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観たよ「アバター3」。境地に達した最高レベルの3D×HFR映画だった
2025年12月19日 18:06
映画「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」(アバター3)の劇場公開が、12月19日からスタートした。神秘の星パンドラに住む先住民ナヴィと、侵略を狙う人間たちの戦いを描くシリーズ3作目だ。
「アバター」シリーズの生みの親でもあるジェームズ・キャメロンが、本作でも監督・製作・脚本を担当。俳優の身体の動きや顔の動きを記録してCGキャラクターに反映させる撮影技術のほか、3D、そして2作目から本格導入されたハイフレームレート(HFR)、ハイダイナミックレンジ(HDR)といった映像技術も引き続き採用されている。
2作目が公開されたちょうど3年前、その映像クオリティに心底感動し、Dolby Cinema版とIMAX版を合わせて8回もアバ活して周囲から好奇の目で見られたが、最新作の映像もとにかく素晴らしい出来栄えだった。
ストーリーはさておき、キャメロン監督が長年こだわり続けた、リアルで違和感のない3D映像は境地に達したと言えるだろう。
アッシュ族“ヴァラン”を演じているのはチャップリンの孫
今回の3作目は、前作「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」の結末の直後から物語が始まる。
主人公であるジェイク・サリーとその一家は前回、海の部族“メトカイナ族”と力を合わせ人間たち(パンドラの豊富な資源を狙うRDA社)を撃退し難を逃れたものの、3作目では、態勢を整えた人間たちが再び襲いかかる。
さらに新キャラクターとして、火山帯に暮らす灰の部族“アッシュ族”が登場。彼らは火山の噴火で故郷を奪われたことから、パンドラの精霊・エイワだけでなく、エイワを信じるあらゆるナヴィを憎んでおり、部族が味わった苦しみを与えようと襲撃と殺戮を繰り返している。
サリー家は、クオリッチ大佐率いる人間たち、そして灰の部族にも囲まれ、大きな戦いに巻き込まれていく。
キャストは、サム・ワーシントン(ジェイク・サリー役)、ゾーイ・サルダナ(ネイティリ役)、シガーニー・ウィーバー(キリ役)、クリフ・カーティス(トノワリ役)、ケイト・ウィンスレット(ロナル役)、スティーヴン・ラング(クオリッチ役)などの前作メンバーほか、アッシュ族のリーダー“ヴァラン”を演じるウーナ・チャップリン(チャーリー・チャップリンの孫!)が出演している。
“アバター3”は現状最高クオリティの3D×HFR映画だ
冒頭でも述べた通り、とにかく映像は目を見張るものがある。シリーズの醍醐味である美しいパンドラの景色やクリーチャーの造形には、本作でも圧倒された。
顔の動きをデータ化する“フェイシャルキャプチャー”にも磨きがかかり、キャラクターの表情が一段と生々しくなっており(というより、疲労や苦悩、度重なる戦いで心が徐々に荒んでゆく様が顔に現れている)、ドラマパートでも心を動かさせる。
シリーズ最長の本編時間にも関わらず、3D映像による目の疲れも一切感じない。前に飛び出すような作為的なシーンであったり、キャラクターと背景が分離したようなカキワリはなく、奥へ奥へと拡がるパンドラの雄大な世界を、まるで現実世界のように体感できる。
ハイフレームレート(HFR)の切り替えも巧みだ。前作と同様、水の中へ「ドボン!」と潜ると24フレームから48フレームへ切り替わり、透明度の高いディープブルーの海の中を遊泳している感覚が味わえる。
技術的な裏付けは取れておらず、筆者の気のせいかもしれないが、最新作では水中シーンだけでなく“陸上シーン”(例えば全体の輝度が低い、夜のシーンなど)でも48フレームが多用されており、ジャダーが前作よりも感じにくくなっているように思えた。
“アバター4”、そして“アバター5”が制作されるのか?筆者には分からないが、「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」が現状最高クオリティの3D×HFR映画であることは間違いない(もしかしたら最後の3D×HFR映画になるかもしれないが……)。
映像だけでなく、リッチな音響も本作のポイントだ。今作では空、海、森など第1作、第2作で登場した舞台に加え、RDAの基地までもが戦場と化す。戦闘シーンでは轟音と共に、銃やミサイル、RDA社のマシーン、先住民が放った矢やパンドラの生物たちのサウンドが、左右、天井、背後に動き回り、いやがおうにも没入感を高めてくれる。
惜しいのは、作曲家サイモン・フラングレンによるスコアの盛り上げがもの足りなかったこと。やはり故ジェームズ・ホーナーによる、1作目のような、血沸き肉躍る尺八カンカンズンドコ節が聴きたかった。
映像・音響に関心の高いAV愛好家は、黙ってドルシネに行け
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」のレビューでも触れたが、AV愛好家であれば、4K×3D×HFR×HDR×立体音響という最新映像・音響技術が全部乗せされている劇場「Dolby Cinema」で鑑賞するべきだ。
筆者は前作、様々なフォーマットで見較べたが、やはりDolby Cinemaでの体感がダントツで1番だった。有機ELディスプレイのような圧倒的なコントラスト描写と、鮮やかな色彩は、他のラージフォーマットでは現状体感できない。
ナヴィやイクランの身体に見える細かな発光物、水面の煌めきや波紋、炎の揺らぎ、瞳の耀きや涙など、クリエイターらが精魂込めて作り込んだディテールは、全部乗せのフォーマットでこそ見えてくると思う。
とはいえ、Dolby Cinema館は残念ながら全国にまだ10カ所しかない。
最寄りにない場合は、大画面で3D×HFR×立体音響が楽しめる「IMAXレーザー/GT」の劇場、それも難しいという場合は3D×HFRの劇場で鑑賞されることを望む。
なお、本編時間は197分と非常に長い(インターミッションなし)。鑑賞前ならびに鑑賞中は、コーヒーやビールなど利尿作用の高い飲み物は、絶対に避けてほしい。









