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ズーム、マイクを交換できる24/96対応6ch PCMレコーダ

XY/MSマイク付属で4万円台。マイクプリも強化

H6

 ズームは、24bit/96kHzのWAV(リニアPCM)録音に対応し、マイクの交換も可能なポータブルレコーダ「H6」を6月下旬に発売する。価格は46,200円。

 外部マイクとの組み合わせで最大6ch録音が可能な、24bit/96kHz対応のPCMレコーダ。特徴は、天面のマイクユニットを着脱可能なことで、付属のXYマイク、MSマイクのほか、別売でショットガンマイク「SGH-6」やXLR/TRSコンボジャック用アタッチメント「EXH-6」(いずれも8月発売/価格未定)を用意。目的に合わせたマイクを使って録音できる。左右側面にXLR/TRSコンボジャックを4系統備え、前述のXYマイクなどと組み合わせて最大6ch録音が行なえる(ショットガンマイク接続時は5ch)。マイクと本体の接続は独自形状の端子で行なう。各マイク/入力端子用にレベル調整のダイヤルを備えており、手動で微調整できることも特徴。

XYマイク装着時
背面
マイクを外したところ

 付属のXYマイクは左右の集音ポイントを同一軸上に揃えており、音源との距離差によるタイムラグを解消。中規模のライブハウスなどで、音源の定位感を重視した録音が可能。マイクの先端をひねって回転させることで、90度~120度の範囲で集音角度を調整できる。振動板は従来モデルH4nに比べ約1.5倍となる14.6mm径に大型化しながら、歪みも低減。最大音圧136dB SPLを実現している。

 同じく付属するMSマイクは、オーケストラなど広い音像のレコーディングに適したもの。中央の音を拾うミッドマイクと、左右のサイドマイクで構成。サイドマイクのレベルを増減することでステレオの広がりを調整できる。サイド部分をゼロにすることで、歌や楽器、ナレーションなどのモノラル収録も行なえる。録音データはMS-RAWファイルとして保存でき、ポストプロダクション時に広がりなどを変更できる。

 別売のショットガンマイク「SGH-6」は、映像収録時などに使うもので、ビデオカメラにH6をマウントして使う場合や、ピンマイクが使えない場合の会話録音などに使える。録音はモノラル。コンボ端子アタッチメントの「EXH-6」を装着した場合は、XLR/TRS入力を2つ増設可能。なお、H6本体のコンボジャック(入力1~4)はファンタム電源として給電できるが、EXH-6で増設したコンボジャック(入力5、6)はファンタム電源に対応しない。なお、これらのマイク以外にもオプションマイクを今後投入する予定だという。

右のXY、MSマイクが付属、左のショットガンマイクとコンボジャックアダプタは別売
各マイクやアダプタを装着したところ
最大6ch録音に対応
XYマイク
MSマイク
ショットガンマイク(右)と、コンボジャックアダプタ(左)
XYマイクの特徴
MSマイクの特徴
コンボジャックアダプタの用途

 マイクプリアンプも強化。従来モデルに比べ、ノイズを10dB抑えた、低歪み特性のオペアンプをプリアンプとして使用。さらに、インストゥルメンテーションアンプも備え、長いXLRケーブルを利用した際のSN向上も図っている。PADスイッチと組み合わせた幅広いゲイン設定により、H4nに比べ30dB大きな信号から、14dB小さい信号まで対応可能としている。

 デジタル一眼カメラや、デジタルビデオカメラなどに装着できるシューマウントも別売で用意。カメラ接続用にステレオミニのラインアウトを備えるほか、ヘッドフォンモニターも同時に行なうことを想定し、ラインとは別にヘッドフォン出力も備える。

 そのほか、有線リモコンや、ウインドスクリーン、ACアダプタをセットにしたアクセサリーパッケージ「APH-6」も8月に発売する。価格は未定。

ライブレコーディングの接続例
スタジオレコーディングの接続例
+4dBライン出力に対応
別売アダプタ利用時の、カメラへの接続例
リモコンやウインドスクリーンなどのアクセサリセットも発売

 録音フォーマットは、PCMの16/24bit、44.1/48/96kHzと、MP3(48~320kbps/VBR)。放送局/業務用のBWF形式もサポートする。記録メディアはSD/SDHC/SDXCカードで、最大128GB。

 録音時の機能として、一定以上の大きさの音が入ると自動で録音を開始するオートレコードや、RECボタンを押す2秒前にさかのぼって録音できるプリレコード、楽器演奏などに使えるプリカウントなどを用意。通常録音に加え、録音レベルを12dB下げたファイルも同時に記録するバックアップレコード機能も備える。再生ファイルを聞きながらナレーションやアフレコ録音ができる機能も搭載。ローカットやコンプ、リミッターも利用できる。録音後にファイルに音声でメモを追加する「ボイスメモ」も可能。楽器用のチューナや、メトロノーム機能も備える。

 パソコン接続で、USBオーディオインターフェイスとしての利用も可能。iPad/iPhone用オーディオインターフェイスとしても利用できる。さらにSkype用マイクとしての利用も想定する。

 再生時の機能として、50~150%のスロー/早送りのほか、A-Bリピート、ピッチ変更などが可能。入力信号をモニタリングする際の各トラックの音量/パン調整も行なえる。編集機能も搭載。PCMで録音後、パンやレベルを調整してMP3にミックスダウン出力することもできるほか、ファイルの分割やトリミングも可能。

 電源は単3電池4本。16bit/44.1kHz録音時の連続録音時間は約21時間。別売ACアダプタ利用時の録音中にACアダプタが抜けた場合でも、ファイルを再構築できる「リカバリー」機能も搭載(状況によってリカバリーできない場合もある)。液晶モニタは2型。外形寸法は153×78×48mm(縦×横×厚さ)、重量は本体が約280g、XYマイクが約130g、MSマイクが約85g。2GB SDカードや、DAWソフトの「Cubace LE」なども付属する

右側面
左側面
マイク接続の専用端子
マイクプリアンプの特徴
コンプ/リミッターの種類
2型液晶の表示例

演奏とアンビをバランスよく録音

サウンドデザイン/レコーディングエンジニアの岡部潔氏

 H6の発表会には、サウンドデザイン/レコーディングエンジニアの岡部潔氏がゲストとして来場。エンジニアから見たH6の特徴などを説明した。さらに、ゲストアーティストとしてHyclad(ハイクラッド)の2人も来場し、会場での生演奏を岡部氏がH6で録音。マイク性能の高さや使い勝手の良さなどを説明した。

 岡部潔氏は、山根麻以やチューリップ、沢田知可子、ユッスー・ンドゥール、篠原ともえ、高橋洋子などのレコーディングを手掛けており、映画の5.1ch収録などにも参加しているエンジニア。H6で録音した感想として「SNと位相感がすごくいい。どこまで(ゲインを)上げて録っても平気だった」と評価。付属のXYマイクについては、「お客さんの声+演奏のライブ感がちょうどよいバランスで録れる。マイクはダイアフラムが大きいのに歪まない、良い特性」とした。また、液晶モニタについても「スラントしていて見やすい。コンプやフィルタ、ファンタムを使っているかどうかが分かる。ある意味ミキサーといえるのでは」と述べた。

 また、ホールなどで定番のマイクとして使われている独ノイマンのSM69と、H6の録音を聴き比べるというデモも行なった。録音は岡部氏ではなくズームがあらかじめ行なったものだが、岡部氏はその音を聴いて「SM69は聴き慣れた音で、低域はよく出ているが、H6も広い帯域が録れていて、後からEQで調整しやすそう」と述べた。

 続いて登場したHycladは、クラシック出身のバイオリニスト・Yuiさんと、ワールドミュージックなどで活躍するギタリストの伊藤芳輝さんによるデュオ。

 発表会が行なわれた東京・神田のM's SPACE(モリダイラ楽器B1のイベントスペース)において、Hycladが演奏し、岡部氏がH6やノイマンの「U87Ai」などを組み合わせてレコーディング。録った音をその場で聴くというデモを行なった。伊藤さんは、録音後の音を聴いて「ギターの広いダイナミックレンジに対応しているように感じた。元のレベルがしっかり録れているので、これにリバーブなどを掛けて加工もしやすそう」と語った。また、Yuiさんは「オフマイクとラインが混ざって、キレイなバランスで録れていて、生で聴くような臨場感があります。いつもはリハーサルなどでiPhoneのレコーダで録音したりしますが、ここまで演奏の音色が繊細に分かって、この価格で買えるのは魅力的」と驚いていた。

Hycladのギタリスト・伊藤芳輝さん
バイオリニストのYuiさん
Hycladの演奏を、岡部氏がH6でレコーディング
録音した音をその場で再生
2人それぞれのソロ演奏も録音した
ノイマンSM69との録音データ比較(演奏はPERSONZ)
電車の走行音を録音したデータの比較も
最後にアコースティックでの演奏も
ズームの飯島雅宏CEO

 ズームの飯島雅宏CEOは、最近の取り組みとして、米国に販売会社を設立する準備のために渡米したことを報告。同社製品は、米国のハンディレコーダで圧倒的シェアを持っているという調査結果を紹介し、「日本では競合メーカーも多く、なかなかシェアを高められていない。米国並みとは言わないが、欧州並みのシェアを獲得できるようにしたい」と意気込みを語った。

(中林暁)