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ソニー、軽くなったメガネ型ウェアラブル「SmartEyeglass」

単色で1,000nit。サイズ/デザインに拘り。SDKも提供へ

 ソニーは9月5日からドイツ・ベルリンで開かれる家電展示会「IFA 2014」にて、開発中のメガネ型ウェアラブル機器「SmartEyeglass」(仮称)の試作モデルを公開した。

SmartEyeglass試作機

 SmartEyeglassは1月・米国ラスベガスで開かれた「2014 International CES」にもプロトタイプを展示していたが、今回のものはデザインを一新し、より製品に近づけたもの。商品化時期や価格は未公表だが、「もうすぐソフトウエア開発キット(SDK)の公開を予定しており、その時には発売時期も公開できる」とのことなので、早期の商品化が予測される。

CES公開時とはまったく違うデザインに変更。実は平井一夫社長の鶴の一声だったとか。バッテリなども搭載しており、ワイヤレスで動作する

単色に割り切って「最大1000nit」の輝度を実現

メガネというには少々大きいが、以前のモデルに比べるとスリムになった。現在の重量は70g強

 SmartEyeglassはいわゆる「スマートグラス」の一種で、スマートフォンからの画像・文字情報を受け取り、メガネの中に投影することで、実景と共に見られるもの。無線LANとBluetoothを内蔵しており、現在は、スマートフォンからBluetoothで受け取った情報を表示する形になっている。

 特徴は、ディスプレイデバイスとしての「見やすさ」だ。モノクロ(表示はグリーン)256階調・400×240ドットだが、その表示は非常に明るく鮮明で、実景との間での違和感も、フォーカスのズレもなく、見ていて疲れない。現状のデモでは文字情報を中心に表示しているが、画像などでももちろん問題はなく、ターン・バイ・ターンのナビのような表示もできる。

SmartEyeglassの表示。グリーン一色だがきわめて鮮明で、実景との間の違和感が非常に少ない。デモ内容は文字情報が中心だが、256階調のモノクロ映像なら表示できる。
ソニー・デバイスソリューション事業本部 企画管理部門 SIG準備室 統括部長の武川洋氏

 同製品の開発を担当する、ソニー・デバイスソリューション事業本部 企画管理部門 SIG準備室 統括部長の武川洋氏は「大切にしたのはデザイン性。フルカラーでHDの映像を大きなデバイスで出すと、メガネのボディも大きくなってしまう。そうではなく、サイズも消費電力も小さなものにすることに振った」と話す。

 現在の試作機は、ディスプレイ・バッテリー・無線通信モジュールなどを内蔵しており、約70g強。「最高輝度でフルに通信を使って表示し続けた場合で2〜3時間、その半分の表示時間ならば5時間は持つ。輝度をさらに落とせばなんとか6時間」(武川氏)動作するという。開発側はもっと長くすることを狙っているが、まずは「最長で5〜6時間」を目指している。

 SmartEyeglassのディスプレイ光源は高輝度LED。これを本体側面から投射し、レンズ部(厚さは1mm程度)に埋め込まれたホログラムに反射させて映像を作る。最高輝度は1,000nitときわめて高く、それが鮮明さにつながっている。現状、「好天で白い壁を見る時などはフィルターがあった方が見えやすくなる」(武川氏)とはいうものの、ほとんどのシーンで問題はない。見やすさと明るさが直結していることから、「カラーフィルターによって明るさが3分の1になることを避けて」(武川氏)モノクロを選んでいる、という割り切りだ。

 明るさ・見やすさに注力している理由は、実景を見ながら情報を見る、いわゆる「AR(Augmented Reality:拡張現実)」的な使い方を志向しているため。メガネ内の映像と実景が自然に同居する必要がある。Google Glassなどで採用されている「片眼に情報が常時される形式」では、実景と情報の間で目線が行ったり来たりして大変であるし、「面白いアプリケーションが作りにくい」との分析から、メガネの左右から発光、両眼で見ることを軸に開発が進んでいる。高輝度にこだわったのも、表示を見やすくし、AR的な使い方をした時に違和感を減らすためである。

 実はこの技術は、すでにアメリカの一部の映画館向けに、聴覚障害者用のクローズドキャプション表示用、として販売されている。字幕を映画と共に見ても自然で疲れない、という観点で選択されているのだが、その発想は「自然なAR」にもつながる。従来のHMDとは異なり、「映像を持ち出すというよりも、タイムリーに情報を受け取る」ことを主眼においている。

 現在はスポーツ観戦時の利用などを想定しており、試合中にプレイの付加情報や点数などを表示する、という用途が考えられている。また会場には、特定の地域(例えば、IFA 2014の開催場所であるメッセ・ベルリン)でつぶやかれたツイートだけを集め、スマートフォンから逐次転送するアプリや、料理中にレシピの文字部分が表示され、目線をずらさずにレシピを見ながら調理が出来るアプリ(開発はクックパッドと共同で行なわれた)などがデモされた。どれもAndroid上で動作するアプリであり、そこからBluetoothを使ってSmartEyeglassに情報が転送され、表示されている。今後は、どういったアプリケーションがいいのか、ということを考える目的から、広くSDKを公開し、アプリ開発を促す予定だ。

クックパッドと共同開発中のレシピアプリ。スマホでアプリを動かし、そのレシピ情報をSmartEyeglassに表示する。調理中に視線をずらさなくても内容の確認ができる。スマホの隣にあるのは、SmartEyeglassのリモコン部で、スマホから離れた場所で使っている時、情報のページ送りなどのために使う

 アプリ以外の現状での製品化へのハードルとしては、アイウエアとしての完成度の向上がある。「現在は70gを越えるが、現在は重いメガネでも30gを切っているので、その倍である60g以下に抑えたい」というのが目標であるという。ただし現状すぐには難しく、ロードマップ上で60g以下を目指す時期を検討している、という状況だ。

(西田 宗千佳)