ニュース

アニソン、マイケル、明菜からソニーの良さを知る? ポストVAIOに備えるソニーストア大阪

 大阪・梅田のソニーストア大阪が、2014年8月22日、リニューアルオープンした。今年4月下旬に行なったリニューアルに比べると規模は小さいが、同店の売り上げの約半分を占めていたPCが、ソニーからVAIO株式会社に移行するともに、「ポストVAIO」ともいえる商材の創出を加速させ、4月のリニューアル後の取り組みをさらに強化する考えだ。

 また、ウェブとの連動提案や、「コト」を切り口とした新たな提案においては、全国3店舗のソニーストアのなかでも先進的に取り組んでいるのがソニーストア大阪であり、アニメや音楽、アーティストを切り口としたイベントでも成果を収めている。今年11月には、オープンから10年目の節目を迎えることから、それに向けた10周年記念イベントも現在企画中だという。リニューアルにあわせて、ソニーストア大阪の取り組みを追ってみた。

大阪・梅田のソニーストア大阪の様子

関心事をきっかけにした店舗へ

 ソニーストアは、ソニーマーケティングが運営する直営店舗である。現在、東京・銀座、名古屋・栄、大阪・梅田の3店舗を展開。大阪・梅田のソニーストア大阪は、2004年11月9日にオープンしてから、今年11月にちょうど10年目の節目を迎えようとしているところだ。高級ブランドショップなどが軒を連ねるハービスエントの4階フロアの約1,691平方メートルを使用。大阪四季劇場やビルボードライブ大阪なども入居している。

梅田のハービスエントの4階に入居している
4階フロアの約1,691平方メートルを使用
リニューアル後の店内の様子
大画面画像を体験できる薄型テレビコーナー
話題のラクルアンシェルの4K映像。85型4Kの迫力は絶大。土日にはこの映像を目当てに訪れる人も
ソニーストア大阪の堺本浩司店長

 ソニーマーケティング カスタマーマーケティング部門ショールーム&ストア運営部 ソニーストア大阪店店長の堺本浩司氏は、「お客様の関心事をきっかけにして、ソニー製品を好きになっていただき、人から人へとストーリーを伝えることを大切にする店舗を目指してきた」とする。

 ソニーストア大阪の特徴は、展示されている数多くのソニー製品を体験することができ、購入や利用方法については、「スタイリスト」と呼ばれるコンサルテイングスタッフに気軽に相談できる点にある。今年4月、そして8月に相次いで行なわれたリニューアルも、それを踏襲したものとなっている。

 たとえば、タブレットの場合には、3面展開で展示。店舗入口から入った正面の円卓には、Xperia Z2 Tabletを複数台展示し、自由に触れる環境を用意。さらに一歩進んだところには、タブレット用の各種アクセサリー類を展示して、タブレットとアクセサリーを組み合わせた購入提案を行なっている。そして、その奥には広いテーブルを用意し、Xperia Z2 Tabletとと各種デバイスとの連動提案によってどんな利用ができるかといった具体的事例を示している。ここでは、「Xperia×Photo」、「Xperia×TV」、「Xperia×PC」といったように、他のデバイスとの組み合わせがタブレットの利用シーンの広がりにつながることを示し、店内のスタイリストが具体的な利用提案を行なえるようにしているのが特徴だ。

円形の展示台ではタブレットを自由に触れるようにしている
タブレット向けの各種アクセサリー展示にも力を注ぐ
タブレットを活用した具体的な事例を提案
ソニーストア大阪限定サービスの「おうちで決断キャンペーン」

 加えて、自宅で体験するために「おうちで決断キャンペーン」という制度を用意。Xperia Z2 Tabletを持ち帰り、家で利用することができるといった新たな提案も開始した。この仕組みは、店頭でクレジットカードを利用して仮購入手続きを行ない、そのまま新品を自宅に持ち帰り、3週間のお試し期間中、自宅でXperia Z2 Tabletを利用。期間終了後、気に入ればそのまま購入手続きが有効になり、気に入らない場合には来店してキャンセルすればいいというものだ。

 この制度は、9月7日までの限定で、他店にはないソニーストア大阪オリジナルの取り組みになるという。「初めての試みであるが、まずまずの手応えを感じている」と堺本店長は語る。今後、この制度の実績評価次第では、他の製品や、他の店舗への展開も検討していくことになりそうだ。

デジカメ体験会をより身近な形で開催

店舗入口正面にはデジタルカメラを展示。体験できるように工夫している

 このように製品に触って体験できる取り組みは、数々の展示コーナーで見ることができる。たとえば、店舗入口正面にはデジタルカメラを展示。αシリーズやサイバーショットのすべてのラインアップを揃え、自由に触れる状態としているのに加えて、レンズの貸し出しサービスも実施している。

 さらに、店舗入口左側には、デジタル一眼カメラの教室を開催するスペースを用意。ここで「デジタル一眼カメラ α Cafe体験会」を実施し、αシリーズの機能を知ってもらったり、カメラの楽しさを共有できるようにしている。

デジタル一眼カメラのα Cafe体験会を随時実施。ソニーストア大阪の大きな目玉に
サイバーショットも全種類を揃えて展示する

 従来は、体験会の名称で回数を限定して開催していたが、4月からは社内講師3人、プロカメラマン2人による体制を整え、1カ月の3分の2はなにかしらのセミナーやイベントを行なうようにしている。土日には1日7回ものセミナーを開催することもあるという。

 「カメラを購入したが、撮影した写真を見せる相手がいないという場合もある。お互いに写真を見せ合うことで、より楽しくカメラを利用していただける。デジタル一眼カメラ α Cafe体験会では、単にセミナー形式で開催するのではなく、3人程度の参加者でお互いの参加者が意見交換できるようなコミュニティ感覚の形式も用意している。また、店内だけのセミナーに留まらず、お出かけ体験会も企画しており、昆虫館での撮影会、梅田スカイビルでの撮影会、夕景の撮影会など、プロカメラマンと屋外で撮影するといった体験を通じて、カメラを楽しんでもらえるようにしている」という。

 さらに、ハンディカムコーナーでは、高画質や手ぶれ補正の体験ができるほか、アクションカムは、自転車に搭載して利用するといった具体的な利用シーンを紹介。店舗内に自転車などのアウトドア製品を持ち込んだシーン展示はソニーストア大阪が最初に取り組んだものだという。

ハンディカムコーナーは高画質や手ぶれ補正も体験できる
4K撮影が可能なFDR-AX1も展示
アクションカムは具体的な利用シーンを紹介。この展示手法はソニーストア大阪が最初に取り組んだもの

 また、プレイステーション4などのゲームコーナーを拡張。PS Vita向けゲームソフト「フリーダムウォーズ」の発売日には、同ソフトの開発に携わったソニー・コンピュータエンタテインメントの吉澤純一プロデューサーをゲストに呼び、ソニーストア大阪の店頭で来場者と吉澤プロデューサーが、一緒にプレイを行なうといったイベントも行なわれた。現在、ソニーストアを運営するソニーマーケティングの社長と、SCEJAの社長を河野弘氏が兼務していた(8月末でSCEJA社長は退任)ことも、このイベントの実現には見逃せない要素のひとつだ。

プレイステーション4をはじめとするゲームの展示スペースも拡大している
ディズニーとのコラボモデルも展示販売していた(現在は販売終了)

アニソン試聴会など独自の切り口で集客

 このように実際に体験できる場を提供するのが、ソニーストア大阪の特徴であるが、ここにきて新たな提案の切り口を開始しており、それが成果につながっている。

 その新たな提案の切り口とは、コンテンツからの提案。言い方を変えれば、堺本店長がいう「関心事」に対する提案だ。これまでソニーストア大阪で行なってきたイベントは、「予算10万円で始めるハイレゾオーディオ」、「ステレオアンプ体験会」、「オーディオプレーヤー体験会」、「ホームシアター体験会」といったように、製品を切り口にしたものだった。

 だが、ここにきてソニーストア大阪で開催しているイベントは、「マイケル・ジャクソンを楽しもう」、「ビリー・ジョエル体験会」、「4K大画面で体感するアニメ」、「アニソン試聴会」といったように、コンテンツを切り口としたものが増えているのだ。

 「これまでの手法ではソニーの製品を知っている人、ソニーの製品に関心がある人が来場者の中心だった。しかし、コンテンツの切り口からのイベントでは、ソニー製品を知らない人たちが、数多く訪れるようになった。ソニーファン拡大につながることを期待している」とする。

 マイケル・ジャクソン体験会では、シアターを利用して、ハイレゾでマイケル・ジャクソンの楽曲を再生。マイケル・ジャクソンファンたちが横のつながりで連絡を取り合い、独自に集客が始まったり、マイケル・ジャクソンの格好を真似た来場者が訪れるなど、これまでのソニーストア大阪にはなかったユーザー層が来店しているという。

 同様の取り組みは、アニソン(アニメソング)でも行なわれている。幸いにもソニーストア大阪には、アニメに詳しいスタッフがおり、そのスタッフを中心に昨年9月から、アニメに的を絞った体験会を開催している。「最初は数人規模での開催だったが、いまではシアターに入りきれないほどの盛況ぶり。担当スタッフが、学園祭に呼ばれるといったことも起こっている」という。

 大画面の4Kテレビや4Kプロジェクターでアニメを視聴する楽しさや、アニソンをハイレゾで試聴するといったことを通じて、もっとアニメを楽しむためにソニー製品に注目してもらうというわけだ。これもソニーストア大阪が独自にスタートした企画であり、新たな顧客層を獲得する施策として、ソニーマーケティング社内でも注目を集めているという。

 このアニソンへの取り組みは、特別企画にも発展している。現在、ソニーストア大阪では、フジテレビ(関西テレビ)系列で放映中の「残響のテロル」とコラボレーション。「残響のテロル」挿入曲をハイレゾ音響で聞くことができるデモストレーションコーナーを用意している。ここでは、声優陣の直筆サイン入り台本も展示されるなど、ファンには見逃せない展示だ。

「残響のテロル」とソニーがコラボレーションした展示を展開
「残響のテロル」挿入曲をハイレゾ音響で聞くことができる
声優陣の直筆サイン入り台本も展示されている

「大人のソニー」でハイレゾを訴求

 一方で、コンテンツからの切り口としては、「月刊 大人のソニー」との連動も、ユニークな取り組みのひとつだ。「大人のソニー」は、My Sony Clubの会員を対象に発行しているメールマガジンで、月1回、40代以上を対象にした形でコンテンツを配信している。

 この企画は、そのなかで紹介したコンテンツの一部をソニーストア大阪で体験できるというものだ。具体的には、大人のソニーで紹介した中森明菜やマイケル・ジャクソンの楽曲をハイレゾで試聴できる環境を用意。展示スペースには、「アイドルの枠を超えた圧倒的な歌唱力をハイレゾで」、「聴きどころは、マイケルの『タ!』『ツ!』」といったキャッチフレーズとともに、ハイレゾならではの音質を訴求している。

 「ハイレゾの良さを知るには、聴き慣れた歌の方がわかりやすい。40代の人たちが、かつて聴いていた音楽をハイレゾで聴いてもらうことで、その違いを感じてもらいたい」とする。

ハイレゾの視聴コーナーも充実している
ハイレゾのターゲットを40代においた展示としている
ハイレゾを聞くには聞き慣れた歌がわかりやすい。ここでは中森明菜のハスキーボイスを視聴できる
そして、マイケル・ジャクソンの「タ!」「ツ!」もハイレゾの聞きどころ
ウォークマンコーナーも視聴できることを重視した展示
ヘッドフォンのコーナーも展示を充実させ、体験を重視

 また、8月、9月限定で、月~金曜日午後に限られるものの、事前予約をすれば約1時間にわたって、シアターを無料で利用でき、大人のソニーで紹介した楽曲や、自ら気に入った楽曲を持ち込んで、ハイレゾを楽しむことができる、まさにプライベートシアター感覚で、ソニーストア大阪の施設を利用できるハイレゾ体験サービスも行なっているのだ。これもコンテンツの切り口からの提案のひとつだ。

ソニーストア大阪に常設されているシアターの様子。アニソン試聴会などの独自イベントもここで行なわれる
様々なプロジェクターを体験できる
スピーカーも選んで視聴することができる

VAIO中心の販売体制から脱却

 ソニーストアにとって、ソニーのPC事業売却は大きな影響があった。というのも、ソニーストアにとって、売上高に占めるVAIOの構成比があまりにも大きいからだ。

 ソニーストア大阪の場合、2013年3月の販売実績では、47%をVAIOが占めた。2番目の構成比となるのはデジタルカメラなどのデジタルイメージング製品で23%、3番目となるウォークマンなどのPAVが21%。これらと比べても、その構成が大きいことがわかる。つまり、ソニーがPC事業を売却したことで、ソニーストア自らの販売体制を再構築しなくてはならないというわけだ。

 ソニーストア大阪では、4月のリニューアルで、VAIOの展示を終了していたが、7月1日のVAIO株式会社の設立に伴い、VAIOブランドのPCを再展示した。展示場所は、ソニーストア大阪のメイン入口から入ってすぐ右側。エスカレータでソニーストアがある4階にあがると最も見えやすい場所にある。

新設されたVAIOコーナーの様子。入口から入って右側に続く最も目立つ場所に置いてある
同じハービスエントに出店しているマザーハウスとのコラボレーションによるPCケースも展示販売

 長年に渡ってVAIOを担当しているソニーストア大阪の成田秀樹氏は、「ソニーストア大阪の常連のお客様のなかにはVAIOユーザーが多く、VAIOが無くなってしまうのではないかということを気にかけていた方々も多かった。7月にソニーマーケティングが国内総販売店として販売を行なうと発表したことで、我々としても改めて自信を持ってお勧めすることができる。お客様の間からも、ソニーストアが引き続き扱ってくれるのならば安心だ、という声を聞く」と語る。

 ソニーストアでは、「まるまるアシスト」と呼ばれるサービスを用意。VAIO購入者が安心して利用できる環境を提供するために電話などでサポートする体制を整えている。これまでにも、ソニーストア大阪でVAIOを購入したユーザーの5割以上が同サービスに加入しており、ソニーストアで購入することに安心感を求めているユーザーが多いことがわかる。

 VAIO株式会社のVAIOに関しても、継続的にこのサービスを提供。これによって、安心してVAIOを購入できる環境を維持する考えだ。だが、新たなVAIOが、従来ほどの販売構成比を占めるようになるとは考えにくい。ソニーストア大阪が、デジカメやハイレゾオーディオ、そしてコンテンツからの切り口によって、新たな顧客層の開拓に積極的に乗り出しているのも、「ポストVAIO」といえる商材を創出しなければならないとの危機感が背景にあるといえよう。

ソニーストア大阪店の購入相談や購入手続きができるコーナー
ソニーお客様ご相談カウンターは一番奥に配置。落ち着いた環境で相談できる

10周年を迎えるソニーストア大阪

 ソニーストア大阪は、2014年11月に、開店10周年を迎える。ハービスエントも同時に10周年を迎えるため、ソニーストア独自の10周年企画に加えて、ハービスエント全体を巻き込んだイベントも実施されることになる。

 梅田は再開発が進んでおり、とくにJR大阪駅北側には、グランフロント大阪のオープンによって、梅田の人の流れにも変化が起きている。ハービスエント全体でも集客数はやや減少傾向にあり、10周年をきっかけとした巻き返しも注目される。

 「梅田に月1回訪れている人を対象に調査したところ、ソニーストア大阪に訪れた経験がある人は23%に留まっている。また、ハービスエント全体では月間80万人の来場があるが、ソニーストアの来場数は2万人強。ソニーストアの魅力をもっと伝えて行かなくてはならない」と、堺本店長は語る。

 現在、10周年の企画に向けて、様々な案がスタッフの間からあがってきているという。様々なアイデアを創出して店舗を盛り上げてきたソニーストア大阪の10周年イベントがどんなものになるのかが注目されよう。そこで新たなソニーストアの形が生まれるかもしれない。

ソニーカードユーザー向けに用意された端末。来店するたびに10円分のポイントを付与
8月31日までは夏休みの子供を対象に「美ら海スタンプラリー」を開催していた
ソニーストア大阪店内をまわりスタンプラリーを完成させるとシールをプレゼント

(大河原 克行)