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富士通テン、重量を30%削減した車載スピーカーを開発

燃費向上へ。音質劣化せずフレームと磁気回路見直し

 富士通テンは13日、音質を維持しながら従来比約30%軽量化したという車載用スピーカーを開発したと発表した。ネオジウムマグネットを搭載したタイプとフェライトマグネット搭載タイプの2種類で、いずれも16cm口径。同社は「業界トップクラスの車載用軽量スピーカー」としており、車両軽量化により燃費向上に寄与するという。

新開発の車載用軽量スピーカー(ネオジウムマグネット搭載タイプ)
フェライトマグネット搭載タイプ

 ネオジウムマグネット搭載タイプは、同社の従来モデルに比べ約30%軽量化した135gで、フェライトマグネットのタイプは、同35%軽量化の190g。既に国内の自動車メーカーに採用され、順次納入を開始している。現時点で納入が確定しているスピーカー数量を、従来の仕様で準備した場合と比較すると、重量で年間約430トンの削減が可能としている。

 軽量化は、スピーカーの重量のうち約80%を占めるフレームと磁気回路の見直しにより実現。単純にフレームを薄肉軽量化すると強度の低下により不要共振が生まれて音質も劣化するが、新開発のスピーカーは、強度解析シミュレーション技術を用いたフレーム形状の最適化により、薄肉化を図りながら振動を分散させる「振動分散型フレーム」を開発。強度確保と音質向上のため、フレーム脚部を2本上下に配置し、断面形状を変更した。フレームの平均肉厚は1.0mmまで薄くしている。

従来品と開発品のフレームの違い

 磁気回路は、マグネットの磁気を伝えるヨークを薄肉化すると、振動板を駆動するための磁束密度が低下し、音圧が低下して音質も劣化する。そのため、磁気回路シミュレーション技術を用いて磁気回路形状の最適化を図り、磁束密度を確保しながら体積を最小化できる形状を追求。これにより貫通穴を大型化することで、空気の流れを動きやすくして振動系の動きを良くして低音域のレスポンスを向上したという。

開発した技術は、今後16cm以外のサイズのスピーカーにも応用。国内外自動車メーカーへの提案を行ない、より多くの車両に搭載されることを目指すという。

磁気回路の変更点

(中林暁)