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ヤマハ、22年ぶりのセパレートAVアンプ
プリ/パワーをバランス接続。CX/MX-A5000
(2013/9/12 13:00)
ヤマハは、ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」(アベンタージュ)の最上位機種であり、同社22年ぶりとなるセパレートAVアンプを10月上旬より順次発売する。価格は、11ch AVプリ「CX-A5000」が262,500円、11chパワー・アンプ「MX-A5000」が315,000円。カラーはどちらのモデルもブラックとチタンを用意。発売日はブラックが10月上旬、チタンは12月中旬となる。
最大の特徴は、「CX-A5000」に11chのXLRバランス出力、「MX-A5000」に11ch XLRバランス入力を備え、プリとパワーをバランス接続できる事。機器間でのノイズの影響を低減している。
最上位のAVセパレートアンプとしては価格を抑えているのも特徴で、AVプリの「CX-A5000」は、同じくAVENTAGEの一体型AVアンプ上位モデル「RX-A3030」のシャーシを、11chパワー「MX-A5000」は、2007年に発売された一体型AVアンプのハイエンド「DSP-Z11」のシャーシをベースとして活用。新たに金型を起こさない事で価格を抑えている。
しかし、内部にはAVENTAGEやZシリーズで培った音場創生技術やオーディオ技術の集結させており、AVENTAGEが音質面で重視する「臨場感」(躍動感+余韻)を追求しつつ、「11.2chをひとつの空間として描ききる圧倒的な臨場感、映画のストーリー、ライブ音楽の実在感に没頭してしまう、感動を生み出すサウンドを目指した」という。
ハイレゾ再生も可能なAVプリ「CX-A5000」
11chのAVプリで、カナダESS TechnologyのDAC「ESS9016」を2基搭載。11ch全てに、32bit/192kHz対応DACが使われている。微小信号の再生品位を高めるD.O.P.G.(DAC on Pure Ground)コンセプトも採用され、「卓越した微小信号の再現性とディテール表現力、大音量時におけるダイナミクスの忠実な再現を目指した」という。デジタルフィルタの特性は「シャープロールオフ」、「スローロールオフ」、ヤマハのカスタムセッティングである「ショートレイテンシー」の3タイプから選択可能。
前述の通り、11ch XLRバランス出力を備え、MX-A5000とのバランス接続に対応しているが、それに加え、2chのXLRバランス入力も搭載。同社が9月上旬から発売しているUSB DAC機能搭載のSACD/CDプレーヤー「CD-S3000」など、バランス出力を備えた機器との接続性も高めている。バランス入力は4V、もしくはそれ以上の入力信号を受け取る際に使用するアッテネーター機能を備えている(-6dB/スルーを切り替え可能)。バランス端子はいずれもノイトリック製で金メッキ仕上げ。
一体型モデルのA3030と比べ、出力インピーダンスを1.2kΩから、470Ωに下げており、接続するパワーアンプの特性に与える影響を低減。また、バランスとアンバランスは相互干渉を防ぐためにリレーで切り離している。DAC以降のIV変換部分には、ハイグレードなオペアンプ「ADI OP275」を使用。抵抗にもよりグレードの高いパーツを使っている。
DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能において、24bit/192kHzのハイレゾWAV/FLACファイルが再生可能。MP3/WMA/AACの再生をサポートしている。専用アプリ「AV CONTROLLER」を使い、スマートフォン/タブレットからコンテンツ選択などの操作ができる。
また、AirPlayにも対応し、iPhoneやiPadなどのiOSデバイスや、PCのiTunesから、ワイヤレスで音楽再生が可能。iPhone/iPod/iPadを接続し、デジタル再生が可能なUSB入力も備えている。さらに、インターネットラジオ聴取のvTunerにも対応する。
空間情報をより忠実に再現するという「シネマDSP HD3(エイチディ キュービック)」を搭載。サラウンドプログラムは、これまでDSP-Z11のみに搭載されていたシネマDSP HD3専用の10プログラムを新たに加えた合計33プログラムが利用できる。
フロントプレゼンススピーカーを仮想的に再現し、立体感のある音場を再現するという「VPS」(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能も用意。フロントプレゼンススピーカーなしでの3Dサラウンドの再生ができるほか、フロントプレゼンススピーカーを含む7.1ch構成の環境では、VPS機能が仮想のリアプレゼンススピーカーを生成。シネマDSP HD3再生を実現できる。
視聴環境最適化システムの「YPAO」は、部屋の初期反射音を厳密に制御する高精度な「YPAO-R.S.C.」(Reflected Sound Control)を搭載。マルチポイント計測や、スピーカー角度測定にも対応する。
動き適応型/エッジ適応型デインターレース、マルチケイデンス検出、ディテール&エッジ強調、映像信号調整に対応したヤマハオリジナルの映像処理回路も搭載。I/P変換のクオリティにもこだわったという。映像処理回路はバイパスし、遅延を抑えるビデオダイレクト機能も備えている。
HDMIは8入力、2出力を備え、2同時出力も可能。A4アップスケーリング出力もでき、MHLもサポートする。HDMI ZONE機能も利用可能で、HDMI以外のデジタル/アナログ/ネットワーク/USB/ネットラジオも、サブルームでステレオ再生する事が可能。
デコーダはドルビーTrueHDなどのHDオーディオに対応。AM/FMチューナも搭載する。電源部にはEI型トランスを採用。銅メッキカバーを施し、アナログ/デジタル/FL管に独立した電源供給も行なっている。これにより、磁束の漏洩を抑えている。
HDMI、バランス入力以外の端子も用意。入力としてアナログアンバランス×9、8chマルチチャンネル入力×1、光デジタル×4、同軸デジタル×3、コンポジット×5、D4×1、S映像×4、コンポーネント×4、USBやEthernetを搭載。
出力は、アンバランスプリアウト×11、サブウーファ×2、アナログステレオ×1、ヘッドフォン×1、光デジタル×1、コンポジット×2、S映像×2、コンポーネント×1などを装備。
筐体にはアルミニウム製のフロントパネル、サイドパネルを採用。H型クロスフレーム、ダブルボトムコンストラクション、リジットボトムフレームも採用。クロスフレームの手前、中央に大型の電源トランスを配置し、その左右に各回路向けの電源基板を配置。奥にデジタルボード、ビデオボード、アナログボードを搭載している。
電源トランスの微細な振動も抑制するというアンチレゾナンステクノロジーを応用したインシュレータ「5番目の脚」も装備する。トリガー端子も備え、MX-A5000との電源連動ができるほか、もう1系統のトリガー端子でサブウーファなどの電源を連動させる事も可能。ACケーブルは着脱式。
消費電力は80W、待機時消費電力は、HDMIコントロールやスタンバイスルーをOFFにした状態で0.3W以下。外形寸法は435×448×192mm(幅×奥行き×高さ)。重量は13.6kg。
11chパワーアンプ「MX-A5000」
11chのXLRバランス入力を備えた11chパワーアンプ。Z11のパワーアンプ部よりを進化させ、定格出力230W×11ch(6Ω)、最大出力280W×11ch(6Ω)の、全チャンネル同一パワーを実現しているのが特徴。4Ωまでのローインピーダンス駆動にも対応する。フロントはA/B 2系統の切り替えも可能。
音質を優先した電流帰還型回路を全チャンネルに採用。電圧帰還型と比べてノイズが少なく、豊かな表現力、のびやかな空間表現、圧倒的な力感を実現したという。さらに、三段ダーリントン回路も採用。電流供給を大きく確保できる。
前述の通り、11chのバランス入力を備え、プリアンプとの間で外部ノイズの提供を低減。さらに、入力セクションからパワーアンプ回路までをバランス伝送している。さらに、11chのアナログアンバランス入力も搭載。バランス/アンバランスはリレーで切り替え、相互干渉を防いでいる。スピーカーターミナルはYラグやバナナプラグに対応した金メッキ仕上げのスクリュー式。
CX-A5000と組み合わせることで、11chのパワーアンプをフレキシブルに活用できるのも特徴。11chにサブウーファを加え、11.2chのシアターを構築できるほか、例えば5.1chのZone 1、2chシステムを2基導入したZone 2、2chシステム1基のZone 3という、3部屋のシステムをドライブできる。
バイアンプ駆動も可能で、専用のチャンネル割り当てセレクタも装備。例えば、センタースピーカー×1、フロントLR、サラウンドLRの5スピーカーを全てバイアンプ駆動したり(この場合はパワーアンプ10ch分を使用)、同じようにフロントLRとサラウンドLRをバランス駆動しつつ、センタースピーカーを3台駆動するといった事も可能。例えばシネスコサイズのスクリーンを導入したシアターなどでの利用を想定している。
電源部には、トロイダルトランスを採用。2,700μF、カスタムメイドの大容量ブロックケミコンを2基搭載する。
筐体にはH型クロスフレーム、リジットボトムフレーム、左右対称コンストラクションを採用。5番目の脚や、アルミサイドパネルも採用する。
CX-A5000との電源連動も可能で、プリアンプの電源をONにすると、パワーアンプの電源もONになるほか、パワーの電源をONにすると、接続された機器の電源をONにする事も可能。8時間のオートパワースタンバイ機能も備えている。
消費電力は650W、待機時消費電力は0.1W以下。外形寸法は435×463.5×210mm(幅×奥行き×高さ)。重量は25.4kg。
音を聴いてみる
CX-A5000+MX-A5000の組み合わせに、ユニバーサルプレーヤーを接続。CDやSACDの2chを再生してみる。
今回のセパレートだけでなく、ヤマハのAVアンプ新モデルの特徴である、ESSのDACを採用した事で、全域の情報量の多さや、中高域の描写の丁寧さが印象的だ。CX/MX-A5000の組み合わせでは、MX-A5000の高い低域再生能力が組み合わさる事で、ESSが得意とする高域の精細な表現と、低域の駆動力&情報量の多さの“釣り合い”がとれる。ESSのDACを採用したシステムでは、低域が弱いと、高域のクオリティばかりが目立ち、腰高な印象を受ける事があるが、CX/MX-A5000の組み合わせではその心配が無い。低域から高域まで、バランス良く、なおかつ情報量は非常に多い。
マルチチャンネル再生では、この特徴がサラウンドにも波及。非常にオーケストラやBDのライヴなどを再生すると、極めて高解像度なサウンドに包まれると同時に、中低域の量感も豊かで、なおかつそれが精細さの面で高域に負けていないので、「高解像度で高密度」という両立が難しい要素が同時に味わえる。定位や音像はシャープで、音場も広大だが、スカスカしたサウンドにはなっておらず、「グワッ」と押し寄せる中低域の心地よい密度感も楽しめる。
マルチチャンネルでのまとまりの良さは、ともすると中低域の量感をアップさせればそれらしく聴こえる面もあるが、CX/MX-A5000の組み合わせでは、中低域が過度に膨らまず、情報量の多さを維持しながら、力強く、包み込まれるような臨場感を再生できる。ボリュームを上げてもうるさくならず、勢いで誤魔化さない姿勢に、最上位セパレートAVアンプの確かな実力が感じられた。