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シャープ、'13年第1四半期決算は営業利益30億円に

当初見込みを上回る収益改善。デジタル家電も回復

シャープ 代表取締役社長の高橋興三氏

 シャープは、2013年度第1四半期(2013年4月~6月)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比32.6%増の6,079億円、営業利益は前年同期の941億円の赤字から、30億円へと黒字転換。経常損失は1,038億円の赤字から910億円改善したものの、127億円の赤字。当期純損失は前年同期の1,384億円の赤字から1,204億円改善したが、179億円の最終赤字となった。

 シャープの高橋興三社長は、「前年同期比から大幅な収益改善を達成した。期初には第1四半期見通しとして、売上高で5,500億円、営業損失は100億円の赤字と見込んでいたが、それを上回る着地となった。営業利益は、2012年度第3四半期、第4四半期に続き、3四半期連続での黒字。セグメント別の売上高では、デジタル情報家電部門の大幅な成長をはじめ、すべての部門で前年実績を上回り、営業利益でも急激な円安から国内向け海外生産品の採算が悪化した健康・環境を除くすべての部門で収益回復を達成した」と総括した。

2013年度第1四半期連結業績概要

 また、高橋社長は、「第2四半期以降は回復基調に入っていくだろう。だが、依然として厳しい収益状況、財務状況には変わりがない。手を緩めることなく構造改革に取り組み、2013年度通期での当期純利益黒字化を目指す」と語った。

テレビは収益改善。ツートップの影響は「軽微」

 部門別業績は、プロダクトビジネスの売上高が前年同期比26.4%増の4,033億円、営業利益は360億円増の194億円。そのうち、デジタル情報家電の売上高が18.5%増の1,589億円、営業損失が188億円改善ながらも13億円の赤字となった。

部門別売上高
部門別営業利益
部門別営業利益増減分析(前期比)
デジタル情報家電

 液晶テレビの国内需要減、携帯電話における主要デバイスの供給不足から販売が低迷し、202億円の赤字となった前年同期に比べて、売上げ、営業損益が改善。液晶テレビは、売上高が3.4%増の803億円、販売台数は6.2%減の156万台となった。

 「液晶テレビは、米州、欧州は低迷したが、国内では販売台数では前年同期比2%減となり、底打ち感がみられた。金額ベースでは、3割増という単価アップがみられている。今後は、60型以上の製品へのシフトとラインアップの強化。新興国などの重点地域へのローカルフィット製品の投入を図る」語った。

 また、携帯電話の売上高は71.8%増の502億円、販売台数は69.1%増の131億円となった。

 NTTドコモのツートップ戦略については、「(ドコモ向けには)もともと大きな数を見込んでいなかったこともあり、影響は軽微」とした。

シャープ 代表取締役専務執行役員コーポレート統括本部長の大西徹夫氏

 第1四半期の携帯電話事業が前年実績を大きく上回っているのは、前年同期に主要デバイスの供給不足から販売が低迷したという背景があり、第2四半期以降の販売見通しを踏まえて、携帯電話の販売台数を期初計画から130万台減の550万台に、売上高は300億円減の2,100億円へと下方修正した。携帯電話の通期収益は「トントン」(シャープの大西徹夫代表取締役専務執行役員)を見込んでいる。

 高橋社長は、「高精細および低消費電力を実現するIGZO液晶搭載モデルの拡充などにより、国内シェアの奪回を図る」とする一方、「この分野への当面、競争激化は続くだろう。スマートフォンの浸透率があがり、かつてほどの爆発的な移行は起こらないというベースがある。それが下方修正の理由」とした。

 また、「スマホという点だけをみれば、通信手段でしかない。だが、COCOROBO連携やHEMS(Home Energy Management System)など、ホーム向けだけではなく、BtoBでも、通信は事業の核になると考えている。スマホという目に見えているものだけでなく、広がっていくものとして捉えれば、この事業には将来性がある」とした。

 なお、プロダクトビジネスのうち、健康・環境の売上高は5.2%増の823億円、営業利益が18億円減の64億円。太陽電池の売上高は101.1%増の843億円、営業利益は137億円増の68億円。ビジネネスソリューションの売上高は20.0%増の776億円、営業利益は52億円増の75億円となった。

 健康・環境では、エアコンおよび空気清浄機の販売が好調に推移していたものの、急激な円安の進展により、国内向け輸入製品の採算が悪化した。また、太陽電池では、国内市場において住宅用やメガソーラー向けなどの産業用が伸張した。ビジネスソリューションは、国内外でカラー複合機が好調に推移し、海外でもインフォメーションディスプレイが伸張したという。

 一方、デバイスビジネスの売上高は前年同期比31.9%増の2,550億円、営業損失は591億円改善したものの、93億円の赤字。そのうち、液晶の売上高が前年同期比32.8%増の1,938億円、営業損失は539億円改善したものの、95億円の赤字。電子デバイスの売上高は29.0%増の612億円、営業利益は51億円増の1億円の黒字となった。

健康・環境
太陽電池
液晶

 液晶は、大型液晶の外販が好調に推移したほか、スマートフォン、タブレット向け需要増による中小型液晶の販売が増加。戦略的アライアンスの効果もあり、亀山第2工場の稼働率は計画通りに進捗したという。

 今後は大手重点ユーザーへの新規デザインインの着実な推進と、取引拡大による売り上げ、収益の安定化を図る一方、中小型液晶はIGZOなどの高付加価値パネルへのシフトを推進。テレビ用液晶は需給動向を注視しながら、生産、販売、在庫の効率化、適正化を推進するという。

電子デバイス
ビジネスソリューション

通期予測は据え置き。改革に「手応え」

通期連結業績予想

 2013年度の通期見通しについては、第1四半期には社内計画を上回ったものの、為替動向や海外経済などの不透明感もあり、当初計画を据え置いた。ただし、セグメント別では一部修正を行なった。

 セグメント別では、デジタル情報家電において、売上高を300億円減の7,300億円、営業利益では70億円減の50億円とした。下方修正は携帯電話事業の修正が影響したものとなる。

 一方で、太陽電池では、売上高で300億円増の3,100億円、営業利益は70億円増の130億円に上方修正した。

高橋社長

 中期経営計画に基づいた施策の進捗に関しては、自前主義からの脱却・アライアンスの活用、全社コスト構造改革による固定費の削減、財務体質の改善の3点から説明。MEMSディスプレイ共同開発契約に伴うクアルコムへの第三者割当増資の第2次増資の実施により、累計で108億円の払い込みが完了したこと、中国電子信息産業集団有限公司(CEC)との液晶事業協業締結により、液晶パネル・モジュール技術の供与および第8.5世代液晶パネル・モジュール工場の立ち上げに取り組んでいるほか、人件費削減で115億円、減価償却費179億円などの固定費削減によって合計502億円の効果を達成。シンジケートローンの3,600億円の更改と、社債償還に向けた追加融資枠1,500億円の設定による安定資金の確保を行なったことを示した。

 また棚卸資産は、中小型液晶や太陽電池などが第2四半期以降の需要増や円安による押し上げ効果から、3月末に比べて455億円増加したものの、前年同期比では1,557億円の削減となり、アセットライト化が進んでいることを強調した。

 社長就任後の取り組みについては、「役員から一般社員まで階層ごとの研修を実施しているほか、部門をクロスオーバーする形で議論をしている。5月の社長就任の発表以降、3カ月を経過していないが、改革への手応えを感じている」としたほか、「5つの分野に対して新規事業を推進するために新規事業推進本部を設置した。当初は100数十人でスタートしたが、現在では200人規模に増えている。言葉だけではなく、技術をベースにした取り組みを、実際に推進していることがわかってもらえるだろう」などと述べたほか、「今回の四半期の数字は、新生シャープのとしての成果とはいえない。従業員が自分で考えて、自分で課題を解決して、自分で成果を求めている会社になることを目指していく。その進捗は、人それぞれによって、職種それぞれでも違う。だが、私は変わりつつあると感じている」とした。

 なお、一部報道などにある今後の資本増強については、「現時点では、決定したものはない」とした。

(大河原 克行)