクタに搭載している。

 「4K映像表示デバイス向けデータベース型超解像処理LSI」の入力対応解像度は1080pと、4,096×2,160p、3,840×2,160p。

 このLISの特徴は、データベース型超解像技術のパターン分類を、学習型へ進化させた事にある。ソニーではこれまで、リアルタイムに映像を解析し、パターンを検出、その映像ソースをデータベースと照合することで、様々な映像に最適な超解像処理を施し、映像本来のディテールを再現するという「データベース型超解像技術」を手掛けてきた。

 新開発のLSIでは、このパターン分類手法を学習型へと進化させている。これにより、多次元の特徴量のより効率的なパターン分類や、入力信号の特性によって動的に変化するパターン分類を実現。入力映像に合わせ、より最適な超解像処理を可能にしたという。

 さらに、入力画像の品位(ノイズ量/信号帯域など)を計測。その結果に基づき、超解像処理とノイズ除去処理を自動的に制御する事も可能にし、高画質化を実現。ノイズ量の程度、信号帯域の程度によって最適な変換テーブルをリアルタイムに切り替えている。

 加えて、表示デバイスの光学特性に合わせた高画質化処理も可能にしており、プロジェクタや液晶テレビなど、表示機器それぞれに応じて専用の変換テーブルを用意。プロジェクタでは、光学特性を含めた最適化を行なうことで、高画質化を実現したという。




■4KソースとしてPS3も活用

 4Kソースの1つとして、プレイステーション3用も活用する。デジタルカメラで撮影した4Kの静止画を、PS3からプロジェクタに出力するためのPS3用アプリが開発されており、2012年初を目処に提供するという。

 プロジェクタの入力端子はHDMI×2、コンポーネント×1、コンポーネント兼用アナログRGB(D-Sub 15ピン)を備え、トリガー端子や、RS-232Cのリモート端子、Ethernet端子、3D同期用のシンクロ端子などを備えている。

 HDMI入力を使う事で、1080/60p、1080/50p、1080/24p、3,840x2,160/24p、3,840x2,160/25p、3,840x2,160/30p、4,096x2,160/24pの信号に対応する。コンピューターの信号は1,920×1,080ドットまでの対応となる。ビデオ信号は480/60i、576/50i、480/60p、576/50p、720/60p、720/50p、1080/60i、1080/50iをサポートする。



■レンズなど、その他の特徴

 レンズは4K解像度専用設計の「ARC-F」レンズを搭載。フォーカス時に2つのレンズ群を稼働させることで、中心部から周辺部まで、また近距離投写時から遠距離投写時まで、安定した結像性能を達成したという。レンズには特殊低分散硝材を使用。2.1倍電動ズームレンズとなる。レンズシフトも可能で、上下方向80%、左右方向31%の投写画面移動ができる。

 光源は330Wの高圧水銀ランプを採用。輝度は2,000ANSIルーメンで、60~300型の投写に対応。

 映像の輝度信号に合わせて、光量を自動的に最適化する光学絞りと、ピーク白と暗部の階調表現を最適化する複合技術「アドバンスドアイリス3」を採用し、ダイナミックレンジを拡大。ダイナミックコントラスト100万:1を実現している。

 新カラーフィルタの搭載により、色再現域も拡大。デジタルシネマと同じ、DCI(デジタルシネマ・イニシアティブ)色再現域を実現した。信号処理技術の組み合わせにより、Adobe RGBをはじめとする各種モードへの切り替えも可能。

 ファンノイズは約22dB。消費電力は480W(待機時0.3W、スタンバイモード時4W)。外形寸法は520×640×200mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約20kg。天吊用金具は「PSS-H10」(80,850円)を、交換ランプは「LMPH330」(52,500円)を使用する。

入力端子は側面に備えている天面にランプ交換用の扉を装備。天吊した場合は、下から扉をあけてランプ交換ができる


■「家庭でも4Kエンターテイメントを」

 業務執行役員 SVPの根本章二氏は、CineAltaカメラや4Kモニタ、デジタルシネマ用の4K上映システムなど、4K映像の撮影やポストプロダクション、劇場での投写に至るまでの全てのソリューションを、ソニーが自社で開発している事を紹介。その上で、「家庭でも、4Kの映像エンターテイメントを楽しんでいる環境を創造・整理していきたい。それが、現在4Kに取り組んでいる意義であり、目的でもある」と説明。

業務執行役員 SVPの根本章二氏プロフェッショナルソリューション事業本部 ビジュアルプレゼンテーション・ソリューション事業部の長谷川紀生事業部長

 プロフェッショナルソリューション事業本部 ビジュアルプレゼンテーション・ソリューション事業部の長谷川紀生事業部長は、ターゲットユーザーとして「高品位な映像を求めている人。また、PS3で静止画を4Kのネイティブで出力するアプリを年明けにも準備する予定で、そういったものをキッカケとして、コンシューマで4Kの素晴らしさを体験して欲しい。さらに、アップコンバートされた4Kの映像も観ていただき、“4Kが我々の将来なんだ”と感じていただきたい。そして、4Kワールドの展開を、我々と一緒に進めていきたいと考えている」と語り、コンシューマにおける4K普及への起爆剤としての役割にも期待をかける。

 また、4Kbコンテンツについて根本氏は、「オリンピックやワールドカップなど、国際的なスポーツの大会があるが、それに合わせて我々は、放送業界のお客様に向けて、4Kのコンテンツを作るワークフローを準備・提案している。そうした取組により、放送業界から4kのコンテンツが我々にデリバーされる環境も作っていきたい」と語った。


(2011年 10月 3日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]