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音楽配信「HQMクラウド」がiPhone対応。HQM STOREではDSD 6作など追加

 クリプトンは、ハイレゾ音楽配信サービス「HQM STORE」で展開している、手軽な楽曲再生サービス「HQMクラウド」を、iPhoneから利用できるアプリ「HQM クラウド・プレーヤー」を25日に提供。クラウド上の音楽だけでなく、iTunesで転送した楽曲の再生も可能。ハイレゾファイルの再生にも対応する。無償で利用できる。

iPhone向けの「HQM クラウド・プレーヤー」アプリ

 また、HQM STOREで新たに配信する楽曲情報も公開。オリジナルスタジオマスター・シリーズを強化し、高橋アキの新譜、DSD 6タイトルなどを追加配信する。

iPhone用アプリ「HQM クラウド・プレーヤー」

 HQM STOREではハイレゾファイルの配信を行なっているが、音楽をより手軽に楽しむものとして同時に「HQMクラウド」も用意。FLACなどでPC向けに配信している楽曲を購入すると、HQMクラウドとして、iOS端末向けに配信するApple Losslessの48kHz/24bit、または44.1kHz/24bitのファイルも利用できるようになっている(クラウド対応のタイトルのみ)。

 クラウド上にあるApple Losslessデータは、その楽曲を購入したユーザーであれば回数制限なくダウンロードでき、iPad向けアプリを用いて、iPadに一旦楽曲をダウンロードして再生できる。ストリーミング再生はできない。ファイルサイズの大きなハイレゾ楽曲を、常にiPadなどに保存するとストレージが不足するため、聴きたい時にダウンロードして楽しめる使い勝手を特徴としている。

 新たに公開されたアプリ「HQM クラウド・プレーヤー」は、そのサービスをiPhoneでも利用可能にするもの。機能はiPad版とほぼ同じで、HQMクラウドの楽曲だけでなく、iOSの標準音楽プレーヤー「Music」に登録されている楽曲も再生できる。さらに、FLAC/WAVのハイレゾファイル再生も可能。USB DACと接続し、192kHz/24bitの再生を行なう事もできる。DSDには非対応。

クラウドからダウンロードした楽曲、「Music」に登録されている楽曲を個別に表示できるほか、一括して表示させる事もできる

 現在のiPad版に無い機能として、プレーヤーのデザインを8種類用意。ユーザーが自由に切り替えて楽しめる。

 さらにコントローラーをイメージした操作ボタンを大きく配置。タブレットと比べてディスプレイが小さなスマホでも操作しやすいように配慮している。対応端末はiPhone 4/5/6で、iOS 7以降が必要。

プレーヤーのデザイン変更も可能
ライナーノーツを読む事もできる

HQM STOREでの新配信楽曲情報

 7月25日に、カメラータ・トウキョウから発売予定の高橋アキの新譜「高橋アキ プレイズ エリック・サティ2」が、CD発売と同時にHQMでハイレゾ配信される。FLACの192kHz/24bitで、価格は3,500円。

 現存するアナログテープのスタジオマスターをハイレゾでデジタルリマスタリングする「オリジナルスタジオマスター・シリーズ」の新ラインナップとして、8月7日には、「ベルリン・フィルハーモニック・デュオ/驚異のデュオ」、「遠山慶子 Plays ドビュッシー&ラヴェル」、「ベルリン弦楽合奏団 ロッシーニ:3つの弦楽ソナタ」をDXD形式によるDFF 2.8MHzで配信。価格は各3,300円。

 同じく8月7日には、オリジナルスタジオマスター・シリーズのFLAC 192kHz/24bit配信で、「寺内タケシとブルージーンズ/ハイレゾ・コレクション-2(エレキサウンズ)」、「寺内タケシとブルージーンズ/ハイレゾ・コレクション-33(ヒット歌謡&スタンダード)」、「石田新太郎/カントリー・ミュージック」、「ジョー山中/3オクターブの証明」を各3,500円で配信する。「寺内タケシとブルージーンズ」と「石田新太郎」の作品は8月22日にFLAC 192kHz/24bitでも3,500円で発売する。

 ハイビット/ハイサンプリング化するHQM GREENシリーズにも1タイトル追加。8月7日に「カルーソ/奥田晶子スーパーベスト」をFLAC 176.4kHz/24bit、3,300円で配信する。

 8月22日には、DXDのDFF 2.8MHzで、「遠山慶子/ショパン:ノクターン選集」、「ノータス&井上直幸/ブラームス:チェロ・ソナタ第2番他」、「尾高忠明指揮 東京フィルハーモニー交響楽団/ドヴォルジャーク:交響曲第9番『新世界より』」を各3,300円で配信。その後も、カメラータ・トウキョウのオリジナルスタジオマスター・シリーズは、順次DSD化し、追加配信していくという。

カメラータ・トウキョウ制作録音部の高島靖久氏(高=はしご高)

 クリプトンで行なわれた発表会には、カメラータ・トウキョウで、様々なタイトルの録音を手掛けている、制作録音部の高島靖久氏(高=はしご高)がゲストとして登場。録音の舞台裏を紹介した。

 新譜「高橋アキ プレイズ エリック・サティ2」は、イタリアのペルージャから北へ30km行ったところにある、教会で録音。「2本のマイクで録音するのが基本で、1つ1つのマイクの音を2つのスピーカーに割り当てるのが、やはり位相特性が一番良い。編成が多くなると補助マイクも使うが、基本は2本のワンポイント」(高島氏)だという。

 教会なので響きが良く、自然な減衰が得られるのが特徴。ピアノはスタインウェイやベーゼンドルファーなどのように、音の良さが近年高い評価を得ているというファッチオーリのものを使用したという。

 「教会は床が石で出来ていますので、木の板の床と比べると振動が少なく、余計な響きがつきません。それが録音の現場でも重要なポイントだった」という。

 実際に録音されたものを聴いてみると、ピアノの響きが豊かに広がる一方で、中低域にはタイトさがあり、左手の動きなど、細かな音がスッキリしていて見やすい。響きと分解能、タイトさのバランスが良く、ゆったりとしながらキレのある録音に仕上がっていると感じる。

 高島氏は、カメラータ・トウキョウとして今後DSDでの配信にも注力していく事に触れ、「数年前にPCMでの配信をメインにしようと決めた際は、PCMと比べ、DSDには少し色がつくため、それが我々の思い描いたイメージと違うと考えていた。しかし、技術も進歩し、新たにDSDの音も検証した結果、DSDでの配信に踏み切った」と説明。

 「DSDはよく“アナログ的な音”だと言われるが、確かに中高域に艶感があり、PCMではザラザラしていると感じる。また、楽曲によって、DSDではラウドネスをかけたような感じになる事もある。低い音が多く、そこにメロディラインがあると意識が集中し、そう聴こえるのだと思う。高域の艶感、音場を見舞わせるような感覚、余韻が綺麗に減衰していく様子など、DSDの魅力を味わっていただきたい」とした。

クリプトンの濱田正久社長

 クリプトンの濱田正久社長は、HQMの配信について、「良い音で聴いていただく事も大事だが、(iPhone版アプリの投入によって)皆さんが気軽に楽しんでいる音をより良い音で聴いていただくような形にしていく事も大事。iPhoneでさらにもっと良い音を楽しんでいただき、原音であるハイレゾ配信に行き着いていただければ嬉しい。皆さんにそういった道順を提供しながら、HQMを特徴のある音楽配信にしていきたい」と、サービスの方向性をアピールした。

(山崎健太郎)