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12月1日は「デジタル放送の日」、DpaとNexTV-Fが式典。難視聴世帯ゼロへ。4K、8Kへ貢献
(2014/12/1 11:06)
地上デジタル放送の開始から11年を迎えた12月1日、デジタル放送推進協会(Dpa)と次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は「デジタル放送の日」の記念式典を都内で開催。2015年3月31日に終了予定の「地デジ難視聴対策衛星放送」と、ケーブルTV局によるデジアナ変換サービスの状況や、4K試験放送「Channel 4K」の今後についての説明を行なった。
地デジ難視聴対策衛星放送は来年3月末に終了
アナログ放送終了時に地上デジタル放送が良好に受信できない世帯などに向け、暫定的に衛星放送を使って地上デジタル番組を放送する「地デジ難視聴対策衛星放送」を、来年3月末で終了する事が今年の7月に全国地上デジタル放送推進協議会総会にて確認された。終了後、このチャンネルは4K、8K放送に活用される事が検討されている。
デジサポ(総務省テレビ受信者支援センター)は、こうした世帯などへの対策を行なうために全国8カ所に拠点を配置。良好な受信を行なうためには、裏山にアンテナを設置したり、共同受信施設を設置するなどの必要があるため、デジサポでは受信場所の調査や工事の設計などの支援を行ない、工事経費の一部助成をするなど、来年3月に難視聴対策衛星放送を確実に終了できるように対策を推進していくという。
難視聴世帯数は今年の3月末で約12,000世帯だったが、デジサポの活動や、難視聴対策衛星放送において、利用者毎にメッセージを表示できる「EMM方式」を使った告知スーパーの表示などを行なう事で、9月末には958帯、11月末に約500世帯まで減少。来年3月末には0世帯を目指している。
さらに、アナログテレビでデジタル放送を視聴するための、ケーブルテレビのデジアナ変換も、同時期に終了を予定。現在、1台目のテレビからデジアナ変換で視聴していると推定される世帯数は4.2%(108万世帯)、このうち約半数の約54万世帯は、ケーブルテレビと多チャンネル契約を行なってる契約世帯だという。
周知の取り組みにより、デジアナ変換利用者の終了時期の認知度は93.3%にのぼっているが、今後も周知広報の徹底を行なうため告知テロップの強化。スポットCMも「テレビが、見られなくなる」など、より強いメッセージでデジアナ変換の終了を印象付けるものを放送予定。10月から、一定時間番組を中断して、終了告知を表示するブルーバックも実施している。
さらに、生活困窮世帯、高齢者世帯等への周知については、自治体の協力を得て実施されている。
4K試験放送の現状、そして8K放送へ
次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が、6月に開始した4K試験放送「Channel 4K」は、10月1日から放送時間を拡大。11月には初めてスポーツ生中継を実施。4Kの番組企画を全国の放送局や製作会社に募り、150件以上の応募があり、来年3月までに約40本の番組を編成する予定。
ハードウェアでは、6月にシャープから対応レコーダ「TH-UD1000」が、ソニーからも10月に4Kメディアプレーヤー「FMP-X7」が発売。東芝からは、4Kチューナを内蔵した液晶テレビレグザ「Z10X」シリーズが発売されている。
式典ではこうした展開を紹介すると共に、今後の取組と課題についても説明。
今後は試験放送の安定運用すべく、番組編成の拡大、コンテンツの配信、受信機の普及推進を実施。さらに、2016年以降に向け、実用放送を考慮した技術仕様、運用規定を策定していく予定。
総務省がまとめたロードマップでは、2015年3月に124/128度CSにおいて4K実用放送を開始、CATVとIPTV(RF/IP)でも4K実用放送を開始。2016年にはBS(衛星セーフティネット終了後の空き周波数帯域)において、4K試験放送(最大3チャンネル)と8K試験放送(1チャンネル)を開始する予定だ。
これを受けてNexTV-Fでも、2016年のBSでの試験放送に向けた体制、編成方針などの検討、4K、8Kコンテンツの確保へ貢献していくとする。
さらに、国内外で4K、8Kのプロモーションも実施。技術的な実証の成果や、コンテンツ制作上のノウハウや課題を共有する事で、次世代テレビサービスの実用化と普及に貢献していくとする。
式典はDpaとNexTV-Fが共同で開催
Dpaの福田俊男理事長は、デジタル放送への移行が来年3月に完了する事に触れ、「皆さんの努力で、この国家プロジェクトが完了するのは感慨深い。空いた周波数は、4K、8Kというその後の時代を担う伝送路として検討されている。いわば、放送の未来への架け橋であり、象徴的な出来事だと言える。今回の式典は、DpaとNexTV-Fが共同で開催しているが、そういった意味も含めている」と説明。
NHKの籾井勝人会長は、「8Kは日本で生まれた世界一の放送技術。放送だけでなく、デジタルサイネージや防災、医療など、様々な分野で飛躍的なイノベーションを引き起こすものと期待されている。オールジャパンで研究に取り組み、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、世界中の人があっと驚く映像を提供したい。また、スマートフォンやタブレットで自由自在に、いつでもどこでもコンテンツを楽しむ時代がもうすぐやってくる。ICT(情報通信技術)を活用し、最高品質のおもてなしで、世界の人をお迎えしようではありませんか」と、2020年に向けた8K放送への決意を語った。
民放連の井上弘会長は、「BSデジタル放送も開始から14年となり、存在感が増している。我々放送事業者としては手を携えて、放送の価値向上に向けて一層の努力をしていきたい。環境や技術、社会は非常に速いスピードで変化している。我々放送業者はしっかり挑戦して、視聴者により良い放送サービスとしてお返ししていきたい」とする。
JEITAの高橋興三筆頭副会長(シャープ社長)は、「米国でVODが話題となっていた頃でも、調べてみると視聴時間の80%はスポーツなどのライブ番組が観られていた。つまり、ライブコンテンツは非常に重要。また、8K放送になると、高精細で素晴らしい映像を届けできるだけでなく、遠隔医療での活用など、様々な可能性がある。2020年はICTを含めた、情報の流動化、クオリティが格段にアップする時期になるだろう。(JEITAとしても)各社全力をあげてそのお手伝いをしていきたい」と語った。
NexTV-Fの須藤修理事長は、4K、8K放送やスマートテレビについて、「家庭向けジャーナリズムやエンターテイメントに新しい地平を切り開くもの。また、少子高齢化社会を迎える日本で、医療サービスなどを受ける基板としても重要な役割を果たす。広告の高度化や、音楽や舞台、パフォーマンスのライブビューイング、8K、4Kでアートにチャレンジしたいという芸術家もいる」と、次世代放送が持つ可能性を紹介した。
式典の会場には、各家電メーカーが4K対応のテレビやレコーダなどを展示。シャープのディスプレイを使った8K映像のデモや、NHKの放送通信連携「NHK Hybridcast」サービスの紹介なども行なわれた。
全国の放送局57社や、広告・放送・機器メーカーなど88社が参加しているマルチスクリーン型放送研究会も出展。セカンドスクリーンサービスの実用化を目指す団体で、既に「SyncCast」というトライアルサービスを実施中。さらに、「ハイブリッドキャスト技術仕様 V2.0」(Hybridcast 2.0)が実用化された段階で、そのプラットフォームでの展開も想定している。
放送内容と連動し、視聴者が持っているスマホなどの画面に番組の追加情報、CMで流れている製品の情報などを表示できるもので、現在は時間で放送と同期。スマホのアプリは、インターネット経由で番組やCMと連動するための制御信号を受け取っている。様々なテレビで利用できるよう、この仕組を活かしながらも、今後はHybridcast対応テレビと連動する場合には、テレビから無線LAN経由で制御信号を受け取れるようにする予定。
番組とCMでオンエアトライアルも、全国34局、延べ181番組で実施。19スポンサーを獲得するなど、今後もビジネストライアルを行ない、マネタイズに向けた取り組みも加速していくという。
10月の「CEATEC JAPAN 2014」にも出展していた、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビの在京キー局とNHKが施策した「共通アプリ」も参考展示。Hybridcast対応のアプリを、各放送局が個別に作るのではなく、共通アプリとして協力して開発するもので、放送で「○○アプリをスマホやタブレットにダウンロードすれば、放送がより楽しめます」といった案内をする際に、各局・各番組が同じアプリを案内すればよく、視聴者にわかりやすく、使いやすいHybridcastを目指して開発が進められている。
連携用アプリの望ましい仕様を検討し、IPTVフォーラムにて運用ルール化することで、機能や使い勝手の共通化を図っており、テレビとの接続、放送連動、テレビ操作、文字入力などが可能。放送局が独自に開発したアプリへのリンクも設けられる、ポータル的なアプリになる予定。