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ソニー、軽量カメラヘッドのVENICEや17型マスモニを披露。B2B向け展示会
2025年7月2日 18:12
ソニーは2日、ビジネス向け商品を披露する展示会「Creative Solution Showcase 2025」を開催した。会場では、今夏発売予定のVENICEエクステンションシステムや17型マスターモニターなどの業務用機器のほか、最新の映像・ビジネスソリューションが紹介されていた。
最新の業務用機器や映像ソリューションを披露
メディアソリューションのブースには、今年4月にラスベガスで開催された展示会・NABでお披露目されたソリューションや製品の新機能を中心に、同社が提案する最新のワークフローを展示していた。
注目の製品は、VENICEエクステンションシステムMiniの「CBK-3621XS」。トム・クルーズ主演の大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』などで使用された「CBK-3610XS」を小型・軽量化した最新システム。
PL&Eマウントに対応した、コンパクトで軽量なカメラヘッドには、8.6KフルフレームのCMOSセンサーを内蔵。ドロップイン方式のNDフィルターが使えるほか、ケーブルの着脱式に対応。「ヘッドの設置や取り回しが一層容易になった」という。
「HDC-F5500V」は、今年7月発売予定のマルチフォーマットポータブルカメラ。
制作現場から要望が多いという“シネマライクな映像表現”(とくにボケ味)を実現すべく、大判センサーと光学式可変NDフィルターを採用。アイリスと可変NDフィルターを連動制御させることで明るさを保ったまま被写界深度のみをシームレスに調整できる機能を備えている。
今秋発売予定の「OCELLUS」は、“マーカーレス”のカメラトラッキングシステム。
OCELLUSをカメラヘッドに装着すると、センサーユニットが複数の特徴点を同時にキャプチャして自身(カメラ)の位置を把握。背面のプロセッシングユニットとレンズ部に装着したエンコーダーと連携し、トラッキングデータとカメラ・レンズのメタデータを統合管理してくれる。
これにより、屋内外・暗所を問わず、マーカーレスでカメラがトラッキング可能に。マーカー設置の手間が省け、バーチャルプロダクションやAR合成・VFXなどのコンテンツ制作を一層効率化できるという。
会場では、VENICE 2 8Kカメラに取り付けたOCELLUSと、LEDディスプレイで構築されたバーチャルプロダクションシステムが連動するデモが紹介されていた。
6月30日に発売されたばかりの、最新マスターモニター「BVM-HX1710」も国内初展示されていた。
HX1710は、ソニー設計の新型二層液晶パネルにより、深い黒色と高輝度を両立させたモデル。サイズは16.5型でパネル解像度は3,840×2,160。ピーク輝度は3,000cd/m2で、全白は700cd/m2。
従来マスターモニターは、極めて正確な色再現が要求される映像制作などの現場で用いられてきたが、近年は映像制作の場だけでなく、製品のデザインレビューやシミュレーション用途での活用も広がり始めたとのこと。「マスターモニターは、現実の色彩に近い表現が可能。CGでデザインしたパーツの確認などに使用する事例も増えてきた。要求の多かった17型は引き合いが多い」という。
番組編成や完パケ送稿をテクノロジーでサポートする新サービス
展示会に先立ち、ソニーマーケティング B2Bビジネス本部 本部長を務める中川一浩氏が登壇。ソニーのB2Bビジネスにおける方向性、方針を話した。
まず中長期的なビジョンについては、「我々ソニーは『Create Infinite Realities』を表題に、フィジカルとバーチャルが重なる多層的な世界をシームレスにつなぎ、クリエイターと共にクリエイティビティとテクノロジーによる無限の感動を届けること」だと説明。2つの価値提供「映像×時間」「映像×空間」を、深化・拡充させていくとした。
「映像×時間」の具体例としては、前述した4Kカメラ「HDC-F5500V」やトラッキングシステム「OCELLUS」、カメラヘッド延長システム「CBK-3621XS」など、コンテンツ制作の映像表現の可能性を広げる製品ラインナップを拡充。
加えて、映像の解析技術やカメラやモニターシステムなど、放送分野で培ったソリューションを文教・企業市場などへも裾野を拡大させるという。
またセンシング技術を活用することで、社会インフラの省人化と業務の自動化を提供。LiDARセンサー「AS-DT1」を店舗や工場、インフラに組み込むことや、カメラを使ったひび割れ点検、製品外観検査などのサービス提案も行なう。
さらに「検討中のサービス」として、番組編成や脚本の解析、完パケの送稿などをテクノロジーでサポートする新しい映像制作サービスを構想中であることを発表。
「これまで提供してきた“後段階”(撮影・収録、編集、送出・配信)だけでなく、我々のテクノロジーを使えば、企画やリサーチ、プロモーションといった“前段階”をDX化できるのではないか、と考えている。お客様の声を聞きながら、映像制作の未来を、5~10年後に大きく変えたい」という。
もう1つの提供価値「映像×空間」については、別府温泉・杉乃井ホテルでの総合プロデュースや大阪・関西万博パビリオンの事例を紹介。「ソニーグループの技術を活かすことで、リアルとデジタルを組み合わせた体験価値を提供できる」と話した。
さらに、今後の取り組みとしては、空間、感覚、身体を融合したイマーシブコンテンツの制作をバックアップするハードウェアやソフトウェアを用意。
XYN(ジン)と名付けた空間再現ソリューション群で、mocopiを使ったモーションキャプチャや空間キャプチャシステム、可搬式ボリュメトリックシステム、空間再現ディスプレイなど、直感的で効率的な3DCG制作環境の構築を目指す。
また現在ハリウッドのクリエイターらと取り組んでいる共創活動(テストシューティングやコミュニケーション、バーチャルプロダクションなど)も継続。今後は日本においても映像制作クリエイターとの共創空間の提供を目指した活動を推進していく考えを明かした。