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シャープ、奥田社長が退任。髙橋新社長体制へ

「経営再建へ道筋たった。新生シャープの初日」

奥田隆司代表取締役社長(左)と新社長に就任する髙橋興三副社長(右)

 シャープは、2013年6月25日付けで、代表取締役兼副社長執行役員の髙橋興三氏が代表取締役社長に就任する社長人事を発表した。代表取締役社長の奥田隆司氏は、代表取締役および執行役員から退任。代表権を持たない会長となる。また、取締役会長の片山幹雄氏は、取締役から辞任し、フェローに就任することになる。

 5月14日午後4時10分から、都内において、奥田社長および髙橋新社長が社長交代会見に行なった。

 奥田社長は、「社長としての最低限の責任を果たした。達成感がある」としたほか、「役員を一新し、これまでのシャープと決別する。中期経営計画および2013年度における最終黒字化を全社一丸となって完遂し、新生シャープを一刻も早く作りたい。そして、その区切りを今日つけたいと考えた。今日が新生シャープの初日になる」と、社長交代の理由を示した。

 続けて、「社長在任期間は1年あまりの短いものであったが、経営を再建するという立場で指揮をとった点では、最低限の責任は果たせたといえる。これからは会長となって、これまでの経験を生かしながら、中期経営計画の重要テーマであるASEAN地域の事業拡大に黒子になり、社長を支えていきたい。インドネシアの工場は敷地の選定から私がやってきたもの。そうしたことに関連した点ではサポートしたい。経営に対して、ものを言うつもりはない。すべての権限と責任が髙橋に集中することになる。私も片山も、この形を崩さないように運営していく。これによって新生シャープになれる。昔のシャープの輝きを取り戻していきたい」と語った。

 また、髙橋次期社長については、「技術部門を皮切りに、営業部門、海外事業などを経験し、これからシャープがグローバルに戦う上で、様々な素養を兼ね備えている。持ち前の強いリーダーシップと営業センスを磨きながら、再生と成長を図り、必ずや新生シャープを作ってくれると確信している」とした。

「シャープの社員に自信を取り戻してほしい」

髙橋興三副社長

 髙橋次期社長は、「4月の終わりに近いところで、社長の奥田に呼び出され、『みんなで作ったこの中期経営計画の達成を頼む』と言われた。正直なところ、本当に驚いた。昨年4月に米国から戻り、シャープが置かれている厳しい状況や、金融機関からの融資および取引先からの支援、そして、社員の必死のがんばりをみてきた。そうしたなかで、社長就任の話があり、『これしかない。全力で取り組んでいこう』と考えた。シャープは、様々な技術を持っている。世界のグローバル企業と様々な交渉をしたが、その時に感じたことは、世界のリーディングカンパニーがシャープの技術に期待をしており、一緒に組みたいと言ってくれていることであった」とした。

 「シャープは経営信条のなかで、誠意と創意というお客様視点の考え方がある。いま一度、その2つの原点に立ち返り、社員一同力をあわせて、この厳しい状況からの再生、成長を果たしたい。いや、果たさなくてはならない。私自身、技術、生産、営業、マーケティング、企画といった仕事をしてきた。海外も米国、中国を担当し、そこでは、すべてのプロダクツやサービスを担当した。いまこそ、そのすべての力を出すときがきた。さらに再生を達成するだけでなく、同時に次の大きな成長に向けて、社員一丸で動いていかなくてはならない。そのためには技術の強みだけでなく、社員全員が前向きなチャレンジ精神を持ち、困難、苦難に立ち向かう精神を、会社の文化として醸成していきたい。これは、創業者である早川徳次の時代からずっと続いている精神。そこに立ち返り、技術を磨き、次の100年の一里塚にしたい」と語った。

 シャープの課題について髙橋次期社長は、「シャープの社員に、いま取り戻してほしいのは自信。昨年は厳しい状況であり、こういう状況から、なんとか這い上がりたいという気持ちがある。しかし、それだけでは駄目である。もっと、自信を持って歩いてほしい。自分で判断して、自分でチャレンジしてほしい。上からの指示を待たないという風土に変えていかないと駄目である」と述べた。

 中期経営計画では、成長戦略を描くことに対して、再生が優先ではないかとする指摘に対しては、「私には信念がある。それは、3日間の仕事をしなくてはならないということ。今日と明日と明後日の仕事を、毎日しなくてはならない。今日は今期、明日とは3年後、明後日は5~10年後。これが私の定義。これを順番にやっていては駄目である。どんなに辛くても、毎日毎日、この3日間の仕事に、人材を割き、パワーを割かないと将来はない。これが私のポリシーである。この考え方が、甘い、ずれていると言われるのであれば、それは甘んじて受ける。しかし、私はこのやり方を変えない」と断言した。

 さらに、「世界のリーディングカンパニーには、メーカーだけでなく、量販店も含まれる。そうした企業との話し合いのなかで何を感じたか。それは、凄いスピードであるということだ。私が初めて訪問しても、CEOやCOOといったトップが出てくる。クアルコムもそうだった。クアルコムは、昨年5月に、チップセットの不足に関する交渉で訪問したのが初めてだった。あるレベルの社員から地ならしをして、上に上げていくという仕事の仕方をしない。決めるときはその日のうちに決めてしまう。取締役会が必要な場合には、世界中をテレビ会議でつないで決めてしまう。シャープがこれからスピードをあげるためには、そうしたところにも取り組んでいかなくてはならない。クァルコムとは、その後様々な話し合いを進めていく上で、MEMSディスプレイにおけるIGZO技術の提携に発展した。サムスンの場合も事業面での話し合いが最初であり、そこから発展した」と語った。

 また、アライアンスの考え方についても言及。「クアルコムやサムスンとは、1対1の関係であるが、そうではなく、もっと複数の違うファンクションを持った企業が、それぞれの強みを持ち寄って、サプライチェーンのような形でのアライアンスがこれからは必要になってくるだろう。そのときにシャープはどのポジションを取るのか。そこにシャープの技術の強みなどが発揮される。複数の企業がアライアンスを組んで、新たな製品、サービスを作っていくという時代が始まっている」と述べた。

「巨大投資ができる勇気が必要な時代だった」

奥田社長

 一方、奥田社長は自らの経営を振り返り、「経営状況が厳しいなか、シャープは、社内外への約束としていた2012年度下期の黒字化を必達目標として、金融機関、取引先の支援のもと、構造改革に取り組んできた。その取り組みが実を結び、2012年度第1四半期を底に業績が回復。黒字化し、若干積み増しもできた。当期純利益は公表値を大きく下回ったが、一連の構造改革費用の計上についても区切りがついたと考えている。中期経営計画についても主要金融機関の理解を得て、追加融資枠の内諾いただいた。これにより、最大の懸案事項であった資金繰りにも目処がつき、経営再建の道筋がたてられたとみている」とする。

 「しかし、この間、62年ぶりの希望退職、給与や賞与の削減など、従業員に対して、重い痛みを強いていることは事実である。経営者としては、このことを重く、重く受け止めている。経営体制を一新し、これまでのシャープと決別し、中期経営計画の達成に取り組む。新生シャープの初日に当たって、退任を決意した」としたほか、「長い間にシャープは大企業病にかかってしまった。もっと自信を持って、アグレッシブにチャレンジしていこうという風土が薄れていたことが課題であった。そういった風土を改革し、これまでのシャープにおさらばして、新生シャープを作っていってもらいたい。世界中の人たちがシャープと一緒に仕事をしたいと思っている。シャープの技術を使って、新たな領域に出たいという企業がある。そうしたアライアンスを通じて、新たな事業領域を創造していってもらいたい」と語った。

 金融機関から役員派遣とともに、取締役の数を減らしたことについては、「社内の組織体制については当社の中で決めたもの。これまでは社内が10人、社外が2人という取締役体制としていたが、社内を4人減らして、迅速な意思決定ができるスリムな体制とした」(奥田社長)と回答。また、片山会長および自身の人事については、「片山会長自ら、辞任したいという申し入れがあった。片山会長なりの判断があったと思う。私も私なりの判断をした。自分として、ひとつの区切りがついたというのが、このタイミングである」(奥田社長)と述べた。

 片山会長のフェロー就任については、「技術、事業を立ち上げてきた造詣の深さを生かして、後進の指導に当たることに専念する」と役割を位置づけた。

 また、片山会長の経営責任については、髙橋次期社長が回答。「確かに、多くの投資をしたという事実はある。そして円高という経済環境もあった。だが、製造業はハードウェアへの設備投資に対して執着し、それによって生産力をあげ、コストで勝っていくものである。しかし、その時代が終わりつつあった。そこに私も含めて、シャープ全員が気づいていなかった。それを片山が主導していった。だが、片山一人の失敗だとは思っていない。これにみんなが賛同した。そのときの日本の流れがそうなっていた。巨大投資ができる勇気が必要な時代であった。いまからみればそれは違ったといえるが、その時には私を含めて賛同した。決して片山にいやいや引っ張られたわけではない。片山一人の責任ではなく、私にも責任の一端がある」と話した。

 一方で奥田社長は、「一部報道で、私と片山が不仲であるとか、意思決定のプロセスにギャップがあると言われているが、そんなことはない。いろいろとちゃんと話をして、そのプロセスのなかで進めてきた。どういう誤解なのかわからないが、そういう報道ばかりが先行した。それが残念である。そうした事実はないということをもう一度確認させていただきたい」と語った。

(大河原 克行)