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ヘッドフォンで11.1ch。「DTS Headphone:X」を日本初披露
DTSが事業戦略説明。「音のプレミアムブランドに」
(2013/2/1 10:45)
dts Japanは31日、2013年度事業戦略説明会を開催。米DTSのジョン・カーシュナー会長兼CEOが同社のビジョンや戦略を説明したほか、東京初台の新オフィスやシアタールームを紹介。また、ヘッドフォンで最高11.1chまでの音場を再現するサラウンド技術「DTS Headphone:X」のデモも行なった。
ヘッドフォンで11.1ch。「DTS Headphone:X」を国内初披露
2013 International CESで初披露した「DTS Headphone:X」のデモを実施。ヘッドフォンで、最高11.1chまでの音場を再現するサラウンド技術で、ホームシアター相当のサラウンド体験をヘッドフォンでも楽しめるようにするもの。米国以外でDTS Headphone:Xのデモを行なったのは今回が初という。
デモの内容は、まず11.1chシステム(フロント×2、センター、フロントハイト×2、サイド×2、リア×2、リアハイト×2)でまず音を聞かせた後、ヘッドフォンを着用。ヘッドフォンで各チャンネルから音を出すと、ヘッドフォンでもスピーカーと同様の11.1chの定位感が得られることが確認できる。スピーカーの接続確認信号のデモのほか、音楽コンテンツも利用していた。
特別なヘッドフォンは必要なく、デモではゼンハイザーのポータブルタイプのものを使用。コンテンツはデモ用ということで、スピーカーとほぼ同様に聞こえるように調整しているとのことだが、ヘッドフォンでもスピーカーの出音とほぼ同じような音の定位、実体感が得られているのは驚かされた。従来のバーチャルサラウンド技術とは全く違う、新しいサウンド体験が確かに味わえる。
なお、11.1chは最大チャンネル数のため、7.1chや5.1chなどのコンテンツでもDTS Headphone:Xを実現できるという。
市場投入時期については、「2013年内」を目指しているとのこと。DTS Headphone:Xは、2段階での市場導入を予定。第1段階ではマルチチャンネルの音源を用意し、事前にHeadphone:X専用の最適化処理を行ない、パッケージ化。対応の再生機を使ってデコードする形となる。
第2段階では、マルチチャンネル音源の前処理は必要なく、再生時にリアルタイムに演算して、Headphone:Xに最適化した音源を生成する。
段階的な導入の理由は、Headphone:Xのリアルタイム演算のためのプロセッサの処理能力が現状では足りていないため。第1段階のHeadphone:Xの最適化処理については、Protoolsのプラグインとしてコンテンツメーカーに提供。オーサリングの後段にこの処理を行なうことで、Headphone:X対応コンテンツを制作できる。
AVアンプなどの据え置き型のオーディオ機器での導入のほか、タブレットやスマートフォンでの採用も目論む。CESではモバイル向けプロセッサのトップ企業であるQUALCOMMが、7.1chのDTS Headphone:Xのデモを行なっていたが、DTSでは、すでに様々なパートナー各社に技術の採用を提案しているとのこと。
また、買収したSRSの技術を使ったパソコン用の「SRSプレミアムサウンド 3D」なども紹介。映画、音楽、ゲームなどのサウンド種類や、ヘッドフォンや内蔵スピーカー、外部出力など出力機器に最適化したサウンド調整などが可能な技術で、東芝のノートPCなどに採用されている。
サウンドバーや薄型テレビ向けの技術としては、「DTS Studio Sound」を紹介。ステレオ2chのサウンドバーや薄型テレビで、自然な奥行き感や広がりを実現するもので、SRSが開発した技術をベースにDTSの技術を融合しているという。すでに米国では製品が発売され始めており、今後日本メーカーへの採用も見込んでいるとのこと。
DTSは音のプレミアムブランドに
米DTSのジョン・カーシュナー会長兼CEOは、DTSのビジョンや戦略について説明。「DTSは世界のサウンドを良くするための会社。音の違いがエンターテインメントや人々の経験を大きく変えていく」と述べ、音にこだわり、よりよい音を届けていくという姿勢を強調した。
また、'93年の映画館におけるDTS技術の導入に始まり、'97年のAVアンプなどのホームシアター展開、2004年のBlu-rayの必須コーデックへの採用など、同社の歴史を紹介。今後については、テレビやスマートフォン、タブレット、PCなど様々な分野でDTSが音の良さをつなげていくとした。
また、BDビデオの全米トップ100タイトルの約90%にDTS-HD Master Audioが採用され、品質面でのスタジオや消費者の高い支持を得ているプレミアムブランドであること、そして2012年に合併したSRSの技術を含めると、AVアンプ、PC、モバイル、自動車、BDプレーヤー、テレビなどで20億台ものDTS採用デバイスが発売されていることなどをアピールした。
カーシュナーCEOは、DTSのマーケットメッセージ「Sound changes the way We see」(音によってものの見え方が変わる)を紹介し、「お伝えしたいのはサウンドの重要性。サウンド体験向上のため、ヘッドフォンにおいても検討を進めてきた。DTS Headphone:Xを是非体感してほしい」と語り、テクノロジーイノベーションを通じて、よりよい体験を実現していく姿勢を強調した。
dts Japan代表取締役の小玉章文氏は、日本におけるDTSの展開について説明。'12年5月の代表就任の2カ月後にSRSを買収したため、社員も技術も増加。現在22名の社員が在籍しているという。そのため10月には東京 恵比寿から初台のオペラシティにオフィスを移転した。
オフィス移転には別の狙いもあったと語る。その1つが新しい試聴用スタジオの導入で、従来のスタジオでは難しかったハイトスピーカーの設置などに対応。DTSが市場導入予定の最先端技術を日本の家電業界やパートナーに向け、より紹介しやすい環境づくりを目指したという。
SRSを買収し、技術やパートナーも増加したが、小玉氏はDTSを「プレミアムサウンド」のブランドとして展開する方針。SRSの技術とのDTSの技術の統合については、薄型テレビを例に挙げ、「SRSは、小型スピーカーの最適化などの技術。一方でDTSはコーデック技術が中心で、両社を合わせることで“音の全て“をワンストップで扱えるようになった」とする。
また、パナソニックの北米向けテレビにDTSのデコーダ技術(DTS 2.0+Digital Out)が導入されたことも発表。三菱自動車の北米向け「アウトランダー」でもDTS技術が採用されている。小玉氏は、「デジタル製品を中心に、現在のプロダクトサイクルはとても早い。新しい技術をどんどん紹介しないと、メーカーも乗り遅れてしまう。積極的に日本のライセンシーに新技術を提示し、触れていただきたい」と述べ、日本メーカーの日本向け製品だけでなく、海外製品の競争力強化にもDTSの技術で寄与していくとアピールした。
一方で、一般の消費者向けのブランド認知向上にも取り組む。現在のDTSのブランド認知度は「10%程度」とのことで、特に若年層への認知が弱いという。そのため、特に音に興味がある、音に拘る若者へのブランド訴求を図っていく。小玉氏は、「日本の4割の家庭にはDVDプレーヤーがあり、DTSロゴが付いている。ある程度の年齢層には音/サウンドの会社ということは認知されている。そのイメージをさらにクリアにしていきたい」とする。
昨年は、音楽イベント「Summer Sonic 2012大阪」に大型トレーラー内にサラウンドシステムを構築した「DTS PREMIUM SOUND TRAILER」を導入し、人気を博したとのこと。こうした施策を2013年はさらに進め、まずは2月23日、24日に札幌ドームで開かれるスノーボードイベント「TOYOTA BIG AIR」にトレーラーを導入。DTS Neo:Xによる9.1chホームシアターなどのDTS技術をアピールする。なお、このトレーラーは数年契約でDTSが借り、改造してシアターを構築している。今夏に向けて「日本有数のミュージックイベントに展開したい」とした。
また、DTS Headphone:Xについても「家が広くなく、スピーカーをたくさん置けない日本だからこそ“絶対受ける”と考えている。是非その違いを体験してほしい」とアピールした。