BCN、テレビなど好調の要因を“エコポイント以外”で分析

-単価下落が進行。ウォークマンは8月にiPodから首位奪う


BCNの道越一郎アナリスト

 BCNは8日、7月~8月のデジタル家電の売上が昨年に比べ好調な伸びを示したことについて、その要因を「エコポイント以外にもある」として、その分析結果を発表した。

 この市場分析は、家電量販店など全国23社、2,373店舗(2010年8月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。なお、Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比などを算出している。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。

 デジタル家電製品のBCN指数(116品目の実売データから、全商品の平均販売単価と販売金額の前年同月比をまとめたもの)を見ると、7~8月は前年に比べ順調な伸びを示している。

 その要因についてBCNの道越一郎アナリストは「エコポイント効果」と「個人消費の回復」を挙げる。政府のエコポイント対象となっている薄型テレビの伸びだけでなく、厚生労働省の「賃金指数」や内閣府の「消費総合指数」を元に、「心配なところもあるが、給与カットの痛みは一旦癒えていることが消費マインドに大きく影響しているだろう」と述べた。



■ 薄型テレビは小型が牽引。価格は下落傾向

 液晶・プラズマテレビの伸びは、「1年に3回あるテレビのピーク」(3月、7月、12月)の1つである3月からの揺り戻しを終え、特に台数ベースでは8月に液晶/プラズマともに2割増になるなど順調な伸びを示している。さらに、通常とは異なる動きとして、ピークである7月よりも8月が台数/金額ともに上回るという結果になった。

 しかし、全体的な単価の下落により台数に比べ金額の伸びが少ないことを指摘。平均単価の動きとして、6~8月にかけてなだらかに下がっているという傾向が、例年の「若干上がってから下がる」という動きと異なっていることに懸念を示した。

BCN指数でみるデジタル家電の販売動向薄型テレビの販売台数と金額、平均単価'07年8月を1.0としたときの台数・金額の推移

 画面サイズ別でみると、「サブテレビ」とされる20型未満の伸びが著しく、台数/金額ともに他のサイズに比べ大幅な増加となった。単価では、20型未満と50型以上の小型/大型は下落が緩やかなのに対し、売れ筋の30~40型は下落幅が大きく、30型台は1年間で28.9%、40型台は27.3%下がっている。

 LEDバックライト(RGB、白色)搭載モデルの推移では、5月ごろから平均画面サイズが大きくなっても消費電力が下がる傾向が見られ、LEDモデルの割合も8月に約43.3%まで上昇している。

 メーカー別では、シャープが8月に台数シェアで46.4%まで増加し、一時の落ち込みから回復。一方で平均単価の下落では他メーカー(ソニー、パナソニック、東芝)に比べ最も激しくなっている。これについてはシャープが「サブテレビ需要を取りに行っている」と分析。20型未満の台数で前年同月と比べると、同社は他メーカーに比べ大きな伸び率(前年同月比2,207.7%)を示している。

画面サイズ別の台数/金額の推移画面サイズ別の台数構成比と単価下落率平均消費電力と平均画面サイズの推移

 3Dテレビについては、3Dメガネが付属する「3D対応」が台数比率で0.7%、金額比率で2.4%、メガネ別売の「3Dオプション対応」が台数比率0.7%、金額比率1.7%となった。まだ割合としては低いが、道越氏は「東芝の投入でもう一段上がるのでは」とした。また、今後の展望について「コンテンツが潤沢になる環境が必要。3Dテレビがもし爆発的に増えるするとすれば、それは裸眼対応テレビが普通に買えるようになった場合」との考えも示した。

メーカー別台数/金額シェア画面サイズ別の台数伸び率と単価3Dテレビの構成比

 そのほか、録画対応テレビ(HDD/BD/iVDR搭載と、外付けHDD録画対応)についてもこの夏に大きく伸びており、8月には構成比が26.8%となった。タイプ別で最も多いのは外付けHDD対応モデルで42.3%。次に多いのがBD内蔵で22.8%、次はHDDで16.4%。

 3D対応や、HDD内蔵、LEDバックライト搭載といった付加機能を持つテレビの平均単価をみると、HDDとLEDバックライトの搭載モデルの下落が激しく、「最初はプレミアムモデルとして登場したが、今はノーマルモデルに近くなった」とした。

録画テレビの割合とタイプ別構成比付加機能別の平均単価と単価下落率


■ BDレコーダは低価格のシャープが1位、高単価のパナソニックが2位

レコーダ全体の台数/金額の推移

 レコーダについては、7~8月に大きな伸びを見せ、金額も過去3年で最高という結果になった。その大きな要因は単価の下落と見られ、レコーダとしてBlu-rayが一般的になったことからBDレコーダの単価は6万円台前半まで下落。HDD容量の主流は320GBと500GBとなっている。レコーダのうちBD搭載モデル(BDXL含む)の台数構成比は8月に81.5%で、金額構成比は88.1%。なお、BDXL搭載モデルの構成比(8月)は台数で0.5%、金額で1.3%となっている。


'07年8月を1.0としたときのレコーダの販売台数、金額、平均単価の推移HDD容量別の販売台数構成比と平均単価BDレコーダの台数/金額構成比

 メーカー別でみると8月の販売台数の1位はシャープ(35.5%)、2位はパナソニック(30.6%)、3位ソニー(23.5%)、4位東芝(7.0%)となった。容量別の台数比率では、シャープは320GBモデルが6割を占める一方、パナソニックは500GBが7割。上位2社の戦略の違いが色濃く表れている。

 メディアに占めるBDの構成比(8月)は、枚数でみると8.7%だが、総容量では35.9%、総金額では36.2%で割合を順調に伸ばしている。また、8月の3D対応レコーダの割合は台数構成比で4.0%、平均単価が93,900円となっており、単価の下落と構成比の上昇が続いている。

 レコーダ以外にも、シアターラックなどの周辺機器についてもテレビ販売の伸びにシンクロしているというデータも出ている。また、直接の関係は無いが、地デジ搭載デスクトップPCもテレビと同様の推移を示しており、「AVとPCが同時に売れるのは珍しい数字。テレビとパソコンの動きが以前と変わっている」とした。

メーカー別台数シェアと平均単価シャープとパナソニックのHDD容量別台数比率テレビ、レコーダ、サラウンドシステム(シアターラック)、地デジ搭載デスクトップPCの台数指数の推移


■ 8月はウォークマンがiPodを逆転。高価格帯ではアップルが優勢

 8月の販売台数シェアではソニーがアップルを抜いてシェア1位を獲得。週次では'09年8月に2週間に渡りソニーが首位となっていたが、月次でソニーがアップルを抜いたのは同社が統計を取り始めてから初だという。

 この傾向は、アップルが例年新製品を出す直前に起きるもので、道越氏は「8月で抜くというのは順当なところ」としながらも、逆転の要因の一つとして「iPodの安いモデルを使うユーザがiPhoneに流れた」と指摘。また、「このまま進むかというと必ずしもそうではないが、両社が接近しているという大きな流れに変わりはない」とした。価格帯別の構成比では、1.5万円未満のモデルではソニーが、1.5万円以上ではアップルがそれぞれ半数以上を占めている。

ポータブルオーディオの販売台数/金額の推移ソニーとアップルの台数シェア推移価格帯別の台数構成比とメーカー別シェア

 そのほかのジャンルでは、PCにおいて、iPadなどのタブレット型端末を新たに「スレート型」として従来の「ノート」の項目から独立して集計。「デスクトップ」と合わせて計3項目となった。また、スマートフォンではiPhone 4の登場でiOS搭載モデルの割合が大きく伸び、4月のAndroidによる逆転から再び復活。7~8月は再びシェア70%以上を獲得した。

パソコンの台数/金額推移と平均単価。特にデスクトップが好調だったという携帯電話におけるスマートフォンの台数構成比と、搭載OS別の台数構成比デジタルカメラは台数の伸びは順調なものの、単価下落が大きいという


(2010年 9月 8日)

[AV Watch編集部 中林暁]