【2011東京インターナショナルオーディオショウレポート 1】

-リンの「DSM」登場。エソテリックのUSB対応SACDなど


メインゲート

 日本インターナショナルオーディオ協議会(IASJ)が主催する、オーディオ機器の展示/試聴イベント「2011東京インターナショナルオーディオショウ」が11月3日から5日まで、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催されている。入場は無料。

 国内外のオーディオ機器を展示するイベント。各メーカーが防音処理を施した個室を用意し、普段気軽に試聴できないハイエンド機器からミドルクラスのモデルまで、様々な機器を一度に体験できるのが特徴となっている。


 



■リン

 リンジャパンブースの注目は、ネットワークオーディオの新シリーズ「DSM」。その第1弾として登場予定の、ネットワークプレーヤー機能とプリアンプ機能を備えた「KLIMAX DSM」が参考展示されている。試作機で、残念ながら音は聴くことはできないが、内部基盤などを見る事ができる。10月の発表時は、11月発売予定とされていたが「少し遅れている」とのことで、2012年初頭の発売が見込まれる。価格は252万円。

 そのほかにも、同じくネットワークプレーヤ&プリの「AKURATE DSM」も89万2,500円でラインナップ予定。また、現在発売されている「MAJIK DS-I」は、「MAJIK DSM」に名称変更され、DSMシリーズのモデルに位置付けられる。仕様や機能に変更は無く、価格は47万2,500円。従来のDSシリーズ、プリアンプのラインナップは併売される。

 DSMシリーズの特徴は、ネットワーク機能を強化し、iTunesやSpotify、iPlayer、YouTube、インターネットラジオなど、様々なネットワーク経由での再生に対応すること。さらに、プリアンプ機能も備えているため(MAJIK DSMはプリメイン)、Blu-rayやDVDなどとも連携でき、HDMI入力も備えている。ただし、映像系の機能は無く、あくまでピュアオーディオプレーヤー。ドルビーデジタルなどのデコーダは備えておらず、BDのハイビット/ハイサンプリングなPCMなどを入力する。

参考展示されたKLIMAX DSMKLIMAX DSMの内部入出力端子部。HDMI入力を3系統備えている

 ユニークな点は、「AirPlayのような機能を搭載する」(リン)こと。Appleのものではなく、あくまでリンの技術を使ってAirPlayの対応製品をソースとし、ネットワークを介して高音質な再生を行なうものになる予定だという。

 実現時期については「ハードだけ先行で販売し、ソフトウェアのアップデートで後から対応するという事もありえる」とのことで、ソフトウェアアップデートでサポートできる機能に関しては、従来のDSシリーズでもアップデートで利用できるようになるという。

 参考展示された「KLIMAX DSM」は、HDMI入力×3、同軸デジタル×2、光デジタル×1、バランス入力×1を装備。出力はHDMI×1、バランス×1、アンバランス×1を装備。

 また、別ブースではスピーカーの「KLIMAX 350」をメインにした、ハイエンドシステムの音も試聴できる。

既存のDSシリーズも展示「KLIMAX 350」をメインにしたハイエンドシステムのデモ(右)も行なわれた

 



■エソテリック

 エソテリックのブースでは、新製品3モデルを参考展示。SACDプレーヤー「K-05」は、12月の発売が予定されており、予定価格は577,500円。独自のVRDS-NEO VMK-5トランスポートメカニズムを採用したSACD/CDプレーヤー。

 DACとして、旭化成エレクトロニクスの「AK4399」を、2回路、パラレルのディファレンシャル出力で搭載。全体もアナログオーディオ回路を左右独立経路で配置するデュアルモノ構成になっている。

 さらに、24bit/192kHzまでサポートするUSB DAC機能も装備。アシンクロナス伝送にも対応する。デジタル入力は光と同軸デジタルも装備。高精度±3ppmのVCXOクロックも装備。クロックシンク機能も備え、新たに10MHz/22.5792MHzマスタークロックもサポートする。

 DDコンバート機能も備えており、PCMをDSDにコンバートする機能も用意。2倍や4倍のアップコンバート機能も備えている。

エソテリックのブース。タンノイやアヴァンギャルドのハイエインドスピーカーが楽しめるUSB DAC機能も備えたSACDプレーヤー「K-05」

 2012年2月頃の発売を予定している「D-07X」は、デュアルモノDAC「D-07」をブラッシュアップしたDAC。DACに旭化成エレクトロニクスの「AK4392」を、2回路、パラレルのディファレンシャル出力で搭載。全体もアナログオーディオ回路を左右独立経路で配置するデュアルモノ構成になっている。

 24bit/192kHz対応、アシンクロナス伝送にも対応したUSB入力に加え、光デジタル×1、同軸デジタル×2入力も装備。XLRのデジタル入力(ES-LINK)を使い、SACDのDSD信号を入力・アナログ変換する事もできる。

 DDコンバータ機能や4種類のデジタルフィルタなどを装備。アナログ変換以降の信号をホット/コールドで完全独立したフルバランスXLR出力や、K-01を踏襲したパラレルバッファ構成のRCA出力などを備えている。

 ヘッドフォンアンプも内蔵し、前面にヘッドフォン出力を備えている。クロックシンク機能は10MHz/22.5792MHzマスタークロックに対応。価格は未定だが「30万円程度のイメージ」とのこと。

 来年3月頃の発売が予定されているのは、マスタークロックジェネレータの「G-02」。安定度の高いOCXOタイプの高精度水晶発振器(周波数精度±0.1ppm)を採用。ワードクロックだけでなく、10MHzや22.5792MHzのマスタークロック出力にも対応している。

 ほかにもブースでは、4月から発売されているステレオパワーアンプ「A-02」や、「P-02」「D-02」などの新製品も一挙に展示されている。

USB入力も備えたDACの新モデル「D-07X」マスタークロックジェネレータの「G-02」ステレオパワーアンプ「A-02」

 



■タイムロード

 「ヘッドフォン祭」でも展示されていた、ULTRASONEの新ヘッドフォン「Signature PRO」(99,000円)が展示されているほか、11月末に発売を予定している、APRIL MUSICのDACプリ兼ヘッドフォンアンプ「EXIMUS DP1」を展示している。価格は252,000円。

 DP1は、24bit/192kHz対応のUSB DAC機能を備え、USBレシーバには、既に発売している「Stello U3」と同じ、32bit 500MIPSのカスタムXMOSを採用。高精度なインターナルクロックに同期させ、SPDIFフォーマットに変換する。クロックは44.1kHzと48kHzそれぞれの系統に、個別のTCXO(温度補償水晶発振器)を採用。ジッタを低減している。アナログ回路は完全バランス設計。

ULTRASONEの新ヘッドフォン「Signature PRO」11月末発売予定の、APRIL MUSICのDACプリ兼ヘッドフォンアンプ「EXIMUS DP1」PCとUSB接続したデモ環境も用意

 デジタル入力はUSB×1、I2S×1、同軸×2、XLR(AES/EBU)×1、光デジタル×1。アナログ入力もRCA×1、ステレオミニ×1を搭載。出力はRCA×1、XLR×1、標準ヘッドフォン出力を装備。なお、USB DAC機能はMac OS X Lionであればドライバは不要、Windows XP/Vista/7では付属のドライバを使用する。

 ほかにも、USB入力を備え、24bit/192kHzまで対応する英Chord ElectronicsのDAC「QBD76HD」などを使ったシステムで、Raidho Acousticのスピーカー・Ayraシリーズをドライブするデモなどが行なわれている。

Raidho Acousticのスピーカーを使った試聴デモの様子

 



■今井商事

中央段の左側にあるのが「マスターバージョン 192 DSD M」

 今井商事のブースでは、米マイテック・デジタル製のDAC「192 DSD」を参考展示している。「おそらく世界初」という、PCからUSB経由でDSDデータを再生できるDACで、プロ向けとしてSDIF3デジタル入力を備えた「マスターバージョン 192 DSD M」(231,000円予定)と、SDIF3の代わりにRCAのアナログ入力を備え、ヘッドフォンプリとしても使える「プリバージョン 192 DSD P」の2種類を用意。

 DSDの信号は2.8MHzまで対応しており、5.6MHzなども対応予定。PC側の再生ソフトはHQ Playerを別途購入する必要がある。

 なお、来春にはマルチチャンネルに対応したUSB入力と、EMMLab 3STリンクを備えた、8×192 ADDAコンバータの新バージョンも発売予定だという。


米マイテック・デジタル製のDAC。RCAのアナログ入力を備え、ヘッドフォンプリとしても使える「プリバージョン 192 DSD P」「192 DSD P」の背面PC側の再生ソフトはHQ Playerを使用

 ほかにも、Burson Audioのヘッドフォンアンプと、AUDEZ'Eの「LCD-2」や、CANORのヘッドフォンアンプ「TP 10」とゼンハイザーの「HD850」を組み合わせたヘッドフォン試聴コーナーも用意された

ヘッドフォン試聴コーナーも用意された

 



■その他

 フォステクスのブースでは、12月上旬の発売が予定されているGシリーズの新スピーカー、フロア型の「G1302MG」と、ブックシェルフの「G1300MG」が注目を集めている。1台の価格は「G1302MG」が257,000円、「G1300MG」が162,000円。

 フロア型は3ウェイ3スピーカーのバスレフ型。ブックシェルフは2ウェイ2スピーカーのバスレフ。どちらのモデルも、ウーファに純度99.9%の純マグネシウムを使った、HR振動板を採用しているのが特徴。

 テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)のブースでは、12月下旬に発売するReferenceシリーズのプリアンプ「TAD-C600」と、11月中旬に発売する「Evolutionシリーズ」のスリムなフロア型スピーカー「Evolution one TAD-E1-WN」を組み合わせたデモを実施。人気を集めている。

フォステクスの新スピーカー。フロア型の「G1302MG」と、ブックシェルフの「G1300MG」ラックの一番上にあるのがTADのプリアンプ「TAD-C600」。ラックの一番下にあるのが専用電源部。同じくTADの新スピーカー「Evolution one TAD-E1-WN」(写真右側)

 アキュフェーズブースでは、フラッグシップSACDトランスポート「DP-900」や、純A級のステレオパワーアンプ「A-46」、クリーン電源の新モデル「PS-1220」、マルチアンプ方式でスピーカーをドライブするためのデジタル・チャンネル・デバイダ「DF-55」など、新機種を一気に展示。

アキュフェーズのフラッグシップSACDトランスポート「DP-900」アキュフェーズ「DP-900」と組み合わせて利用するデジタルプロセッサー。MDSD方式のDSD信号変換に対応するアキュフェーズの純A級のステレオパワーアンプ「A-46」
アキュフェーズのクリーン電源の新モデル「PS-1220」アキュフェーズのデジタル・チャンネル・デバイダ「DF-55」エレクトリのブースでは、ATCの年内発売予定のフロア型スピーカーが参考展示された

(2011年 11月 4日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]