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黒澤明監督「トラ・トラ・トラ!」解任前の音声テープ発見。国立映画アーカイブ

国立映画アーカイブは、1968年12月に黒澤明監督が初の外国映画として撮影を開始しながら降板を命じられたことで知られる映画「トラ・トラ・トラ!」の、黒澤監督撮影時の音声テープが発見され、その音声データが同館に収蔵されると発表した。

今後、同館は展覧会などの主催事業に音声データを使用できるが、報道を除いて、外部の団体・個人への提供は認められていないとのこと。

映画「トラ・トラ・トラ!」は、「羅生門」や「七人の侍」など数々の名作で国際的な名声を獲得し、世界にさらなる活躍の場を求めていた黒澤監督が取り組んだ初の外国映画の企画だった。

ハリウッド・メジャー会社のひとつである20世紀フォックスの製作により、1941年12月の日本軍の真珠湾攻撃をめぐる日米両国の動きを題材にした作品で、日本のシーンを黒澤監督が、アメリカ側をリチャード・フライシャー監督が演出するという方針が固まり、まず1968年12月2日に東映京都撮影所で日本側のシーンがクランクインした。

しかし、製作側との折り合いがつかず、12月24日に黒澤監督は解任。代わって、舛田利雄・深作欣二の両監督が日本側の撮影を引き受け、当初の予定より大幅に遅れながらも映画は完成。1970年9月に公開された。

これら「トラ・トラ・トラ!」の音声テープを録音したのは、東宝撮影所の録音技師・渡会伸(わたらい・しん、1918~2001)氏。2022年、関係者より国立映画アーカイブが資料を受領した際、6mmのオープンリールテープが含まれており、内容を調査した結果、黒澤組における「トラ・トラ・トラ!」撮影時の録音物であることが判明した。

黒澤監督が1968年12月2日~21日にかけて監督した部分の音声テープは、映画録音用の6mmテープ11本。主にワシントンDCの日本大使館のシーンと戦艦長門の艦内シーンからなり、スタッフによるシーン番号・テイク番号の読み上げ、俳優たちの台詞、黒澤監督による演技指導の声が収められているという。

なお、この映画の主要な役には、黒澤監督の意向でプロの俳優ではない旧軍人が主に起用された。

その一方で、黒澤監督撮影時のフィルムは現存が確認されていないため、この音声は極めて貴重な記録となる。その後、国立映画アーカイブで法的な検討を重ね、現在20世紀フォックス作品の権利を持つウォルト・ディズニー・ピクチャーズ(WDP)との話し合いを通じて、国立映画アーカイブの主催事業に限って音声データを使用することが同社より認められたという。

WDPとの協議では、元の音声テープはWDPが保存。国立映画アーカイブはそれをデジタル化した音声データを受領する。同館は「この音声データの使用を当館に許諾するとともに、オリジナルの音声テープの恒久的な保存に取り組むウォルト・ディズニー・スタジオに感謝申し上げます」とした。

今回の音声テープ発見の意義について、国立映画アーカイブは「幻と終わった黒澤監督の『トラ・トラ・トラ!』の約3週間にわたる撮影現場、そして黒澤監督解任のいきさつは、これまで映画史の謎とされてきました」とコメントしている。

「それを解き明かすべく、ジャーナリストの田草川弘(たそがわ・ひろし、1934~2024)氏は、20世紀フォックス社の所蔵資料を丹念に分析して『黒澤明 vs.ハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて』(2010年)を著しました(同書記載の撮影記録がテープの内容の裏付けになりました)」

「当時の多くのマスコミは監督が『強度のノイローゼ』で辞任したと報じ、黒澤プロダクションも病気によるものと強調したものの、後に監督本人がそれを否認するなど、事態の解明は錯綜しました。しかしこれらのテープは各シーンの撮影前後の状況は明らかでないものの、冷静に撮影が進んでいた様を示しています」

「今回の音声テープの発見は、黒澤監督の映画人生の謎を解明する足がかりとなるばかりでなく世界映画史の謎に迫るものであり、日本映画の国際性を改めて確認する機会となるでしょう」

国立映画アーカイブは、9万本以上のフィルムに加え、映画関連書籍、シナリオやスチル、ポスター、映画人の遺品など、多彩な資料を網羅的に収集・保存し、映画と映画文化を長きにわたって繋いでいくための、日本で唯一の国立の映画専門機関。

フィルムの損傷・劣化を防ぐためには室温や相対湿度などの環境を維持する必要があり、年間を通して多くの光熱費が発生するほか、フィルムや各種資料の特性を熟知し、適切に扱える専門家も欠かせないため、その専門的技術を継承することも急務となっている。

そのため、同館では活動の安定的な継続と将来への発展に向けて、収入の多角化と拡大に取り組む一環として、運営費の支援を募るクラウドファンディングを「READYFOR」で実施中。期間は9月23日まで。詳しくはクラウドファンディングページまで。