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シャープ株主総会、技術力復活に期待する株主の声多数。2年連続の無配に高橋社長が陳謝
(2014/6/25 14:21)
シャープは6月25日午前10時より、大阪市西区のオリックス劇場において、第120期定時株主総会を開催した。会場に出席した株主は943人となり、昨年の1,021人から78人減少した。
議長を務めた高橋興三社長が、開会宣言を行なった後、ビデオにより、2013年度の事業報告を行ない、増収増益により、中期経営計画で掲げた最終黒字化を達成した実績などを紹介。4K対応AQUOSや、フルHDパネルで4K相当の画質を実現する「クアトロン プロ」、IGZO液晶ディスプレイを搭載したスマートフォンのほか、モバイル端末向け中小型液晶パネル、国内で需要が旺盛な太陽電池などの特徴を持ったデバイスと、独自商品の創出および販売強化が成果につながったことを強調した。
また、2012年度までの2期連続の多額の営業損失、当期純損失の計上、重要な営業キャッシュフローがマイナスとなったことで、有利子負債が増加。継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在していることを説明。しかし、2013年度に最終黒字を確保したこと、営業キャッシュフローもプラスに転じるなど、中期経営計画が着実に推進。金融機関からの継続的な支援協力のもと、3,600億円のシンジケートローンの契約更新を行なうとともに、追加資金枠1,500億円の設定契約を結んだことなどに触れ、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないとした。
「偏執した企業文化を変える。2014年度は再成長ステージ」
続いて、高橋社長が対処すべき課題について説明した。
高橋社長は、「2013年度は、3年ぶりの黒字とし、再生への一歩を進めたが、シャープ単体決算では赤字となり、2013年度も無配となった。また、2014年度も無配の見通しであり、大変申し訳ない。できるだけ早く復配し、株主に報いるように全社員が一丸となって回復に邁進する」と陳謝した。
また、「2013年度を構造改革ステージとし、2014年度は再成長ステージとして、収益体質のさらなる強化に取り組む。中期経営計画では、勝てる市場、分野へ経営支援をシフトのほか、自前主義からの脱却やアライアンスの積極展開、ガバナンス体質の変革による実行力の強化に取り組む」と語った。
さらに高橋社長は、「事業ポートフォリオの再構築」、「液晶事業の収益改善」、「ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大」、「全社コスト構造改革による固定費削減、財務体質の改善」という5つの重点施策を取り組んでいくことで、再生と成長を実現する姿勢を示した。
具体的な取り組みとして、BD事業の収益性改善では一定の成果が出たこと、狭額縁デザインのEDGEST採用のスマートフォンなどにより、国内ナンバーワンを維持し、通信キャリアとの連携による特長デバイスおよび新規デバイスの投入を図ること、液晶デバイスのソリューション提案力を強化するとともに急拡大が進む中国スマートフォン市場への戦略展開を進めていくほか、IGZO液晶ディスプレイを核とした中小型液晶パネルの拡大などに取り組む姿勢を示した。
さらに、持続的成長に向けた取り組みとして、技術資産をテコに既存事業を拡大するとともに、新規事業領域にも取り組むことにも言及。「協業先の技術と販路を活用することで、新規重点領域であるヘルスケア/医療、ロボティクス、スマートホーム/モビリティ/オフィス、食/水/空気の安心安全、教育分野において、事業化を目指す。昨年5月に新規事業推進本部を設置したのに続き、今年4月には市場開拓本部を設置し、これらの組織を中心にした市場創造型の事業デザインに取り組んでいる。今のシャープに必要なのは、事業領域を絞り込むことではなく、新たな可能性がある分野に進出すること。家電、ソーラー、デバイスの既存領域の広がりと、新規事業領域への取り組みによって、あらゆる人々に、グッドライフを提供する企業になることを目指す」とした。
また、「今回の経営危機を招いた原因は、経営理念を忘れ、偏執した企業文化となっていたことがあげられる。私は社長就任以来、大きな拠点だけでなく、数人規模の営業サービス拠点も訪問し、私の考え方を伝え、社員の声に耳を傾けてきた。その結果、社員のチャレンジ精神を引き出すことが、シャープが再生する近道であるという考えに至った。今年初めには、経営理念、経営信条に則り、社員ひとりひとりが再生と成長に向けた行動変革宣言を行なった。私の宣言は、『文化を変えるから、良い文化を創る』である。シャープが、100年先まで世の中から必要とされる会社であるために、良い企業文化を築きなおしたい。社員の意識は着実に変わってきていると考えている。今日の仕事といえる、目の前の課題に追われるだけでなく、5年~10年先を見据えた、明日の仕事、明後日の仕事にも取り組んでいく強い社員こそが、シャープを再生させるエンジンになる。経営、社員が一丸となりシャープの再生に取り組んでいく」と力強く語った。
「ロボットの市場は大きくなる」
株主総会では、午前10時50分頃から質問を受け付けた。
鴻海精密工業のシャープ本体への出資については、「2年前の2012年3月27日に協議し、出資に向けた契約を行なったが、その後、株価が下落したことも影響。台湾当局の出資における認可が降りなかったという経緯がある。契約は3年で自動更新となっているため、契約そのものは生きてはいる。株価が550円ということであれば、もう一度協議することも考えられるが、そうした申し入れはないため、協議は一旦終わったと考えている」(シャープの大西徹夫代表取締役副社長)とした。
また、堺ディスプレイプロダクト(SDP)の上場計画については、「答えを控える。上場という話はテリー・ゴー氏(鴻海グループの郭台銘氏)の意向である」とした。
一方で、シャープの技術力に関する質問も相次いだ。株主の中には、「技術のシャープ」と言われていたことに対して言及しながらも、技術力を問う質問もあった。
高橋社長は、「先頃、28種類の新たな技術を発表した。今回の株主総会の会場は小さくなったため、その技術を展示する場所がない。次回からなんらかの形で展示するといったことも検討したい」としたほか、シャープは液晶以外にどんな分野を成長領域に捉えているのかという質問に対しては、「液晶に関していうと、シャープは液晶ではなく、ディスプレイという捉え方をしている。ここには、液晶だけでなく、クアルコムと一緒にやっているMEMSディスプレイなどもある。ディスプレイがない家庭、ディスブレイがない職場、ディスプレイがない公共空間は考えられないという世界がくる。情報の8割が目から入ってくる。その点では、ディスプレイが重要な役割を果たす」。
「一方、通信分野においては、国内キャリアとの関係強化ができてきている。日本ではスマホでは国内ナンバーワンであるが、私は、あの形でスマホを捉えているのではなく、スマホを通信技術として捉えている。この通信技術は今後重要になり、インフラにまで広がり、ディスプレイにもつながり、クラウドとつながった事業になるだろう。さらに、28種類の新たな技術のなかのひとつである、ロボティクスも大きなビジネスになると考えている。セキュリティロボット以外にもいくつかの開発を進めている。日本では人口減少の傾向があるなかで、サービスロボットの市場は大きくなると予測している」と述べた。
社員の退社に伴う技術の流出については、シャープの水嶋繁光代表取締役副社長が回答。「技術流出は様々な形で起こる可能性がある。社員が退職する場合には、秘密保持の誓約書にサインをしてもらうことで、法的に技術流出を防ぐことができる。また、技術の情報流出はITシステムを用いて、部外者から技術情報にアクセスできないように最大限の対策を行なっている」とした。
また、「技術者の待遇をよくするだけでななく、社員全員によりよい環境を提供できるように経営の改善を進めたい。当社の技術者は、この経営危機のなかでもアグレッシブである。問題意識をもって、課題に対して、前向きに提案をしている。新たな組織によって、一刻も早く新たな事業へとつないでいくための取り組みをしたい」と述べた。
一方で、連結業績の最終黒字化したのにも関わらず、無配であることに関する質問が相次いだ。中には、「今後、中期経営計画を達成しても、無配のままなのか」という質問も出た。
大西徹夫代表取締役副社長は、「シャープの自己資本比率は8.9%となっており、株式の投資適格に達していない。そのため、資本市場から資金を調達できない状況にある。いまは資本充実が重要である。配当は、資本政策を総合的に勘案して、そのときの状況に応じて行ないたい」と説明。高橋社長は、「投資適格ではないため、資本市場から資金を調達できず、金利がかさんでいる。だが、赤字をたれ流している事業はない。投資適格に戻ることが遅れていることは事実。パナソニックは20%の自己資本比率がある。株価が戻るのはいつまでとはいえないが、いま、そこに戻るための努力をしている」と語った。
また、株式を所有していない役員が5人もいることを指摘する質問に対しては、「これらの役員は、経営に関わっているため、インサイダー取引も勘案しながら株式を取得していく必要がある。だが現時点では難しい。株式所有の有無に関わらず一丸と取り組んでいる姿勢は変わらない」と大西副社長が回答。また、高橋社長は、「経営陣は、インサイダーの固まりのようなものであり、役員持株会での増減もできない。私の場合、娘の旦那まで、誰一人としてシャープの株式を動かせない状況にある」と説明した。
人材育成に関する質問については、大西副社長が回答。「シャープでは、リーダーシッププログラムを10年間続けている。これは、次の執行役員への登用を図っていくための選抜研修がある。また、部長、課長などの研修制度を設けている。さらに次世代の幹部候補を育成するための幹部育成会議として、役員自らが、自分のポジションの後継人材をノミネートして育成する継承プログラムを実行している」と説明。
さらに、女性の人材活用については、「ダイバーシティマネジメントを2005年6月にスタートし、女性の管理職登用を推進している。2011年には初の女性執行役員、2013年には初の女性取締役が誕生した。2014年は、2005年に比べて女性管理職は4倍となり、準管理職は2005年には17.3%だったものが、2014年には34.9%となっている。いま女性社員比率は全体の1割なので、女性社員の採用を幅を広げていく」と述べた。
株主の質問のなかでは、入口でペットボトルのお茶が配られたのにも限られず、会場内は飲食禁止となっているのはどういうことか、議長は水を飲みながら進行しているのに、株主は飲めないのかという問いもあり、「飲食禁止は、ペットボトルのことは指していない。だが、こうしたことを踏まえて、良い文化を作るために努力していきたい」と高橋社長が答えた。
株主の質問数は20人に達し、例年の10人前後の質問数に対して、大幅に増えたのが特徴だったといえよう。
なお、第1号議案の取締役11名選任の件、第2号議案の監査役1名選任の件、第3号議案の当社株式の大量買付行為に関する対応プラン(買収防衛策)継続の件については、すべて可決され、12時23分に閉会。2時間23分は昨年と同じ過去最長時間となった。