「東京国際アニメフェア2010」レポート【新作&新サービス編】
-電脳コイルがiPhoneに。3D VIERAでアニメ上映
世界最大級のアニメ総合見本市、東京国際アニメフェアが25日、東京ビッグサイトで開幕した。会期は3月25日~28日までだが、25日~26日は関係者向けのビジネスデーとなっている。パブリックデーの当日券は一般が1,000円、中高生が500円。主催は東京国際アニメフェア実行委員会。
ここではアニメの3D表示デモやiPhone向けの新配信サービス、4月から放送が開始される新番組を中心とした新作情報などをレポートする。
■ ヒピラくんが3D VIERAで3D上映
バンダイナムコグループのブースで展開されているヒピラくん3D上映コーナー |
バンダイナムコグループのブースでは、アニメ「ヒピラくん」の3D上映体験コーナーが設けられている。大友克洋が原作、アニメ美術界で活躍する木村真二が絵を担当した絵本を原作としたアニメ。
今回の3D上映はパナソニックが4月下旬に発売する3D表示に対応した3DプラズマVIERA「TH-P54VT2」と、Blu-ray 3Dの再生に対応したBDレコーダDIGA「DMR-BWT3000」を組み合わせたもので、コンテンツとしてキュー・テックが特別に作成した3D版ヒピラくんの映像を再生。3Dメガネをかけて、誰でも立体映像が楽しめるようになっている。
キュー・テックでは、赤坂本社スタジオにRealDとXpanDの両方式に対応した国内唯一という3Dスタジオを2室完備。3D映像制作や2D映像の3D変換などを手掛け、アニメでは「10th アニバーサリー劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合! 時空を超えた絆~」、実写では「侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦」、「アルビン号の深海探検 3D」などを手掛けている。
「キュー・テックでは約2年前から3D映像製作や2D-3D変換を行なっており、実写だけでなく、アニメ作品の3D化ノウハウも蓄積しています。アニメ作品では背景のパースが誇張されている事などが多く、それを上手く立体化するテクニックも重要。また、2D作品の3D版を作成する場合には、2D映像制作時に3D化を見越して3DCG部分の映像にアドバイスする事もあります」(キュー・テックの企画営業部 第1企画営業グループ CGIチーフプロデューサーでS3Dディレクターの三田邦彦氏)とのこと。
使用システムは3DプラズマVIERA「TH-P54VT2」と、Blu-ray 3Dの再生に対応したBDレコーダDIGA「DMR-BWT3000」 |
今回展示された3D版ヒピラくんは、サンライズ製作した映像を3D変換したもので、2D-3D変換で多くの特許を持つマーキュリーシステムとキュー・テックがタッグを組んで作業。キャラクターはCG、背景は手描きという作品だが、デモでは両方の質感の統一を実現しつつ、背景と手すりなどのオブジェクト、キャラクターの奥行的な配置の違いが明瞭に描かれ、絵本のようだけれど立体的という、斬新な映像が作り出されていた。
なお、3Dコンテンツはパナソニックの協力で、Blu-rayディスクに収録し、会場の「DMR-BWT3000」で再生している。「映画などだけでなく、家庭向けのBlu-ray 3Dも視野に入れて、今後も3D制作に注力していきたい」(三田氏)という。なお、3Dではないが、「ヒピラくん」の作品自体はauのLISMO Video Storeやドコモで配信中。ソフトバンクでも4月14日から配信される。
■ iPhone向けに「銀河英雄伝説」と「電脳コイル」を配信
アドコムのブースでは、4月の中旬~下旬に提供を予定している、iPhone向けアニメ配信アプリを紹介している。第1弾として予定されている作品は「銀河英雄伝説」と「電脳コイル」。
第1弾は「銀河英雄伝説」と「電脳コイル」 | 視聴イメージ |
視聴期限の無い買いきりのダウンロード形式で、例えば「銀河英雄伝説」の5話、「電脳コイル」の2話など、作品と話数ごとに1つのアプリとして販売。電脳コイルの1~5話までを購入すると、5個のアプリがiPhoneの画面に並ぶイメージになる。1話のみ収録のほか、複数話のパックや、一部を抜粋したプロモーション用の無料版なども検討。価格は未定。
1話が100MB以上になる場合もあるため、アプリの購入は無線LANやPC経由のダウンロードで行なう。ただし、無料アプリは3G回線でも落とせるようにするという。なお、話数の多い「銀河英雄伝説」などの場合はiPhone側のメモリ容量が一杯になる可能性があるが、アプリを同期させないという形でPC側にバックアップしておけるため、観たい話数のみiPhoneにコピーするといった使い方も可能だという。
■ その他
フジテレビの「ノイタミナ」ブースでは、AR技術を使って新作アニメの紹介を行なっている。作品紹介パンフレットに描かれた画像を、会場に設置されたパソコンのWebカメラで読み取ると、パンフレット上に監督からのコメントが表示されたり、ドラマ「もやしもん」では菌のキャラクターが浮遊したりと、来場者が楽しめるのが特徴。
ノイタミナ枠の新作「さらい屋五葉」のパンフレット | パソコンのWebカメラで読み取るともみじが舞う | こちらはインタビュー映像が流れる |
CRI・ミドルウェアも出展しており、動画を活用したiPhone向け独自技術をアピール。「ジグ動」は、ジグソーパズルのピースが全て動画を表示しているもので、組み立てていくことで全画面動画が完成するというもの。ピースが散らばっていたらピンチイン/アウトで拡大縮小してピースを探すことも可能。組み立て中も各ピース上で動画は滑らかに表示されている。
「CRI Sofdec for iPhone」は動画をテクスチャとして立体オブジェクトに貼り付ける技術で、動画を表示したまま回転させるといった使い方が可能。これらの技術を使い、ノイタミナの新番組を表示。新作のプロモーションツールとしてiPhoneアプリで公開する事をイメージしているが、具体的なリリースは未定。なお、同社の技術はiPhoneアプリ版の産経新聞の広告欄に動画を埋め込む事にも使われているという。
CRI Sofdec for iPhoneのデモ | ジグ動のデモ。組み立て中も動画は流れている | iPhoneユーザーにお馴染みの産経新聞アプリ。下部の広告部分に動画を埋め込む技術もCRI・ミドルウェアのもの |
動画のシーン検索や音声検索などを可能にするという、動画配信サービス「Long Tail Live Station」(ロングテイルライブステーション)もアニメフェア内で発表会を実施。「ミュージカル ミンキーモモ 鏡の国のプリンセス」や、コミックにイメージ・ソングと音声を付けてドラマ化する番組「コミックTV」などを配信予定。4月サービス開始で、2011年6月に会員数1,000万達成を目指すという。
Long Tail Live Stationの山科誠社長 | サービスイメージ | 今後の予定 |
■ スタン・リーと日本のボンズがタッグを組んだ「ヒーローマン」
ヒーローマン (C)B・P・W/ヒーローマン制作委員会・テレビ東京 |
主人公は両親を早くに亡くし、家計を助けるためアルバイトに励む少年ジョーイ。彼はある日、道端に捨てられた玩具のロボットを拾う。ヒーローマンと名付け、壊れた箇所を修理し、愛情を注ぐジョーイ。ところがある夜、ジョーイの家を稲妻が直撃。玩具が巨大ロボットへと変身する。
そのロボット・ヒーローマンと共に成長し、絆を深めていくジョーイ。そんな最中、謎の生物“スクラッグ”による地球侵略が開始されようとしていた……。
スタン・リーもビデオコメントを寄せた |
アニメフェア内で行なわれた発表会には、ボンズの南雅彦代表取締役、難波日登志監督、ジョーイ役の小松未可子さん、リナ役の小幡真裕さん、デントン先生役のチョーさんが出席した。
巨大なヒーローマンと共に登壇者が記念撮影 |
難波監督は、「作品としてはわかりやすい勧善懲悪になっています。アメリカンコミックスの要素はあくまで“味”としてちょっと頂いて、それをボンズで料理したというイメージです。スタン・リーから告げられた“こんな作品にしたい”という内容は非常に密度が高く、展開もスピーディーで面白い物語で、これを時間をかけてじっくり作れると思うと嬉しかった。内容は保証しますので、ぜひ観て欲しいです」と、完成した作品への自信をにじませた。
発明好きで宇宙人オタクの化学教師・デントン。生徒達から変人扱いされているが、奇怪な発明と奇抜な戦略でジョーイ達をサポートする (C)B・P・W/ヒーローマン制作委員会・テレビ東京 | ジョーイとヒーローマンがどのような戦いを繰り広げるかに注目だ (C)B・P・W/ヒーローマン制作委員会・テレビ東京 |
ジョーイ役の小松さんは声優初挑戦。リナ役の小幡さんも、映画の吹き替えは経験があるものの、アニメは初挑戦とのこと。監督によれば、配役はオーディションで決定されたとのことで、「役に合っていて、将来性もあると考えて選びました」(難波監督)という。
ボンズの南雅彦代表取締役 | 難波日登志監督 |
ジョーイ役の小松未可子さん | リナ役の小幡真裕さん | デントン先生役のチョーさん |
声優に挑戦した感想として、小松さんは「とにかく緊張しました。でも、周りのベテランの皆さんに助けていただきました」と語る。小幡さんはヒロイン・リナの役柄や見所について「行動力があっておてんばですが、大好きなジョーイに“私を守ってね”と言える可愛い所もある。ヒロインとしてジョーイと良い感じになる回もあるので、キュンとする所を観てください」とアピールした。
そんな主人公&ヒロインをアニメの中でも、そしてアフレコ現場でもサポートするのがベテラン声優であり、NHK教育テレビ「たんけんぼくのまち」でも知られるチョーさん。「16歳の女の子や女子大生と同じ空気の中で仕事ができるだけでわくわくしますね(笑)。逆に僕も彼女たちから新しい、若いパワーをいただける 、凄く楽しい現場でした」と語り、会場を湧かせた。
■ その他の新作情報
アニメ作品だけでなく、ゲームはフィギュアの展示が行なわれているのもアニメフェアの特徴。グッドスマイルカンパニーのブースでは、24日に発表された「ブラック★ロックシューター」のアニメ映像と共に関連フィギュアが展示されたほか、以下のような注目フィギュアも多数見る事ができる。
人気ゲームラブプラスが「ねんどろいど」になった! 高嶺 愛花が夏に発売予定。残りの2人の発売日は未定だ | ヱヴァンゲリオン新劇場版:破から、マリの1/6スケールフィギュアも登場。夏に発売予定だ |
第2期も控え、けいおん! ブームはまだまだ継続中。どちらも発売日は未定だが、澪と律の新フィギュアも展示。2人の性格が良く現れている | 人気アニメ「化物語」から、夏に戦場ヶ原ひたぎのフィギュアが登場。イラストを再現したものだが、ハサミやホッチキスが絶妙な配置で立体再現されている |
ジェネオン・ユニバーサルのブースでは、今年もオリジナルのメイドさんからパンフがもらえる | 今期も多数のアニメを放送するBS11のブースでは「迷い猫オーバーラン!」のコスチュームでお出迎え |
(2010年 3月 26日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]