【CEATEC 2010】日立、3D液晶やS-LEDをアピール

-新ディスプレイ「MEMSシャッター」やiVDR関連も


日立のブース

 CEATEC 2010、日立ブースの注目は、直下型ともエッジ型とも異なる、新しいLEDバックライト方式「スリムブロックLEDパネル」(S-LED)を採用した液晶テレビ「Wooo」ZP05シリーズ。会場では従来モデルと比較展示を行ない、コントラスト性能や黒の締まり、消費電力の少なさなどをアピールしている。

 なお、同モデルは3D表示には対応していないが、日立は2010年度に3Dテレビを投入すると表明しており、ブースには3Dテレビ試作機も参考展示されている。フルHDの液晶パネルを使った40型で、フレームシーケンシャル方式でフルHD解像度の3D表示を実現。アクティブシャッター式3Dメガネをかけて視聴し、3Dメガネの同期用トランスミッタも内蔵する。

 ただし、実際に市場投入する3Dテレビで液晶を使うか、プラズマを使うかは明らかにされておらず、液晶の場合、ZP05シリーズのような「S-LED」バックライトを使用するかも未定だという。なお、今回の試作液晶テレビでは、S-LEDは使われていなかった。

S-LEDを採用した液晶テレビ「Wooo」ZP05シリーズLEDと導光板を組み合わせたブロックを並べて構成する、S-LED従来モデルとの比較展示。左がS-LEDを使ったもの。黒の締まりが大幅に向上している

 iVDR関連の展示として、ネットワークHDD向けのSAFIAソリューションを参考展示。これは、ネットワークHDDのHDDをiVDR-Sメディアにしたもので、Woooなどの録画対応テレビの録画先として使用可能。さらに、スカパー! HDチューナの録画先としても使用できるのが特徴。

 従来のネットワークHDDの場合、録画機器と紐付けされるが、iVDR-Sの場合は著作権保護技術のSAFIAを使うことで、録画したiVDR-Sを抜いて、他の対応機器で挿入・再生できるのが利点。例えばPC用アダプタを介してiVDR-Sを接続し、PCで録画番組を再生する事も可能になるという。製品はアイ・オー・データ機器と共同で開発中。

 ほかにも、容量1TBのiVDRカートリッジや、業務用を想定したラベル用の電子ペーパーを装備したiVDR EXカートリッジなども参考展示されている。

ネットワークHDDのHDDをiVDR-Sメディアにした試作機

概念図

PC用アダプタを介して、録画番組を再生できる
1TBのiVDRカートリッジ電子ペーパーを備えた業務用iVDR EXカートリッジ、民生用iVDRカートリッジも試作展示


 デバイスコーナーで注目を集めているのは、日立ディスプレイズが米Pixtronixの技術を用いて開発した新しいディスプレイシステム。MEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電子機械システム)のシャッターを使ったもので、RGBのLEDバックライトを順次点灯させ、色が切り替わったタイミングに合わせてMEMSシャッターを開閉。特定の色だけを視聴者の目に届けてカラー表示を行なうもので、液晶ディスプレイのような偏光フィルムやカラーフィルタが一切不要。液晶と比べ、バックライトの光の利用効率が約10倍、消費電力は2分の1以下を実現するという。さらに、色純度の高い、鮮やかな表示も可能とのこと。

試作機で動画を表示しているところ通常の液晶ディスプレイの構造図こちらがMEMSシャッター方式ディスプレイの構造

 試作機のサイズは2.5型で、解像度は320×240ドット。このような構造であるため、色情報や階調表現は時分割で知覚する事になる。画面の描写スピードは45Hz。つまり1秒間に45枚の絵を描写し、カラーはRGBの3つ、そして8bitの色情報を12枚の表示で描写する。そのため、MEMSシャッターは1秒間に「45×3×12=約1,600回」動いているという。

 しかし、動作速度は約1,600回が限界ではなく、さらに高速な動作も可能という。今回のパネルの展示では「動画の滑らかさ、明るさ、色の表現などで“ちょうどいい設定”としてこのような動作になっている。色のビット数を落としてさらに滑らかな表示にするなど、様々な設定が可能」という。日立ディスプレイズでは、このディスプレイの量産技術も開発しており、既存の液晶ディスプレイ製造工程との互換性が高く、既存のラインで製造できるのも特徴としている。

バックライトを使わずに、電子ペーパーのような表示もできる

 さらに、MEMSシャッター式のもう一つの特徴として、バックライトを使わずに、電子ペーパーのように外光を反射して描画する事もできる。この場合はシャッターだけが開閉し、LEDバックライトは光らない。開口部分は、外から入った光がバックライトで反射して戻ってくる構造になっており、その部分が白に、シャッターが閉じた部分が黒になる。この動作時では電子ペーパー並の超省電力動作ができるため、「例えばスマートフォンに搭載し、通常はバックライトを使ってカラーで動画や静止画を表示し、電子書籍アプリを立ち上げると電子ペーパー風モードに切り替えるといった使い方も可能」という。

 MEMSを用いたもう1つの展示は、携帯電話やカメラなどへの搭載を想定したマイクロ・プロジェクタ。RGBレーザーユニットからの光を、MEMSミラーによってブラウン管のようにスキャン(走査)してスクリーンに映像を投影するシステムで、小型/省電力/フォーカスフリーなどの利点があるという。


マイクロ・プロジェクタの試作機。携帯電話の液晶部分のサイドにプロジェクタを内蔵したイメージ投写デモも行なわた


 「フルパララックス3Dディスプレイ」は、360度どこから見ても正確な立体映像が裸眼で楽しめるというもの。水平/垂直方向に、どちらも数百点という、多数の視点表示ができるのが特徴で、利用イメージとして、例えば博物館のディスプレイとして人体の骨や恐竜などを表示。来場者が左右から覗き込んだり、下側から見上げるなどすると、方向によって骨の裏側が見えたり、恐竜の足の裏が見えたりといった使い方ができる。

 仕組みはプロジェクタを使ったインテグラル方式で、前面に光学素子を並べたパネルを配置。その背後にプロジェクタを設置してパネルに映像を投写する。リアプロテレビのような形で、スクリーンが光学素子パネルに変わったイメージ。プロジェクタは24台内蔵し、各視点用の映像を投写。光学素子でその光を、決められた視線向けに振りわけている。

 プロジェクタは一列に配置しているのではなく、覗き込まれる角度に合わせて、角度をつけて設置されている。なお、このプロジェクタは通常のランプを光源としているため、今回の展示システムは大型になっているが、将来的にはレーザー光源のプロジェクタを使った小型化を予定。よりコンパクトなシステムとして、数年後の実用化を目指しているという。

構造図真正面から見たところかがんで、ディスプレイを下側から見上げたところ。正面からは見えなかった首の底面が見える


データ用プロジェクタ「CP-WX11000J」を2台スタックした、3Dシアター

 シアターコーナーでは、データ用WXGA液晶プロジェクタ「CP-WX11000J」を2台スタックした、3Dシアターを設置。2台のプロジェクタのレンズ前に偏光パネルを設置し、偏光メガネで鑑賞する方式。ただし、偏光パネルなどの3D表示用パーツはまだ発売しておらず、「今回の展示の反響などを踏まえ、商品化を検討していく。今回は同プロジェクタを使って3D表示ソリューションが構築できる事をアピールする展示」だという。

 超短投写距離の液晶プロジェクタも新モデルを参考展示。独自の自由曲面光学設計技術や、超精密金型加工&成型技術などを用いて、現行モデルよりも投写距離をさらに縮め、ワイド80型を56cmから投写できるという。さらに、新自由曲面プラスチックレンズ・プラスチックミラーを用いることで、光学エンジンを従来(CP-A100J)比約47%小型化。軽量化も実現しており、「スクリーン上部に設置した場合でも圧迫感が少なく、軽量化で取り回しのしやすさも向上する」という。


超短投写距離の液晶プロジェクタも新モデルを参考展示CP-A100Jで採用している光学エンジン参考展示モデルの光学エンジン。大幅に小型・軽量化された
6.6型でUXGAの高精細なIPS液晶モジュールも参考展示空気層を無くし、薄型化すると同時に、屋外視認性をアップさせたという静電容量方式タッチパネル付きIPS液晶。10点タッチに対応している合成樹脂製のペンや手袋をはめた手など、絶縁体でも走査できる静電容量方式のタッチパネル付きIPS液晶。絶縁体の入力情報を静電容量に変換する技術が使われているという
ブースの入り口には「ハウスのスマート化技術」の参考展示として、ホームゲートウェイに家の情報(エアコンのON/OFF、テレビのON/OFF、カーテンの開閉、電気自動車の充電状態など)を集約。ユーザーがタブレット型ホームコントローラーで情報確認や機器の制御が可能になる、将来的なリビングのイメージも展示された
 

(2010年 10月 5日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]