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シャープ、高齢者のテレビ視聴で家族が安否確認できる見守りサービス

「見守りサービス」で利用できるアンケートの表示例

 シャープは、テレビを利用した高齢者の「見守りサービス」を実現するソリューションを、法人などに対して9月末より提供すると発表した。

 高齢者などのユーザー宅にあるテレビの電源がONになったことを、クラウド上にあるサーバーに送信することで、利用状況を家族などが確認できるサービスを可能にするもの。シャープが、法人や自治体、NPOなどに対してASP(アプリケーションサービスプロバイダ)の形で提供する。このサービスは'12年に開発したものだが、自治体との実証実験を通じて実用化のめどが立ったという。

 テレビは、シャープのインターネット対応AQUOS('09年以降のモデル)をブロードバンド接続することで利用できるほか、他社製テレビでもHDMI接続の専用STBを追加することで同様のサービスが可能となる。テレビを利用することのメリットとしては、ユーザーが今まで使っているテレビとリモコンをそのまま利用でき、特別な操作を覚えることが不要な点などを挙げている。

テレビを利用した見守りサービスのイメージ

 このソリューションには、「テレビの使用状況をモニタリングするクラウドサーバー」と、「テレビの使用状況を送信するソフトウェア」で構成するほか、「アンケートやお知らせなどのコンテンツを作成、配信するツール」も含まれている。

 これを使って、今日の健康状態などの簡単なアンケートを行なったり、地域の祭りの情報などを配信することなども可能。サービス提供者が、自社サービスに合わせたコンテンツを作成できる。

ユーザーがテレビの電源をONにすると、サーバーに情報が送信され、サービス事業者が確認できる
各事業者がアンケートなどを行なうことも可能
アンケートなどのコンテンツ作成は、テンプレートを使って簡単に作成できる
アンケートの回答はリモコンの数字ボタンを押して行なう
ゴミ収集日や、お祭りなど、地域の情報もチェックできる
「今日は何の日?」というコンテンツの表示例。事業者はテキストやイラストなどを使って作成できる

 画面はHTMLで作成され、テレビのWebブラウザで表示。コンテンツ作成画面はテンプレートに沿って文字などを入力するもので、HTMLなどの知識が無くても簡単に作成/編集できる。また、用意されたコンテンツだけでなく、各事業者が自社サービスのURLにリンクさせることも可能。

 作成されたアンケートは、利用者が電源をONにすると自動で表示。回答後に選局すると通常利用時と同様に視聴できる。回答せずに直接選局することも可能。その場合は、クラウドサーバーに「電源ON」の情報だけが送信される。

NTTマーケティングアクトの見守りサービスに採用された例

 利用する高齢者がテレビの電源をONにすると、その情報がクラウドに集約され、サービス提供事業者が「見守り画面」で3日前までの使用状況や、アンケート回答状況などを一覧表示可能。個別のユーザーIDをクリックすると、それより前の情報も閲覧できる。

 既に採用事例もあり、NTTマーケティングアクトが8月20日より開始した「シニア向けライフサポート」の新規オプション「テレビで見守り」のシステムに活用。テレビ使用状況とアンケート回答の結果を同社が収集して、電話での状態確認などのフォローも行なうサービスとしてエンドユーザーに提供している。

サービス提供事業者が利用できる、サーバー内データの確認画面
「昨日テレビを観ていなかった人」だけを絞り込んで表示することも可能
特定の人の操作状況を過去にさかのぼって確認できる
事業者向けのコンテンツ作成システム画面

テレビは見守りに適した機器

シャープ 新規事業推進本部 クラウド事業推進センター スマートクラウド開発部長の吉川耕平氏

 今回のサービスを提供するシャープ 新規事業推進本部 クラウド事業推進センターのスマートクラウド開発部長 吉川耕平氏は、サービス提供に至った背景を説明した。現在日本では4人に1人が65歳以上で、単身高齢世帯の増加や地域のつながりの弱体化などで社会的孤立や孤独死などが問題となっている。これを受けて自治体や企業による「見守り」への取り組みが活発化していることを挙げ、約500万世帯という単独世帯だけでなく、「昼間だけは1人」といった世帯もターゲットとすることで、マーケットの広がりに期待を寄せている。

 アンケートなどの様々なオプション機能を付けられることも特徴だが、吉川氏は「テレビを観るだけでできる見守り」を強調。これまで行なった実証実験でも、ほとんどの参加者が1日に1度以上はテレビを観ており、「テレビは高齢者に日常的に使用され、見守りに適している」とした。サービスの提供先としては、地域のCATV事業者なども含め「エンドユーザーとつながっている事業者は全て可能性がある」として、幅広い事業者に対して採用を呼び掛けていくという。

埼玉県北本市で行なった実証実験の概要
実験の結果、サービスの有効性を確認したという
熊本県とNTT西日本が主体となって行なった実証実験にも協力した

(中林暁)