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パナソニック、'11年度は過去最悪7,800億円の赤字見通し

−「TVの赤字が他の黒字を相殺」。20型4Kは'12年第4四半期


大坪文雄社長

 パナソニックは、2011年度通期業績見通しで、最終損失が7,800億円の大幅な赤字になることを発表。それに伴い、同社・大坪文雄社長が都内で会見し、構造改革への取り組みなどについて言及した。

 大坪社長は、「巨額の赤字を計上することとなり、社会に対する責任の重さを痛感している」と語り、「パナソニックは、2018年の環境革新企業に向けたグループの歴史上、最大のトランスフォーメーションに取り組んでいる。大きな痛みを伴う改革を行なう中で、急激な円高や震災、洪水被害が加わり、厳しい決算状況になった。新たな事業モデルを作りあげ、持続的成長への礎を築くとともに、収益構造の変革を進め、2012年度には、なんとしてでも業績のV字回復を果たす」と意欲をみせた。

 社長続投に対する質問についても回答。「2018年の環境革新企業にトランスフォーメーションをし、パナソニック電工、三洋電機を含めた3社が一緒になって、新たな企業に向かって船出をしようとしている段階にある。その船出がスムーズに進むように、我々が課題認識しているものを、今回すべて出し切り、新たな方向に進んでいくということが、7,800億円の赤字の意味である。従って、一番大切なことは来年度以降、収益をしっかりと回復して、目指すべき方向に全社員一丸となって進んでいくことに尽きる」と語り、続投に意欲をみせた。


 



■TVや半導体の赤字が、他の黒字を相殺

 大坪社長は説明のなかで、業績回復への具体的な取り組みとして、「課題事業の再建と成長戦略の加速」と「全社をあげた経営体質の徹底強化」の2点をあげ、それぞれの施策について触れた。

 課題事業の再建と成長戦略においては、テレビや半導体関連の赤字が、同社が抱える数多くの黒字事業の収益を相殺しているとし、「高収益事業の利益がしっかりと残るようにしなくてはならない」とした。

課題事業の再建と成長戦略

 テレビ、半導体事業の黒字化に加えて、白物家電事業の海外展開や、環境・エナジーなどの個別事業の成長による増益、まるごとソリューションにおいて、単品、揃える・つなげる、メンテナンス・サービスで3度稼ぐ体制で展開することを挙げた。

 テレビ事業の黒字化については、2011年10月31日の構造改革で掲げた液晶パネル事業の生産拠点統合へのスリム化と、非テレビ用途への展開、OEMやパネル調達などで外部企業を活用するのに加えて、サイズを限定しないフルライン化に取り組んでいることや、プラズマディスプレイパネルでも同様に生産拠点を統合するなどの適正規模へのスリム化、および収益力がある65型以上の大画面テレビの強化などに触れた。

 「液晶テレビでは、IPSαパネルの超・省エネ、全方向広視野角の特徴を生かして新たな用途を開拓。すでに、タブレットや医療用モニターなどの用途で、複数のグローバル企業で採用が決定している。引き続き受注獲得に取り組んでおり、2012年度には、液晶パネルにおける非テレビ用途の比率を、一気に5割以上に高める」という。

 また、2012 International CESのパナソニックブースで展示した20型の4K2KのIPSαパネルは2012年第4四半期から販売を開始することを明らかにした。

テレビ事業の構造改革の進捗状況 20型の4K2KのIPSαパネルは2012年第4四半期から販売

 大坪社長は、「テレビ事業は、成長が無くなったとは思っていない。明確にいえることは、2000年代中盤以降、各社がテレビのパネル生産に大量の投資を行ない、供給が過剰になり、結果としてグローバルにコモディティ化したこと。テレビ事業に多くのメーカーが一気に参入した反動が、今出ている。そこでテレビという商品のあり方を変えて、テレビをどう発展させるかを考える必要がある。そのひとつが、民生領域に特化せずにBtoBで展開するということである」と語る。

 さらに、「韓国メーカーの技術進化、デザインの先進性といった要因に加えて、ウォン安、円高といった環境が、価格政策、製品政策に大きく影響した。また、プラズマパネルも、液晶パネルも、すべて自前主義でやってきたことは最大の要因である。2006年頃に工場への投資を決定したときにはテレビ事業は収益を上げていたが、工場が動き出そうとする時にリーマンショックが起こり、そのあとに工場が動き出した。こうした経験から、キーデバイスでも、自前主義をどの程度に留めるのかということに、慎重にあるべきだと考えている」などと語った。

 



■白物は好調。理美容製品や車載用電池にも注力

 白物家電事業においては、海外で2桁成長を遂げていることを示しながら、「海外において、モノづくりの基盤を構築できたことが大きい。環境コア技術と、共通プラットフォームの採用、世界10カ所の生活研究拠点を活用することで、現地密着の製品企画を強化することができている。インドのエアコンや、インドネシアの冷蔵庫など、ボリュームゾーンを形成する製品を次々と生み出し、OEMの活用により、ラインアップを大幅に強化できている」などと自己評価。

 エコナビ製品の世界展開を2011年度から加速しており、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の3製品で、80カ国以上に、約230機種のエコナビ製品を展開していること、韓国勢が持たない理美容製品での世界展開を加速していること、ソーラー事業では、2011年度には前年比1.5倍の成長を遂げ、収益を伴った高成長を維持していることを強調。創蓄システムと家電とを連携させたシステムを、今年秋にも発売する方針などを明らかにした。

白物は海外でさらなる増販を目指す
車載電池事業への取り組みも加速している

 また、車載用電池事業においては、米テスラ社の「モデルS」の供給のほか、トヨタの「プリウスPHV」への供給をはじめとしてグローバル主要5社で10車種へ採用されたことなどを紹介。2011年度は前年比5倍以上の成長となっていることを示した。

 さらに、まるごと事業については、100本の矢として、モデルケースの創出に力を注ぎ、2012年度までにその半分となる50本の事例獲得に向けて推進していることを紹介。「現在では約30本の事例がある」としたほか、「具体的な技術や製品で、『まるごと』を語れるのはパナソニックだけである」と自信をみせた。

 これらの施策を通じて、2012年度には、構造改革効果で1,250億円、パナソニック電工、三洋電機の統合シナジーによる合理化で200億円、固定費削減で300億円、海外部品調達の拡大で150億円、タイ洪水被害の挽回で600億円の合計2,500億円の改善効果を見込み、これらをベースにして、成長戦略による増益効果を見込むとした。


 



■薄型テレビの出荷計画は再度下方修正へ 

2011年度の通期連結業績見通しを下方修正

 2011年度の通期連結業績見通しの下方修正は、売上高では、10月公表値に比べて3,000億円減の8兆円、営業利益は1,000億円減の300億円、税引前純損失は3,900億円減のマイナス8,200億円の赤字、当期純損益は3,600億円減のマイナス7,800億円の大幅な最終赤字とした。

 上野山実常務取締役は、「税引前損失と、当期純損失は、当社として過去にない損失規模になる」とした。通期のタイ洪水の影響は売上高で1,300億円、営業利益で600億円規模としている。


上野山実常務取締役

 セグメント別では、デジタルAVCネットワークの売上高が1,800億円減の2兆9,100億円、営業損失が660億円減のマイナス300億円の赤字。

 通期の薄型テレビの出荷計画は、期初には2,500万台としていた計画を10月に1,900万台へと下方修正していたが、今回、1,800万台へ再度下方修正した。

 アプライアンスの売上高は300億円減の1兆2,900億円、営業利益は110億円減の930億円。電工・パナホームは、売上高が200億円減の1兆7,900億円、営業利益は100億円減の660億円。デバイスの売上高が700億円減の8,100億円、営業損益は270億円減のマイナス220億円の赤字。三洋電機は、200億円減の1兆2,400億円、営業損益は50億円減のマイナス740億円の赤字。その他事業では、売上高が300億円減の1兆1,700億円、営業利益が20億円増の470億円とした。

 タイの大規模洪水による広範なサプライチェーンへの影響に加えて、欧州債務危機に端を発したグローバルな景気後退などによりデジタル商品を中心に大幅な減収になるとしたほか、徹底した固定費削減を実施したが、売り上げ減による影響をカバーできず、減益になるとした。

 営業外損益で、通期の事業構造改革費用として7,640億円を計上。内訳は、早期退職および拠点再編などで1,590億円、固定資産減損で3,150億円、のれんの減損で2,900億円とした。

 「三洋電機の買収については、当初想定したシナジーという点からみれば、悪化しているといえる」(上野山常務)としたものの、「この時期にシナジー、ディスシナジーを評価するのは時期尚早。三洋電機を買収したことで、まるごと提案という新たなビジネスが創出できる。三洋電機の買収がなければ、いまの経営環境のなかで、今後の大きな成長を見いだすことができただろうか。テレビと半導体だけで再構築はできない。三洋電機の買収によって、将来を明示することができる」(大坪社長)などとした。


 



■薄型テレビの構造改革などで第3四半期業績が悪化

第3四半期累計の連結決算概要

 一方、2011年度第3四半期累計(2011年4月〜12月)の連結決算は、連結売上高が前年同期比10.3%減の5兆9,653億円、営業利益は85.0%減の395億円、税引前純損失は前年同期の2,273億円の黒字から、マイナス3,505億円の赤字、当期純損益は1,147億円の黒字から、マイナス3,338億円の赤字となった。

 上野山実常務取締役は、「世界的な需要低迷、円高の継続、タイ洪水の影響により減収減益になった。第3四半期はデジタル機器の低迷が影響した」という。タイ洪水被害の影響は、売上高で800億円、営業利益で330億円とした。

 事業構造改革費用として、第3四半期までの累計で3,470億円を計上。薄型テレビ事業構造改革で1,907億円、半導体事業構造改革で489億円、半導体などののれん減損で354億円とした。


海外での販売状況

 地域別では、国内が9%減の3兆802億円、米州が12%減の7,432億円、欧州が13%減の5,857億円、中国が10%減の8,275億円、アジアが12%減の7,288億円となった。

 海外の重点新興国については、売上高が前年同期比8%増。中国では10%増、インドでは32%増、ロシアでは5%増、ベトナムでは6%減となった。

 セグメント別では、デジタルAVCネットワークの売上高が16%減の2兆1,829億円、営業損失がマイナス327億円の赤字。

 第3四半期累計のテレビの出荷台数は1,472万台。内訳は、プラズマテレビが421万台、液晶テレビは1,051万台。

 テレビの売上高は33%減の5,536億円、そのうちプラズマテレビが39%減の2,479億円、液晶テレビが26%減の2,653億円。デジタルカメラは18%減の1,235億円。BD/DVDレコーダは3%減の1,100億円、そのうちBDレコーダおよびプレーヤーが1%増の963億円となった。

 同ドメインにおける主要会社の業績では、薄型テレビなどを担当するAVC社の売上高が21%減の1兆707億円、営業損失が686億円悪化のマイナス863億円の赤字となった。

 アプライアンスの売上高は前年同期比1%増の9,792億円、営業利益は4%減の786億円。エアコンの売上高は5%増の2,121億円、洗濯機は8%増の1,079億円、冷蔵庫は前年並みの1,047億円。


デジタルAVCネットワーク アプライアンス

 電工・パナホームは、売上高が前年同期比3%増の1兆3,228億円、営業利益は7%減の504億円。デバイスの売上高が前年同期比15%減の6,096億円、営業損益はマイナス173億円の赤字。三洋電機は、前年同期比20%減の9,741億円、営業損益はマイナス470億円の赤字。その他事業では、売上高が6%減の7,769億円、営業利益が9%減の320億円となった。


(2012年 2月 3日)

[Reported by 大河原 克行]