楽天、7,980円の電子書籍リーダ「kobo touch」

-EPUB 3.0採用、185gで厚さ10mm。「読書革命を」


 楽天は2日、電子書籍端末「kobo touch」を発表した。価格は7,980円で2日より予約を開始し、19日のサービス開始にあわせて発売する。電子書籍販売サイトも「koboイーブックストア」という名称に一新し、7月19日にサービスを開始。購入には楽天会員IDを利用する。電子書籍数は約240万冊。

 kobo touchは、楽天eブックストアのほか、家電量販店や書店でも購入可能。ビックカメラ、ソフマップ、ヨドバシカメラ、上新電機、丸善、ジュンク堂などで展開予定。

 電子書籍端末のkobo touchは、薄さ10mm、重量185gで、メモリは2GB(使用可能領域は約1GB)。最大1,000冊を収納可能。ディスプレイサイズは6型で、E Innkの電子ペーパー「Pearlディスプレイ」を搭載。1度の充電で約1カ月間利用できる。カラーはブラック、ブルー、ライラック、シルバーの4色。


「kobo touch」を披露する楽天三木谷社長4色のカラーバリエーションやオプションを用意ブラック
ブラックの背面ブラック以外の3色は白を基調に厚みは10mm
2種類の日本語フォントを搭載する

 電子書籍フォーマットはEPUBに対応するほか、PDFもサポート。JPEGやGIFファイルも閲覧できる。日本語フォントは2種類で、11種類の文字フォントを搭載。日本語フォントは、「モリサワリュウミン」と「モリサワゴシック MB101」。EPUBビューワはACCESSが開発した「NetFront BookReader v1.0 EPUB Edition」。

 IEEE 802.11b/g/nの無線LANを搭載し、プロセッサはFreeScale i.mX507。microSD/SDHC対応のカードリーダを搭載する。外形寸法は165×114×10mm(縦×横×厚み)、重量は185g。

 USBを介して、パソコンからのコンテンツ転送にも対応し、EPUBファイルやPDFなどをkobo touch上で利用できる。対応OSはWindows XP/Vista/7とMac OS X 10.5以降。


下面にマイクロUSB上部に電源スイッチmicroSDカードスロットを装備
価格は7,980円

 kobo touchの独自機能として、自分が読んだ本の履歴や、読書量、時間帯など読書ライフがひと目でわかるソーシャルリーディング機能「Reading Life」を搭載。条件に応じて様々なオリジナルデザインのバッジを付与する機能も備え、これらの情報をFacebookを通じて友人にシェアできる。

 koboイーブックストアのコンテンツフォーマットは「EPUB 3.0」で、日本語の縦書きやルビ表示にも対応。楽天会員IDを使ってコンテンツ購入すると、1%のポイントが付与される。日本語対応のコンテンツは、サービス開始時に約3万冊用意し、将来的には150万冊を目指す。なお、7月19日のサービス開始時点には、雑誌の販売は行なわないが、将来的には雑誌や写真集などの取り扱いも予定しているという。

 購入したコンテンツは、kobo touchだけでなく、パソコンやスマートフォン、タブレットなどにアプリをインストールするだけで、同じ本の続きを読むことができるようになる(近日対応予定)。おすすめ書籍の「リコメンド」機能も搭載する。

パソコンでも購入、閲覧が可能タブレットもkobo touchの続きをスマートフォンなどで
facebook連携など「ソーシャルリーディング」をアピール

■ 「日本と世界で読書革命」と三木谷社長

楽天 三木谷社長

 楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、koboの戦略を解説。「大きな夢とミッションは、いかに日本の優れた文学、文学を守り発展させていくか」と切り出し、欧州のマンガ売り場や、日本の歴史小説のアジアにおける人気、アジア圏の日本のファッション雑誌の人気などに言及。“日本のコンテンツを世界に伝える”ことをkoboのミッションとして強調した。

 一方、ゲームやケータイなどで、特に若年層の読書離れが進んでいることに触れ、米国における電子書籍市場の勃興が読書離れを止めたと説明。「日本の出版産業の活性化」もkoboの目標という。これまでも電子書籍(Raboo)に取り組んでいた楽天だが、「われわれも試行錯誤してきたが、最後に行き着いたのはオープンでグローバルなプラットフォーム。世界の様々なコンテンツを楽しめるものにしたい」と語り、オープンフォーマットのEPUB 3.0採用により、グローバル展開が容易になると説明。「日本と世界で読書革命を起こしたい」と意気込みを語った。

日本語コンテンツ150万冊を目標にKobo Mike Serbinis CEO

 コンテンツの調達については、「ほぼ全ての出版社と話をしている。手続きやフォーマット変換などで、時期はずれるかもしれないが、ほとんどの出版社と協力している」と言及。ただし、これまで楽天の電子ブックサービス「Raboo」におけるコンテンツ調達を担ってきたブックリスタとの関係が、今後どうなるかは言及しなかった。会場の説明員によれば、koboと出版社やコンテンツ提供元との直接契約が原則となっているが、現時点ではコンテンツの変換や制作などで専用の業者が入る事例が多くなりそう、とのことだった。なお、Rabooの今後については、「未定だが、何らかの形で(koboに)統合していく」(三木谷社長)とのこと。

 また、カナダに本社があるKoboが事業主体となり、日本向けに電子書籍を販売するという形となるため、サービス開始時点では電子書籍に消費税を上乗せしない方針。この点が他の国内事業者からすると不公平という指摘もあるが、「Koboはすでに海外で展開している会社で、事業の主体はKobo社である。消費税は法律上、消費者が収めるもので、筋道が立たない。法律上、徴収義務がないものを徴収するというのは大きな問題がある」と説明。「楽天としてはフェアであればいい。ルールに従う。欧州では、文化や教育の政策の一環として、ebookは3%程度と低めにしている国もある。ブラジルのように本には課税しない国もある。様々な観点から(国に)検討して欲しい」と述べた。

 海外のkoboで展開している、個人による自費出版サービスについては、将来的な課題としたが、楽天自身が出版事業を始める計画は無いとのこと。また、海外展開しているkoboブランドのタブレットについて三木谷氏は、具体的にはまだ語れないとしながらも、「Koboの社長の事業欲は強く、抑えるのに私も苦労している」と述べ、日本での投入の可能性を示唆した。

 kobo touchの7,980円という価格について「ハードウェア単体で利益が出るか?」との問には「まずはマーケットの拡大が第一義的に重要である。端末で大幅な利益を上げるということはなく、まずはマーケットを拡大したい。自助努力でコストを抑えながら、抵抗なくご購入いただけるようにやっていきたい」と語った。


(2012年 7月 2日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]