ソニー、'11年度通期予想を下方修正。営業利益90%減

-TV事業は410億円の損失。PS3売上過去最高370万台


2011年度第2四半期の連結業績

 ソニーは2日、2011年度第2四半期(4-9月)決算を発表した。売上高は、前年同期比9.6%減の3兆699億円。営業利益は80.9%減の259億円、税引前利益は83.6%減の232億円、純利益はマイナス425億円となった。

 第2四半期単体では、売上高は、為替の悪影響や液晶テレビの減収などによるコンスーマープロダクツ&サービス分野(CPS分野)の減少により、前年同期比9.1%減の1兆5,750億円。営業損益は、前年同期687億円の利益に対し、当四半期は16億円の損失。税引前利益は前年同期627億円の利益から、1億円の利益に減少している。

 営業損益が16億円の損失となったのは、主に、減収による売上総利益の減少や、今後実施予定の中小型ディスプレイ事業売却にともなう資産の減損、液晶テレビ関連資産の減損によるもの。また、構造改革費用は前年同期に比べ123億円増加し、288億円となっている



■テレビ事業は減収減益で410億円の営業損失

セグメント別売上高・影響利益

 CPS分野の売上高は、前年同期比12.3%減少の7,797億円。主に、欧米の市場環境悪化などによる価格下落及び為替の悪影響を受けた液晶テレビ、価格競争の影響を受けたPC、年末商戦に向けて実施したPlayStation 3の価格改定の影響を受けたゲーム、コンパクトデジタルカメラの市場成長鈍化による減収などが影響した。

 営業損益は、前年同期10億円の利益に対して346億円の損失。構造改革費用は減少したが、売上原価率の悪化及び減収による売上総利益の減少が響いた。特に液晶テレビは、原価及び費用削減よりも価格下落の影響が大きく、ゲームと共に、損益変動にマイナスの影響を与えたという。また、S-LCDの低稼働率に起因する追加的な液晶パネル関連費用と、液晶テレビ関連資産の減損86億円も含まれている。

 テレビ事業の売上高は、事業環境の悪化に起因する価格下落の影響により、17%減少の2,130億円となった。販売台数はアナログ停波前の駆け込み需要の反動や、景気低迷の影響、他社の価格攻勢に追従しなかった北米で大きく数字を落としたものの、新興国市場では数量を大幅に伸ばし、ほぼ前年同期並の約500万台。

 営業損益は、構造改革費用を除くベースで前年同期比250億円悪化の、410億円の損失。市場価格の下落や、固定資産の減損によるものだという。


執行役EVP CFOの加藤優氏

 ゲームの売上高は、年末商戦に向けて実施したPlayStation 3の価格改定の影響、ピークを過ぎて縮小傾向のあるプレイステーション2ビジネスの影響で、前年同期比で減少。PS3ハードの売上台数は、発売以来、第2四半期としては過去最高の370万台になったという。営業利益は、PS3のコストダウンは進んでいるものの、価格改定の影響もあり、前年同期に比べて減少となった。

 執行役EVP CFOの加藤優氏は、12月の日本を皮切りに発売を控えたPlayStation Vitaについて「お客様からの反響も大きく、期待の高さを実感している」と説明。PS3ビジネスについては「価格改定の効果やヒットタイトルに支えられ、足元の利益は好調。今後も多くの期待タイトルの発売が予定されている。また、PlayStationNetworkはサービス再開後、多くのコンテンツを購入していただくなど、順調に推移している」と説明した。

 放送/業務向け製品や半導体などを含む、プロフェッショナル・デバイス&ソリューション分野(PDS)では、売上高が前年比10.9%減の3,734億円、営業利益がマイナス123億円となった。東日本大震災による製造設備被災などがあった電池や、ストレージメディアの売上減少などが主要な要因。営業損失の主な要因は、構造改革費用の増加と円高で、中小型ディスプレイ事業売却にともなう資産の減損184億円も含まれている。好調なのは半導体のイメージセンサで、売上は前年同期比と比べて増加し、CMOSの月産個数は7月時点の2,000万個から、2,500万個に増加しているという。

 映画は売上高が17%増の1,693億円、営業利益は206億円と好調。増収の過半は、スパイダーマン関連商品売上の分配を受領する権利を売却したためで、その他の映画作品の売上は、劇場興行収入は減少しているが、テレビ局向け収入及び映像ソフト収入が増加したことで、ほぼ前年同期並みとなっている。

 音楽分野は、売上高が6.6%減の1,036億円、営業利益が21.9%減の63億円。減収要因は円高と、米国以外の地域におけるアルバム売上の減少によるもの。ヒットした作品は、アデルの「21」、加藤ミリヤの「M BEST」、JUJUの「YOU」、ピットブルの「プラネット・ピット」、ビヨンセの「4」など。金融分野は営業利益が17%減の1,841億円、営業利益が43.1%減の245億円。

 ソニー・エリクソンは売上高が15億8,600万ユーロ、税引き前利益が3,100万ユーロ。スマートフォン以外の携帯電話の出荷台数減少にともない、携帯電話の出荷台数は減少しているが、売上高に占めるスマートフォン比率が上昇したことで平均販売価格も上昇し、全体の売上高は前年同期比で微減にとどまっている。



■連結業績見通しを下方修正

連結業績見通しを下方修正

 通期の業績についても、前提為替レートの円高方向への見直しや、タイ洪水による被害、欧米の売上減などを受け、下方修正する。上半期の前提為替レートは1ドル75円前後、1ユーロ105円前後(7月時点は1ドル80円前後、1ユーロ115円前後)。

 売上高は7,000億円減の6兆5,000億円、営業利益が1,800億円減の200億円、純利益は600億円の予想から1,500億円下回り、900億円の損失になる見込み。

 営業利益の修正要因は、為替の悪影響により、CPS分野、PDS分野を中心に連結営業利益が、7月時点の想定を約650億円下回る見込みであること。さらに、10月のタイの洪水により、ソニーの製造事業所への浸水といった直接的な被害が発生したことや、一部の部品やコンポーネントの調達が困難になったことにより、いくつかの製造事業所の操業停止や一部製品の発売延期などが発生。損害保険があることから緩和されるが、約250億円の影響額を見込んでいるという。

 CPS分野では、営業損益が7月時点の想定を約1,150億円下回る見込みで、売上見込みの減少や為替の悪影響によるもの。液晶テレビは売上見込み台数の減少、価格競争の激化、為替の悪影響、固定資産の減損などで、営業損失が7月想定から大幅に拡大する見込み。この対策として、2009年に発表した中期計画の液晶テレビ販売目標4,000万台を、2,000万台に半減し、それに見合った体制に転換する施策を、同日に発表している。詳細は別記事でレポートしている。



■「日本でテレビを製造する事が差異化ポイントにもなる」

 質疑応答の中で、4期連続の最終赤字になる事で構造改革に遅れがあるのではないかと問われた加藤氏は、「大変由々しきことで、決して軽くは思っていないが、過去の経営環境を見ると、リーマン・ショックや、続く円高、そして今年は震災、洪水の影響と、50年に一度、100年に一度と言われる事が起きている。それらを紐解いていくと、それなりの手は打ってきており、事業構造の修正はかなり進んでいると考えている。為替も大きく変わってきている中で、いろいろ工夫しながらやっており、屋台骨そのものは良くなってきている。言い訳にするつもりはまったく無く、まだ足らないという認識もあるが、これまでの歩みの中で、それなりの成果はあったと考えている」とした。

 また、液晶テレビ事業で韓国メーカーに勝てない要因を問われると、平井氏は「やはりパネルまわりの調達コストの影響が大きい。販売目標2,000万台体制への転換を進めることで、来年はコスト競争力が高まり、かなりアップサイドになるのではないか」と予想。同時に「お客様に喜ばれる商品を、いかに早く出していくというプロセスを加速させる必要がある」とした。

 また、加藤氏は「為替の影響も事実として存在する。我々は円高の逆風の中で戦っており、韓国メーカーさんはウォン安環境の中で事業をやられている」と付け加えた。

 さらに、日本国内でテレビ製造を続ける理由を問われると、平井氏は「テレビの製造には高い技術力が必要。自社の様々な製造工程で、画質を仕上げるなど、俗に言う“ものづくり”が重要になり、それがソニーのDNAであり、ソニーとしてのテレビの文化であり、差異化ポイントでもある。そこまで全て外に出してしまうと、そうした部分が無くなり、マイナスにしかならない」と語った。


(2011年 11月 2日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]