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キューテック、4Kテレビ開発向け主観評価用映像を発売
非圧縮で総容量は14TB。HDRやBT.2020対応も
(2015/4/21 18:59)
キューテックは、4K/8Kディスプレイや、4K Blu-ray Discプレーヤーなどの研究開発や設計製造における評価や調整を目的とした高画質4K主観評価用動画像集「Ultra Hi-Definition Reference Software for Professional QT-4000series」を4月21日より発売する。価格はオープンプライス。同社直販と一部代理店のみで販売し、民生向けの販売は行なわない。
QT-4000は、主観評価動画を全40シーケンス合計73分、テスト信号は全15パターン計17分を撮影。機器メーカーなどは必要なシーンを選択して購入できる。データ総量は14TB。
解像度は3,840×2,160ドット、アスペクト比は16:9、フレーム数は60Hz、表色系はBT.709(HDTV)だが、オプションとして広色域規格のBT.2020を用意。HDRについてもオプションで用意する予定という。マスター仕様は16bit 4:4:4 DPX。マスターは非圧縮となるが、総データ容量が14TBと膨大なこともあり、XAVC(~600Mbps)や、XAVC-S(60~150Mbps)、H.265/HEVC(~100Mbps)などでも提供する。
映像評価項目は、総合評価、解像度、広色域色空間再現性、暗部階調表現(γ/リニアリティ)、ハイライト階調表現、スキントーンデテール、視野角、動画解像度、圧縮画質評価、テストシグナルなど。テレビやディスプレイメーカーは、QT-4000シリーズを用いて製品開発時の画質評価や改善のための指標として利用できる。
映像は4Kカメラとしてソニーの「F65RS」を、レンズにはCarl Zeissの大口径シネレンズを採用。編集やカラーグレーディング工程は、Quantel iQ Pabloによる被圧縮GBR 4:4:4プロセスで行なわれている。
極力素材そのものに手を加えずに、撮影、編集を行ない、スタジオ撮影による抽象物映像や、京都などのロケーション撮影による実写映像などを収録した。
日本のテレビ画質を引き上げる4K映像に。8Kも
キューテックの梶尾徹社長は、同社の事業概要について説明し、主要業務のポストプロダクションなどで、高解像度映像の編集製作に取り組んでいることを紹介。2014年には編集設備をフル4K化し、4K映画のDCPマスター納品の対応など、制作環境の4K対応は着実に進んでいるとし、「2020年の東京オリンピックに向けた8K映像など、高解像度映像の画質改善に貢献していきたい」とし、QT4000シリーズの採用を呼びかけた。
プロジェクトリーダの小池氏は「AVチェックディスクの30年の歴史」と、その系譜の最新作となるQT-4000シリーズについて説明した。元々、パイオニアが'80年代にLDに参入する際に高画質なディスクが無かったため、開発したディスクがその先駆けで、'86年に最初のデモディスクを発売。以降、テレビの開発の現場などで重宝されてきたが、一方で設計開発者からは、「対応が厳しい」、「やめてほしい」といわれるような映像パターンもわかってきたという。
そこで、あえてそうした映像をリファレンスディスクに収録し、テレビの開発現場で使ってもらうことで、開発側でそうした“弱点”を修正する動きがでてきたという。こうした流れを小池氏は「ある種の世直し」と表現。その最新版としてQT-4000シリーズを紹介した。
4K対応にあたり、新たに広色域規格のBT.2020に対応したほか、人物・中小物を意識した描写表現や没入感表現と質感評価、平面評価だけでなく空間(奥行)方向での評価など考慮して制作。「2K画質が『鮮やか』、『ナチュラル』とすれば、4Kは『雅』や『仄か』」とその画質の違いを表現し、特に奥行き感の違いを意識して制作したという。
また、動画解像度の評価、測定パターンも、コーデック性能やシステム全体の映像表現力などを勘案しリニューアルしている。同パターンは、計測技術研究所が開発したものをライセンスして収録している。
近年はテレビメーカーだけでなく、テレビやスマートフォン向けの半導体メーカーなどにも納入しているという。
また、4Kだけでなく、8K時代も想定し、8K版「QT-8000」の制作も予定している。実際にQT-4000シリーズの撮影に用いた「F65」のCMOSセンサーは8K対応のため、一部コンテンツは8Kでも制作し、QT-8000シリーズとして準備中とのこと。会場ではBOEの98型/8Kディスプレイを用いた8K再生デモも行なわれた。
また、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏も登壇。日本のテレビ開発の現場で実際に利用されてきた同社リファレンスソフトの功績などを振り返ったほか、QT-4000を使ったコンテンツ評価のポイントなどを解説した。