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JVC、最大コントラスト比120万:1の4K対応プロジェクタ
新D-ILA/動的絞り搭載「X700R」。50万円を切る「X500R」も
(2013/10/25 17:06)
JVCケンウッドは、JVCブランドのD-ILAホームシアタープロジェクタとして、4K映像や3D表示に対応した2モデルを12月上旬に発売する。価格は、ネイティブコントラスト比12万:1の「DLA-X700R」が84万円。同6万:1の「DLA-X500R」がオープンプライスで、店頭予想価格は498,000円前後。カラーは、X700Rがブラック(B)のみ、X500Rはブラック(B)とホワイト(W)を用意する。
画質面の大きな特徴の1つは、最新の第6世代「D-ILA」デバイスとワイヤーグリッド(第3世代)によるネイティブコントラストの向上。画素間のギャップを第5世代の0.5μmから、第6世代では0.3μmに狭小化。ギャップ面積を40%削減した。これにより反射効率を10%向上させ、緻密で滑らかな映像表現を可能にしたという。
レンズは光学2倍ズームで、電動ズーム/フォーカス。電動レンズシフトも備え、シフト幅は上下±80%、左右±34%。
新たに4Kネイティブコンテンツの入力にも対応。3,840×2,160ドットの60pや、4,096×2,160 30pなどの映像をHDMIケーブル1本で入力できる。4K表示は、従来と同じく画素ずらし(ピクセルシフト)による4K映像表示方式で、新D-ILAデバイスや4K映像入力対応に合わせて「e-shift3」に進化。デバイスそのものはe-shift2と同じだが、デバイスの動作原理を見直したことで、チラつきが少なく精細感が高まったという。
さらに、動的絞り機能の「インテリジェント・レンズ・アパーチャー」と、明暗差が多い箇所に起こりやすい“白にじみ”を抑える「クリアブラック」も新たに搭載し、X700Rはコントラストを最大120万:1、X500Rは60万:1まで拡張可能。ネイティブコントラスト比はX700Rが12万:1、X500Rが6万:1。輝度はいずれも1,300ルーメン。
インテリジェント・レンズ・アパーチャーは、入力信号に合わせてレンズの絞りを開閉する機能で、他社製品でも動的絞りを持つ製品は存在するが、X700R/X500Rはネイティブコントラスト比が高いことから、可変の範囲を大きくする必要が無い。このため、最低限の絞りにしてもピークを維持し、画面内に白と黒が混在するような映像でもピーク感を残しながらコントラストを向上できることが大きな利点となっている。
クリアブラックは、隣接する画素間に明暗差が大きいと、明るい画素の周りに黒浮きが発生するのを抑える機能。例えば黒い画素の中央に白い画素があると、投写された映像は、白い画素の周りにやや黒が浮いたものになる。この問題はレンズの性能によっても左右されるが、黒浮きを全くのゼロにすることはできないことから、同社はレンズのフレア成分を測定して関数化。入力映像を1ドット単位で分析し、隣接する画素において明暗差が強い部分に関数化されたフレア成分を間引くことで、スクリーン上で黒浮きを抑えられる。電気信号を処理するため、黒信号がレベル0になると補正はできないが、「実際には暗いシーンでも黒成分は95%ある」(同社)とし、それを補正することで「膜が一枚取れたような、すっきりした映像になる」としている。
この映像処理自体は、RGB独立で行なうため、明暗差だけでなく画素間の色かぶりにも効果があり、「明るいシーンにおけるテクスチャもより細かく表現できる。色かぶりが消えると、色の純度も上がる」と説明している。
より自然な4K映像を表現するという独自の映像処理技術、「新Multiple Pixel Control」(MPC)も搭載。広範囲で高精度の画像検出や8バンドのフィルタリングを行なう。この8バンドフィルタは、'12年のモデルにも搭載されたが、マニュアル操作で「4Kプロファイル」の中から選択して利用する方法だった。新モデルは新たに「オートモード」を備え、4K/フルHD/SDのどの信号が入力されても1フレーム単位で信号を解析。低周波数~高周波数の各帯域の補正を、1フレームごとに切り替えて4Kに最適化した映像を表示できるという。
実際にJVCの視聴室で、DLA-X700Rの映像を体験した。4Kカメラで撮影したコンテンツでは、ネイティブコントラストの向上やクリアブラックなどの効果により、例えばジーンズ表面など繊維の細かな質感が、'12年モデル「DLA-X75R」に比べ一見して分かるほど精細に表れている。自然の映像では山肌の陰影や、アップになった人物のシワなどがよりハッキリと見えて、同じ画質設定で見比べた従来モデルはややぼやけているようにも見えるほど。クリアブラックは輪郭を強調する補正ではなく、映像信号から不要な部分を省く方式のため、不自然に線が太くなるような弊害も無い。色かぶりを抑えることで、様々な色が混在するシーンでも各色が明確に描き分けられていることも実感できた。
3D残像感を低減。スマホのリモコンアプリはAndroid/iOS両対応に
4K信号や3D信号にも対応した残像低減技術「クリア・モーション・ドライブ3」を搭載。動き検出アルゴリズムや高速LSIの採用で、動きの速いシーンなどに発生する残像感を大幅に低減。4K/3Dなどの動画を滑らかで鮮明に表現可能としている。
3Dには別売のアクティブシャッターメガネ「PK-AG3」(15,750円)を使用。プロジェクタとの同期はRF方式で、専用の3Dシンクロエミッター「PK-EM2」(10,500円)を使って行なう。X700Rのみ「THX 3Dディスプレイ規格」を取得申請中としている。
そのほか、「デジタルカメラの静止画をプロジェクタで楽しみたい」という要望を受け、X700RにはAdobe RGBに対応した画質モードの「フォトモード」を追加。従来モデルもAdobe RGBをカバーしていたが、デジカメのユーザーに対して訴求する形でこのモードを搭載したという。また、「Mastered in 4K」のBD再生などを想定し、広色域のx.v.Colorもサポートしている。
別売の光学センサーや専用のPCソフトなどを使って、設置環境に応じて画質を最適化するオートキャリブレーション機能は、上位モデルだけでなく2モデルともに搭載。色バランスのほか、ガンマ特性やカラースペース、カラートラッキングなど「画質に重要な要素を全て最適化した」という。ソフトはJVCのサイトからダウンロードできる。
スマートフォン/タブレットでプロジェクタの画質設定などができるアプリも無償提供。従来はiOSアプリのみだったが、X700R/X500Rの発売に合わせて、年内にiOS用とAndroid用の新たなアプリを公開する。画質の簡単設定や、ユーザーが設定した画質のインポート/エクスポートが可能なほか、Web取扱説明書の表示も行なえる。
入力はHDMI 2系統。HDMIは著作権保護の最新規格であるHDCP 2.2には対応しない。筐体デザインは従来モデルから変更は無く、外形寸法は455×472×179mm(幅×奥行き×高さ)、重量は、X700Rが15kg、X500Rが14.7kg。交換ランプは既存の「PK-L2312U」(25,200円)で、ランプ寿命は4,000時間(ランプ低モード使用時)。
発売に先立ち、東海/九州地区でX700R/X500Rの「先行視聴会」も実施。東海地区(名古屋市)は11月2日(土)の11時~と14時~、九州地区(福岡市)は11月7日(木)18時30分~で、定員は各回25名。詳細の案内や申し込みは、同社サイト内で案内している。
DLA-X700R | DLA-X500R | |
---|---|---|
表示デバイス | 第6世代/0.7型D-ILA(1,920×1,080ドット)×3 | |
e-shift3 | ○ | |
表示解像度 | 3,840×2,160ドット (3D再生時は1,920×1,080ドット) | |
レンズ | 2倍電動ズーム・フォーカスレンズ f=21.4-42.8mm / F3.2-4 | |
レンズシフト | 上下±80%、左右±34%(電動) | |
投射サイズ | 60型 ~ 200型 | |
ランプ | NSH 230W ランプ寿命約4,000時間(低モード時) | |
輝度 | 1,300ルーメン | |
コントラスト比(最大) | 1,200,000:1 | 600,000:1 |
ネイティブコントラスト比 | 120,000:1 | 600,000:1 |
HDMI入力 | 2 (4K/60p、3D、Deep Color、CEC対応) | |
出力端子 | トリガー×1、3Dシンクロ1×1 | |
制御端子 | RS-232C×1、RJ45×1 | |
入力対応解像度 | 3,840×2,160ドット 60/50/30/25/24p 4,096×2,160ドット 30/25/24p | |
3D(フレームパッキング) | 720 60/50p、1080 24p、1080 60/50i | |
3D(サイドバイサイド) | 720 60/50p、1080 60/50/24p、1080 60/50i | |
3D(トップアンドボトム) | 720 60/50p、1080 24p | |
消費電力 | 360W (通常待機時:7W、エコモード待機時:0.4W) | |
騒音 | 21dB (ランプモード 低モード時) | |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) | 455×472×179mm | |
重量 | 15kg | 14.7kg |