【CEATEC 2012】シャープ、モスアイパネル採用AQUOSを披露

近日発売。60型ICC 4Kや32型4Kのゲーム対応など


シャープブース

 シャープは、10月2日に開幕した「CEATEC JAPAN 2012」で、新技術モスアイパネルを採用した液晶テレビ「AQUOS」などを参考出展した。他にも「IGZO(酸化物半導体)」液晶パネルを採用した32型4K液晶ディスプレイや、60型の「ICC-4Kテレビ」など、意欲的な展示を行なっている。



■ モスアイパネル採用の80/70/60型AQUOSを近日発表

モスアイあり(左)、モスアイ無し(右)の比較

 モスアイパネルは、鮮やかな発色を再現し、映り込みが少なく高コントラストを実現するという新技術。液晶パネルの表面に、夜行性の蛾の目(モスアイ)のように、ナノ単位の微細な突起が無数にある凹凸構造を有したシートを配置する。このシートにより、部屋の照明などの外光の反射を抑えるとともに、内部からの光もパネル表面で拡散しないため、より艷やかで高コントラストな映像を実現できるという。

 モスアイの技術は、ショーウィンドウやモバイル機器での導入事例があるが、微細な突起を使うという特性上、汚れが取りづらいなどの欠点があり、民生向けテレビではこれまで利用できなかったという。しかし、モスアイの開発元である大日本印刷(DNP)とシャープが共同で、テレビ向けの最適化や量産性の向上に取り組み、実用化が可能になったという。


モスアイ無し(左)、モスアイあり(中)、一般的な低反射(右)の比較モスアイ有りの中央部は外光反射が全くない
モスアイパネルの概要モスアイ構造の説明モスアイパネル採用テレビの説明
モスアイパネル採用の80、70、60型AQUOS

 このモスアイパネルを採用した80型、70型、60型の液晶テレビ「AQUOS」新シリーズをシャープブース内に参考出展。発売時期や価格、詳細などは未定だが、近日の発売を目指しており、AQUOSのフラッグシップモデルとして市場投入される見込み。

 この新AQUOSは4原色技術を採用し、色再現性を向上。会場では実際の映像も確認できる。また、映像の広がりや高級感を高めるアルミフレームを採用。「映像に引き込まれるようなデザイン」を目指したという。

モスアイパネル採用の80型AQUOSモスアイパネル採用の70型AQUOSモスアイパネル採用の60型AQUOS

■ 32型4K IGZO液晶ディスプレイ

32型4K IGZO液晶ディスプレイ(左)。右は32型1,366×768ドットテレビ

 また、酸化物半導体(IGZO)液晶技術「IGZO」を採用した液晶の参考展示も行なっている。

 32型/3,840×2,160ドットで、ppiのパネルを使った液晶ディスプレイを展示。4Kゲームや設計用、マルチタッチのタッチパネルを使ったインタラクティブディスプレイなどの応用事例を紹介している。

 ゲーム用途では、4K/60pのPCゲーム映像をDisplay Port 1.2から入力。1,366×768ドットのテレビとの画質比較を行ない、圧倒的な高精細さをアピールするとともに、汎用的なNVIDAのGPUから4K/60p出力できるため、4K画質のゲームの魅力を紹介している。

 価格や発売時期は未定。民生用の液晶ディスプレイ展開も検討しているが、「業務用の液晶ディスプレイとして、CAD向けなどの市場から展開する見込み」とのこと。


32型4K IGZO液晶ディスプレイ32型4Kの画像の一部を切り出し32型/1,366×768ドットの画像の一部を切り出し
32型4K IGZO液晶の活用事例
32型4K IGZO液晶の活用事例
10.1型/2,560×1,600ドット/299ppiの「モスアイ」IGZOタブレット

 また、10.1型/2,560×1,600ドットの299ppiで、AQUOSでも採用予定の「モスアイ」技術を搭載したIGZOタブレットや、13.3型/2,560×1,440ドットの221ppiのIGZOタブレットも参考展示。7型/1,240×800ドット 217ppiのIGZOステーショナリーも出展している。


13.3型/2,560×1,440ドット/221ppiのIGZOタブレット7型/1,240×800ドット 217ppiのIGZOステーショナリー(モスアイ)

 1日に発表した、5型/1,920×1,080ドットのスマートフォン向けCGシリコン液晶も展示。IGZOではないため、静止画表示時の低消費電力駆動などの機能は備えていないが、より高精細化しやすいというCGシリコンの特性を生かして、443ppiもの高精細化を実現。いち早く5型フルHDを実現できるという。

5型/1,920×1,080ドットのスマートフォン向けCGシリコン駅用19.5型/1,920×1,080ドットのWindows 8パソコン用タッチパネル液晶

■ ICC 4Kは60型で展開。発売時期は近日発表

ICC 4K 液晶テレビとアイキューブド研究所の近藤社長

 シャープが、アイキューブド研究所と共同で開発中の60型/解像度3,840×2,160ドット「ICC 4K 液晶テレビ」も専用のシアターで披露している。なお、発売時期については、「正確な日程は近く案内する予定」とのこと。

 アイキューブドの4K映像創造技術「ICC」(Integrated Cognitive Creation)と、シャープの大画面/高精細液晶技術を組み合わせた液晶テレビ。ICC技術では、「目で対象物を追い、ピントを合わせ、脳内で合成する」という自然界の風景を見ているのと同じような認知の流れを、ディスプレイでも実現することを目指しており、今回のデモでも、自然な奥行き感で猿が登っている木の枝のそれぞれが前後している様子や、湖とその背後の山々の自然な奥行きと広がりなどを、フルHDテレビとICC 4Kテレビで比較し、違いをアピールした。


フルHD液晶テレビ(左)とICC 4K 液晶テレビ(右)ICC 4K 液晶テレビ
フルHD液晶テレビ(左)とICC 4K 液晶テレビ(右)ICC 4K 液晶テレビ
ICC 4K 液晶テレビ

 アイキューブド研究所の近藤哲二郎社長は、「カメラがあわせたピントではなく、人は“見たいもの”にピントを合わせている。テレビジョンで現場で見ている視界を再現することが目標」とし、画面サイズについては「60型にこだわっている。これ以外のサイズは考えていない」とする。その理由は、「1mmの間に走査線3本が入るのが適正。これより大きければ画素が見えてしまうし、小さくても自然な広がり、奥行きにつながらない」とする。

 なお、ICC 4K 液晶テレビは、4原色のクアトロンパネルではなく、3原色のパネルを採用。画面の均一性を保つためにLEDバックライトの部分駆動なども活用している。ICCのLSI自体は既に完成しており、最終製品に向けた実用環境における画質チューニングなどを進めているという。


■ COCOROBOで外出先から家電連携

COCOROBOに家電連携モジュールを装着

 また、ロボット掃除機/家電の「COCOROBO」をクラウド連携するデモも実施。COCOROBOの拡張スロットにUSBで赤外線通信で宅内の家電連携するモジュールを追加することで、スマートフォンで外出先からエアコンのON/OFFや温度調整、空調やライトのON/OFFなどが行なえる「家電コントローラ」として紹介した。

 スマートフォンの専用アプリの部屋レイアウト画面で、エアコンや照明などの位置を設定。COCOROBOのカメラで部屋の様子を確認しながら、エアコンや照明を操作可能な位置までCOCOROBOを移動。移動した場所で、COCOROBOから対象機器に赤外線リモコン機能を使って電源のON/OFFなどの操作を行なう。

 操作の結果はアプリの画面上で確認できる。また、COCOROBOに内蔵した温度センサーの状態をスマートフォンに表示することで、部屋の温度が把握できる。

 なお、エアコンを室外から制御、電源オンにできるという技術においては、パナソニックが9月に発表した「Xシリーズ」が、経済産業省との協議の結果「電気用品安全法(電安法) 技術基準への適合に課題がある」と判断され、機能削除に至った。シャープでは、「COCOROBOが電安法の対象ではなく、さらに外付けのモジュールを付けて操作するものなので、法的な問題はないとは考えている。しかし、実際の機能としては同一のもの。関係省庁との連携や、安全性をしっかり確認しながら、実用化に向けて取り組みたい」とした。

アプリからCOCOROBOを操作COCOROBOが近づいて家電をコントロールCOCOROBO家電コントローラの概要
電源のON/OFFも照明をCOCOROBOからコントロール
こころぼ~ど

 COCOROBOのクラウド連携サービス「こころぼ~ど」も搭載。これは、家族間などで、スマートフォンやAQUOS、COCOROBOを通じたコミュニケーションを行なうもので、アプリ上で伝言や画像(シール)を介したコミュニケーションが可能。家族のアカウントを利用していれば、離れた家族の間でも情報供給にも対応できるとする。

 また、シールを使った連携も可能。ユニークなのは、前述の「家電コントローラ」と同様に、COCOROBO経由で家電操作が可能なこと。例えば、こころぼ~どで、「COCOROBOカメラ」のシールを押すと、COCOROBOがカメラ機能で部屋を撮影。「エアコン」のシールを押すことで、エアコンのON/OFFを行なうなど、シールに割り当てられた特定操作を実行するマクロ機能として利用できる。

こころぼ~どシールでコミュニケーションCOCOROBOのカメラ機能や空調操作もシールから
こころぼ~どからCOCOROBOのカメラ撮影タニタの体組成計とも連携

■ AQUOSブルーレイは音声検索対応へ

 また、AQUOSブルーレイとスマートフォンを使った音声検索のデモも実施。次世代のAQUOSブルーレイで採用予定で、番組表や録画リストの情報をスマートフォンで検索可能にするもの。

 専用アプリを使うことで、音声で番組表の操作やキーワード入力操作が行なえるもので、「野球」-「阪神」-「甲子園」など3階層までの検索に対応する。


スマートフォンを使ってAQUOSブルーレイの音声検索3階層までの検索に対応新AQUOSブルーレイも
AQUOSの新機能として「番宣チャンネル」も参考出展シャープブース中央では、シースルー太陽電池を使ったスマートハウスも

(2012年 10月 2日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]