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ソニー、'13年度は1,284億円の赤字に。TVの損失は縮小
PS4好調も販売費用などでゲーム分野は81億円の損失
(2014/5/14 15:41)
ソニーは14日、2013年度の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比14.3%増の7兆7,673億円。営業利益は前年度から2,000億円減少し、265億円。税引前利益は、前年度から2,163億円減少の257億円。純損益は1,284億円の損失で前年度の415億円の利益から赤字となった。
売上高の増加は主に為替の好影響と、PlayStation 4の発売、スマートフォンの大幅な増収によるもの。前年度の為替レートを適用した場合、売上高は2%の減少になる。
営業利益の大幅な減益は、2月に事業収束を発表したPC事業の損失が、前年度の386億円から917億円に拡大した事と、電池事業やディスク製造事業で減損を計上したため。損失917億円には、PC事業の収束決定にともなう費用583億円が含まれ、409億円が構造改革費用と認識。残りの174億円は余剰となった手元部品在庫に対する評価減などの費用となる。一方で、テレビは大幅な損失縮小となっている。
2014年度の連結業績予想は、売上高が7兆8,000億円。エレクトロニクス事業での増収を見込んでいるが、PC事業の収束によりその他分野に含まれるPCの売上減少が見込まれることなどから、前年度並みの売上高を見込んでいる。営業利益は1,400億円と、前年度の265億円から増益を見込む。2013年度に長期性資産等の減損の計上があった一方、2014年度はエレクトロニクス事業での損益改善を見込んでいるため。
税引前利益は前年度の257億円から、1,300億円に増益と予想。純損失は、'13年度の1,284億円から500億円と、縮小を見込んでいるものの、最終赤字予想となっている。主に、事業構造の変革に伴う費用を見込んでいるため。
エレクトロニクスはIP&S以外、全てのセグメントで赤字
業績説明会の冒頭、代表執行役 EVP CFOの吉田憲一郎氏は、3回の業績見通し下方修正を経て、1,284億円の赤字になり、2014年度の連結業績予想も500億円の最終赤字を見込んでいる事、2014年度の経営目標数値を達成できない見通しになっている事について、株主らに対して謝罪。
セグメント別では、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野は、売上高が前年度比17.5%増加の1兆1,686億円と大幅な増収。為替の好影響と、高付加価値モデルの導入による液晶テレビの製品ミックスの改善などが寄与した。
営業損失は前年度に比べ588億円縮小の255億円。主に液晶テレビの製品ミックスの改善と費用の削減によるもの。テレビのみの売上高は、前年度比29.7%増加の7,543億円、営業損失は前年度に比べて439億円縮小の257億円となった。2014年度の見通しは8,800億円。台数は2013年度は1,350万台、2014年度は1,600万台を見込んでいる。
吉田氏は、「赤字額は大幅に削減したが、公約としていた黒字化は達成できなかった。事業固定費圧縮の施策は効果があったが、販売側の固定費圧縮が不十分だった。高付加価値モデルの売上高に黒字化の解を求めたが、それも未達に終わった要因。やや言い訳となるが、収益元の新興国の経済状況と為替も逆風となった。なお、過去10年間のテレビの赤字の累積額が7,900億円で、この数値は大変に重いと思っている。担当マネージメントも5回変わっている。現在の今村本部長はこの8月で3年と最長。私見だが、経営と施策の不安定さが赤字を増幅させていた側面があると思っている、少なくともこの点は改善に向かっている。分社化は7月に実行予定。足元の状況を含め、今期の黒字化は可能と考えているが、我々がテレビ市場をコントロールしているわけではないので、引き続き慎重にモニタリングしていく」とした。
モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野は、前年度比29.6%増加で、1兆6,301億円。PCの販売台数が大幅に減少する一方で、スマートフォンの販売台数が大幅増加、平均販売価格も上昇。為替の好影響も寄与し、分野全体で大幅な増収となった。営業損失は前年度に比べ221億円縮小し、750億円。構造改革費用の増加やPC事業の損失拡大があったが、携帯電話事業が補い、分野全体で大幅な損失縮小になったという。スマートフォンの売上台数は'13年度が3,910万台、'14年度は5,000万台を見込んでいる。
ゲーム分野の売上高は、前年度比38.5%増加し、9,792億円。主にPS4の発売及と為替の好影響によるもの。PS3のハードウエアの販売数量は減少したが、ソフトウエアの売上高は増加した。しかし、営業損益は、前年度の17億円の利益に対し、81億円の損失。増収したものの、PS4発売にともなう費用の増加、Sony Online Entertainmentが提供する一部のPC向けゲームソフトウエアタイトルの評価減62億円を計上したことなどで悪化した。
売上台数はPS4、PS3、PS2をまとめた据置型ハードウェアが'13年度で1,460万台、'14年度は1,700万台と予想。携帯型ハード(PS Vita TV/PS Vita/PSP)は'13年度で410万台、'14年度は350万台を見込んでいる。
2014年度はPS4の販売台数増加、ネットワーク売上の増加などで大幅な増収を見込んでおり、PS4の発売にともなう費用も減少するため、大幅な損益改善を予想。吉田氏は、「(PS4という)新プラットフォーム立ち上げの年としては良い一年だったと思っている。しかし、ユーザー増加でネットワークコストの増加なども顕在化している」とした。
イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は、売上高が前年度比2%減少の7,412億円。市場縮小の影響を受け、コンパクトデジタルカメラやビデオカメラの販売台数が大幅に減少。分野全体で減収となったが、営業利益は前年度に比べ249億円増加し、263億円となった。為替の好影響と構造改革費用の減少によるもの。
デバイス分野は、売上高が前年度比6.4%減少し、7,942億円。バイル機器向けのイメージセンサーが需要増加で大幅に増収となったが、PS3向けシステムLSIの減収や前年度にはケミカルプロダクツ関連事業の売上が含まれていたことなどで、分野全体では減収。営業損益は、前年度の439億円の黒字に対し、130億円の赤字となっている。主に電池事業で321億円の長期性資産の減損を計上したことや、2011年度に発生したタイの洪水による損害や損失に対する保険収益(純額)が前年度に比べ減少したことによるもの。
映画分野は円安の好影響により、売上高は前年度比13.2%増加の8,296億円。営業利益も円安で、前年度に比べ38億円増加し、516億円となった。音楽分野も円安が影響、売上高は前年度比13.9%増加し、5,033億円。営業利益は、EMI Music Publishingを中心とした持分法投資損益の改善などにより、前年度に比べ130億円増加の502億円となった。
なお、セグメントについては2014年度第1四半期から、2点の変更が行なわれる。1つはソニー・コンピュータエンタテインメントが展開するネットワークサービスで、従来の「その他」から「ゲーム」に移管。それに伴い、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野に名称変更される。また、従来MP&C分野に含まれていたモバイルコミュニケーションカテゴリを、モバイル・コミュニケーション(MC)分野とし、PCや電子書籍端末や、その他のカテゴリを「その他分野」に移管する。
2013年度のセグメント別実績では、映画、音楽、金融は前年度を上回る利益を計上したが、エレクトロニクスではIP&S以外は全てのセグメントで赤字となった。エレクトロニクス5セグメントの営業利益は合計で952億円の損失となっている。
これを踏まえて吉田氏は、「このチャートにソニーの現在の課題が集約されている」とし、連結売上と営業利益から、映画、音楽、金融セグメントを抜いた、エレクトロニクス5分野とその他セグメントを合わせた業績の推移を10年分、グラフとして表示。これによると、この6年間、ほぼ構造的に赤字になっている事がわかる。
また、エレキのピークであった2007年度では、ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲームの売上1.3兆円を省くと、残りが5.9兆円。一方で、2013年では、SCEとソニーモバイルの数字を引くと、残りのエレクトロニクスは3.2兆円。つまり、AV/PC/デバイスなどの売上は、ほぼ半減している。
構造赤字の要因として吉田氏は、「事業内容が大きく変化する中で、コスト構造、事業構造の変革が十分ではなく、あるいは遅れたため」と説明。変革の最近の取り組みとして、PC事業の撤退、コア事業への集中を紹介。「コスト構造を変えていくことは、エレクトロニクス事業の規模縮小や事業内容の変化に、コスト構造を対応させていくこと」と説明した。
その具体的な施策として、AV機器を主に扱っている世界の販売会社の固定費を挙げる。2013年度で2,900億円の赤字だが、2007年から順次引き下げてはいるものの、「売上の縮小に追いついていない」という。そこで、2015年度にかけて20%の固定費削減プランを作成、実行が始まったという。
2つ目は2013年度の固定費が1,450億円の本社。「本社の固定費は、2007年より増加している。平井社長が昨年12月に社内で提示した“小さい本社”のコンセプトをもとに、2015年度までに固定費30%減の計画を策定。実行はこれからになる」とした。
吉田氏は、「構造改革が他社と比べ、遅れているというご指摘はその通り。最終利益がマイナスという業績予想も。リーマン・ショックの直後以来。リーマン・ショックの時のように、世の中の環境がそうというわけでもなく、円高でも、洪水が起こったわけでもない。真摯に反省している」と語り、「今のソニーにとって評価すべきは、本社ではなく事業。コーポレートの高コスト体質を変えられるかが最大のチャレンジだと考えている」と語った。